毎日新聞(8/17)から、
中高年を中心に登山者の遭難事故が止まらない。上空や地上から大がかりな捜索・救助が行われると、経費も高額になる。費用はどれだけかかるのか、誰が負担するのか?
《アンチエージングなる流行が広まって、表づらは化粧や整形・形成などでどうにでもなるのだろうが、それに伴う体の老化現象まではいくら薬を飲んだところでストップをかけることは期待しても不可能だ。昔の50歳、60歳も今の50歳、60歳も同じ老人だ。骨は弱くなり、体毛も白くなる。世界一の長寿は、老年になってからが長くなったというだけだ。それを体も若返ったような気分になって浮き浮きと、沢へ,山へと老体の自覚もなく出かける。遭難してもおかしくはないのだ。》
埼玉県秩父市で7月、同県防災ヘリが墜落し5人が死亡した惨事は、遭難した女性の救助に向かう途中だった。中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳(2956メートル)では今月2日、年配の男性が持病で動けなくなり、民間ヘリで搬送された。八ヶ岳連峰の赤岳(2899メートル)では先月、60歳前後の女性が足首をひねり、救助ヘリが出動する遭難事故が2件起きた。
警察庁によると、09年の全国の山岳遭難は1676件、遭難者は2085人(うち死者・行方不明者317人)。ともに統計を取り始めた1961年以降で最多で、40歳以上の遭難者が77%を占めている。
警察ヘリは警察法、防災ヘリは消防組織法に基づき、人名救助にあたる。ともに費用は遭難者に請求せず、運行経費や人権費などを税金でまかなう。公共ヘリが出払っている場合などは民間ヘリが活用されるが有料だ。
《警察や消防ヘリの出動経費が遭難者に請求されないとは意外なことだ。これではまるで他県に遊びにきておいて不注意で事故を招き、迷惑をかけておきながらの税金泥棒と同じことだ。富士山登山でのゴミの捲き散らし、糞尿の垂れ流しと底辺では変わらない。民間に限らずかかった費用は当然、迷惑をかけた遭難者に全額支払わせるべきだ。不注意の事故など放っておいてもいいことだが、救助隊は生命に関わることとして、いやでも出動することになる。》
長野県では毎年、ヘリによる山岳遭難救助が公共、民間を合わせ100〜200回に上る。04年に、当時の田中康夫知事が救助ヘリの有料化(本人負担)に向けて検討を指示したが、隣県との連携体制などの問題があり、建ち消えになっている。県危機管理防災課は現在「税金がかかるとはいえ人命を放っておけない」と語る。
《「人命」をいう県側の判断は勝手ではないのか。税金は県民から集めて県民のために使うためのものだ。現在の救助ヘリの出動経費を遭難者本人に負担させないことに県民の了解を得ているのだろうか。》
日本山岳協会によると、民間ヘリの平均費用は「稼働1分あたり1万円」。遭難者本人や家族に請求される。離陸後2時間かかれば120万円になる。
山岳ガイドや山小屋経営者が加盟する各地の「山岳遭難防止対策協会(または協議会)」(遭対協)が動員されると、捜索費はさらに膨らむ。遭対協が遭難者らに請求する「日当」は夏山で捜索者1人当たり平均3万円、冬山で同10万円。警察は原則、家族らの了承を得てから捜対協に捜索を要請するが、緊急時は事後承諾となる。
登山歴25年の中村雅昭(57)=東京都多摩市=は20年前、群馬県側の尾瀬・至仏山(2228メートル)で道に迷った。遭難5日目に自力で下山したが、出動した対策協に200万円を支払った。当時は救助費の保健が普及しておらず、中村は「体力を過信していた自分の責任だから、きちんと払った。今は山仲間に保険への加入を勧めている」と話す。
《自由(とは責任なり、とは常に言ってきた)な自分の行動の意味を自覚する人は、その行動の責任の取り方も心得ているものだ。》
保険会社や登山業界は年々、山岳保険に注力している。登山ツアーの客に、保険加入を義務づける旅行会社も増えてきた。登山具メーカー「モンベル」(大阪市)は3年前からネットで注文できる山岳保険を始めた。年間8010円の掛け金で、最大で救援者費などの補償500万円、遭難捜索費100万円が受け取れるものからある。また、掛け金が年額3000円の山岳共済制度もある。
日本山岳ガイド協会の磯野剛太専務理事は「ヘリが『有料』と聞いて要請を取りやめた登山者もいたと聞くが、危険を感じたら迷わず、救助を求めてほしい。山は観光地の延長ではない。リーダーやガイドに依存し過ぎず、基本は自己責任だと自覚して登ってほしい」と話す。
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