国内自動車生産台数、5年連続1000万台割れ
毎日新聞(6/1)から、
《これだけ人口激減の傾向の日本では驚くことではなく、当たり前の話だ。まして便利な交通網が縦横に行き交う世の中では、若者の車離れさえ当たり前のように進行中だ。農協華やかなりし頃、農家の庭には車の数を数えれば、その家の人間の数が分かると言われるほど、高級外車が何台も並んでいたものだが、今や時代はその影を潜めた。それに並んで、少子高齢化に足並みを揃えるようなインフラの老朽化が目立ち始めた。業者も苦し紛れのように、「人の手を借りなくても用が足りる」無人走行可能な車の開発に余念がない。最近の自動車開発は人口減に対応するようなロボット化した車を作ることに狂奔しているようだ。現在以上に国内で車が増えても無駄になるばかりなのに。》
2013年に国内で生産された自動車は963万台で、前年から3%減少した。ピーク時の1990年の1348万台からは約3割の減少。80年からほぼ一貫して1000万台を維持してきたが、リーマン・ショックの翌年の09年には前年比32%減の793万台まで落ち込み、以後、1000万台を回復していない。
国内生産が落ち込んでいる要因の一つは、人口減少などによる国内新車販売の頭打ち。バブル期の90年代ピーク時には777万台だったが、バブル崩壊、デフレ不況の長期化などもあって、13年の国内販売は537万台にまで約3割落ち込んだ。今後も大きな伸びは期待できないのが実情だ。
もう一つの要因は、生産の海外シフト。リーマン・ショック前に1ドル=100円台だった円相場は一時、70〜80円台に急騰し、自動車メーカーの輸出採算は悪化した。各社は為替変動の影響を避けようと生産を国内から海外に移す動きを加速。アベノミクスで円高は修正されたが、販売する国に近い地域で生産する「地産地消」の流れは変わっていない。スズキの鈴木会長兼社長は「円安だからといって今さら国内には戻すことはない」と話しており、節目の1000万台を回復するのは難しくなっている。
海外シフトは73年と79年の2度のオイルショックを経て、燃費が良く低価格の日本車人気が世界的に高まったことが引き金に なった。
80年の国内生産は1104万台で初めて1000万台の大台に乗せ、米国を抜いて世界一に。輸出台数は597万台で、国内販売を上回った。ところが、強すぎる日本車の攻勢で、米国の自動車メーカーの業績は悪化。大量の失業者が出る事態になり、深刻な貿易摩擦となった。日本政府は81年から対米輸出の自主規制を行なう一方、80年代の中頃から雇用創出にも貢献できる現地生産の拡大へかじを切った。その後の円高などの影響で、07年には海外生産が国内生産を上回り、さらにリーマン・ショックでこの流れが決定的になった。
海外生産を地域別にみると、13年はアジアが前年比6%増の905万台でトップ。北米は同7%増の454万台、欧州4%増の153万台と続いた。00年と比べると欧州61%増、北米52%増なのに対し、アジアは5・4倍と伸びが著しい。中国やインド、東南アジアなど新興国の所得水準上昇に伴い、受動社需要が増えたことが、海外生産を後押ししている。
日産自動車やホンダはそれぞれ海外生産が約8割に達し、為替変動による収益への影響は他社に比べて少ない。トヨタやスズキの海外比率は約6割。約2割にとどまるマツダや富士重工業は円高が進むと収益が圧迫されやすく、海外シフトを急いでいる。マツダは今年、メキシコで新工場を稼働。13年の海外比率23%を16年に4割超に増やす。富士重も米国工場を増強し、海外比率23%から20年には4割に増やす方針だ。
海外生産の拡大で心配されるのは、国内産業、雇用への影響だ。海外シフトに合わせて部品を納入する系列会社ンあども一緒にシフトするケースも目立つ。製造や販売、整備、ガソリンスタンド、運送業なども含めると、自動車関連の就業人口(二輪車を含む)は547万人と全就業人口の8・7%を占める。12年の自動車産業の製造品出荷額は約50兆円で、全製造業に占める割合は17%に達する。海外シフトによる産業と雇用の空洞化の影響は大きい。トヨタは雇用を守るために「国内300万台」を堅持してきたが、日産「マーチ」や、三菱自動車「ミラージュ」のように、タイで生産して日本に逆輸入するケースも出てきた。
国内生産をどこまで維持し、いかに世界で戦うか。自動車産業に突きつけられた課題だ。
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