2012年10月19日 (金)

地震学

 毎日新聞(10/19)”社説”から、

《災害は忘れた頃にやってくるとは言うものの、1995年の阪神大震災、2011年の東日本大震災後、いつ来るか分からない大地震を煽り立てるような報道が明け暮れ続く。私は基本的に現在の科学では地震予測など不可能だと考えている。防災対策は必要だが、現在の報道の仕方には幾分飽き飽きしている。例えば100年以内に発生するかもしれないとは、今日、明日か100年後のひ孫たちの世代かというスパーンをいうことだ。また、学者も明日あさっての問題ととらえているとは思えない。それをメディアはいたずらに人心を惑わすように一々騒ぎ立て、テレビは北の果てから南の果てまで中、小地震のその都度、テロップの花盛りだ。もう少し落ち着いてほしいものだ。》

 日本地震学会が学会の改革をめざす「行動計画案」をまとめた。「地震予知」については、現時点で非常に困難であることを改めて認め、「確率的な予測」の意味で「予知」という言葉を使わない方針を決めた。学会内の「地震予知検討委員会」の名称も変更するという。

 そのこと自体は当然だが、言葉遣いを変えれば事足りるというものではない。国の地震防災のあり方や、「予測」の位置づけについても、突っ込んだ議論を続けてほしい。

 「地震予知」とは、「いつ」「どこで」「どれくらいの規模の」地震が起きるかを事前に把握することをいう。警報などにつながる確度の高い情報を意味し、東海地震を想定して78年に施行された「大規模地震対策特別措置法」(大震法)の根拠ともなっている。

 しかし、こうした地震予知が現時点で不可能であることは、95年の阪神大震災ですでに明らかになっている。にも拘わらず、学会に限らず、大学や政府の組織でも「地震予知」という言葉が使われ続けてきた。国全体で見直していくべきだ。

 一方の「予測」は、「ある地域で、今後○年以内に、マグニチュード(M)が○クラスの地震が起きる確立は○%」といった確立で示される。阪神大震災の後、政府の地震調査委員会は、こうした「長期予測」に取り組んできた。

 しかし、昨年の東日本大震災で、この「長期予測」もあてにならないことが明らかになった。地震調査委は三陸沖〜房総沖を複数の領域に分け、30年以内の地震の規模と確率を公表していた。それでも、多数の領域が連動して起きるM9の巨大地震は予測できなかった。

 それを考えれば、今回の教訓は「現時点では、直前予知だけでなく、長期予測も信頼性が低い」ということのはずだ。巨大地震は発生頻度が低く、発生メカニズムも実証されていない部分が多いため、原理的にも予測は難しい。

 地震学会が地震予知という言葉の見直しを強調することが、「直前予知は無理でも、長期予測は信頼できる」という誤ったメッセージにつながるようでは困る。地震学会は、「社会に対して、等身大の地震学の現状を伝えていくこと」も改革案に盛り込んだが、これこそが大事なことだ。

 原発近くの活断層調査についても地震学の限界は踏まえておかなくてはならない。原子力規制委員会は来月、関西電力大飯原発を現地調査する。他の6原子力施設についても、活断層に関する現地調査が必要かどうかを検討する。その結果が同であれ、地震発生のリスクを読み込んでおくことが欠かせない。

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2011年11月25日 (金)

大学センター 学力低下を懸念し、「総合型試験」導入を検討

 毎日新聞(11/24)から、
 早くから懸念されている日本の大学の学力低下に歯止めをかけ、学力アップを目指して入試センターが大学入試のありようについて検討の段階に入った。

 参照 大学入試 11/01
    大学進学資格 07/11

 推薦入試やAO入試の増加で大学生の学力低下が指摘される中、大学入試センター(東京都目黒区)は新しい大学入学試験の導入に向けた研究を始めた。読解力や推論力・分析力を問う「総合型試験」の導入の可否を、4年後までをめどに検討する。この総合型試験の成績とともに、作文や面接といった推薦・AO入試の結果を合わせて大学側が合否を判定できるようにし、大学生の学力アップを目指す。

 大学進学率は少子化の進行に伴い上昇を続け、09年度には50%を突破した。文部科学省がまとめた09年度の国公私立大の入試状況によると、大学学部の入学者数は59万7000人。このうち推薦入試やAO入試で入学した学生は約26万1000人で4割以上、私立大に限れば5割に達する。大半は筆記試験を実施せず、面接や作文で合否を決めている。こうしたことから学力の不足がしばしば指摘され、大学よっては入学前に学力を補うための事前教育を実施しているところもある。

〖AO入試〗
 米国の大学で入試を担当する「アドミッション・オフィス」(入学事務局)が名前の由来で、志望理由書を提出させ、面接や小論文で選考するのが一般的。個性や適性など人物を重視する。

 同センターは03年から10年まで、法科大学院の入試にあたる適性試験(マークシート方式)を作ってきた。グラフのデータを読み取って分析させたり、確率や組み合わせなどを問う「推論・分析力テスト」と、長文を読ませて読解力や表現力を見る「読解・表現力テスト」の2種類を8年に亙って作成・実施してきた。

 新しい総合型試験は、このノウハウを利用して作成を検討するという。

 現状では、秋に推薦入試やAO入試が実施されていることから、高校3年の夏前に大学が総合型試験を実施し、その後の面接や作文に加味することも視野に入れる。

 センターは今年度から始まった第3期中期計画に研究の実施を盛り込んでおり、15年度までかけて試行も含めて可否を検討するとしている。

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2011年3月 6日 (日)

外国人看護師受け入れ、日本は何故少ないか

 毎日新聞(3/6)“なるほドリ”から、

 貿易自由化の交渉で、日本は外国人看護師の受け入れを求められているそうだ。貿易の交渉なのに、なぜ、看護師の話が出てくるのだろうか。

 貿易自由化というと、農畜産品などの関税を巡る議論に注目が集まる。国内農業を守るため、日本が外国産のコメなどに高い関税をかけているからだ。でも、日本が各国と締結を目指している経済連携協定(EPA)は、モノやサービス、人の行き来を促進して経済活動を活発にすることを目標にしている。輸入時に数量規制を設けるなど、関税以外の手段で貿易を制限することを「非関税障壁」と呼ぶが、外国人看護師の外国人看護師の受け入れが少ないのも非関税障壁の一つだとして、交渉の対象になっているのだ。

 Q 看護師受け入れに障壁があるのか

 A 日本は08年以降、EPAを結んだインドネシアとフィリピンから、働きながら看護師を目指す候補生を受け入れている。でも昨年、国家試験に挑んだ候補生の254人のうち、合格したのは3人だけだった。このため、両国から「日本語が非関税障壁になっている」との批判の声が上がった。日本語が使えることを条件にして、実質的に受け入れを制限している、という主張だ。厚生労働省は「医療現場では日本語能力が不可欠」としているが、今年2月の試験から「難しい用語を易しい言葉に置き換える」などの対策をとった。看護師を巡っては、インドとのEPA交でも受け入れを要求されている

非関税障壁を巡る対日要求
  Boueki 参照 3/254 10/04

 Q 外国から見直しを求められている非関税障壁にはどんなものが?

 A 米国は、BSE(牛海綿状脳症)対策として日本が定めている月例基準などの撤廃を求めている。見直さないと、日本の求める工業製品の関税撤廃に相手国が応じなかったり、米国など9カ国が交渉中の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加が難しくなったりするかもしれない。ただ、撤廃すると、雇用が失われかねない。規制も安易に緩和すると、消費者の安全が脅かされてしまう恐れがあるのだ
 
 Q 日本以外の国も非関税障壁を指摘されているの?

 A 米国はリーマン・ショック後の景気対策として、公共事業での資材調達の際、米国製品を優先購入する条項を盛り込んだ。中国も政府の物品、サービス調達で国内企業を優遇し、いずれも他国が見直しを要求している。

《それにしても、いずれも本国ではれっきとした有資格者たちの受験だ。技術は日本と変わりない人材のはずだ。難しい言葉だけが障害ならば、平明な言葉への置き換えなどは日本人はお得意の領域ではないのか。或いは横文字にするのも得意の分野だろう。日本人が避けることの多い職種に携わりたいと、他国の日本での看護師にすすんで受験してくれる人たちだ。こんな勿体ない話はない。なんとしても多くの人が合格できる道を拓いてほしいものだ。》

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2010年10月13日 (水)

体外受精とは

 毎日新聞(10/11)『なるほドリ』から、
 今年のノーベル医学・生理学賞(イギリスのロバート・エドワーズ・85)の綬賞理由は「体外受精技術の開発」となっているが、1978年当時、私の耳には世界初の「試験管ベビー」誕生の報道は、耳慣れない言葉と同時に、試験管で命を弄ぶ科学者の、禁断の領域へ踏み入ったことへの恐ろしさを覚えたのを記憶している。しかし、いつの間にか「試験管ベビー」の名は、不妊に悩む多くの女性を救う技術の進歩とともに使われなくなった。試験管ベビーの報道を聞いたのは、まだ現役で会社の食堂のテレビであったが、その時、「いずれ代理出産が商売になる」と言い放ったのを覚えている。

 Q 体外受精ってよく聞くが、どんな技術?

 A 普通の妊娠では、卵子と精子が出会って受精するのは女性の体内だ。これに対してエドワーズらが開発した体外受精は、女性の卵巣から卵子を体外に取り出し、シャーレの中で精子と混ぜ合わせて受精させる。受精卵ができれば女性の子宮に戻し、うまく着床すれば、妊娠・出産となる。

 Q この技術のおかげで不妊に悩む多くの夫婦が、子どもに恵まれるようになった。

 A 《1978年に、世界初の》ルイーズ・ヴラウンが生まれてから30年以上が経ち、体外受精技術の恩恵を受けて、これまでに全世界で400万人近くの赤ちゃんが生まれている。日本産科婦人科学会によると、国内では約56人に1人に当たる年間約2万人が体外受精で生まれ、累計で約20万人に上っている。しかし、卵子を女性の体外で扱うことになったことで、卵子の持ち主と子宮の持ち主が別々でも妊娠・出産が可能になった。

 Q それって問題ないの?

 A 卵子提供に関しては、姉妹や友人からもらうのか、匿名の第三者からもらうのかで事情が違ってくる。姉妹など近親者から提供を受けた場合、子どもにとっては身近に生みの母と、遺伝上の母の2人が存在することになり、家族関係が複雑になる。さらに不妊の姉妹を持った女性が家族から卵子提供のプレッシャーを受ける恐れがある。匿名の提供者の場合には、「自分の出自を知りたい」という子どもの気持ちにどこまで応えるのかを巡って意見が分かれている。そのほか、提供者の女性の卵巣が腫れるなどの副作用の問題もある。

 Q 難しい問題だ

 A 不妊治療の問題を取り扱う厚生労働省の生殖補助医療部会や日本学術会議の委員会が報告書をまとめているが、たくさんの意見があり、法律には結びついていない。体外受精は1人の人間を生み出すとても重要な技術だけに、国にしっかりとしたルールがないと、混乱が生じる恐れがある。議論は今後一層深まるといい。

《過去においては2009年、61歳の母が、或いは53歳の母が、生めない体の娘に代わり孫を出産したことがある。ここまでは許されるとしても、卵子と精子を購入して勝手気ままに操作することで、選り取り見取の受精卵を作り出すことまで可能になった。また、長年不妊に悩み、治療を受けたにもかかわらず子どもをもうけることが叶わなかった人たちの救済としての体外受精のはずなのに、生物学的に出産には全く不可能を承知の上の同性愛者やシングルマザーまでもが希望すれば精子提供される。》

《精子バンクは1964年、米国・アイオワ市、と日本・東京で設立され、1980年には米国でノーベル賞受賞者専用の精子バンクもできている。学歴や容姿、体躯・身長などで値段が異なるが、液体窒素で保管すれば20年以上経っても受精卵をもうけることも可能だという。》

《遺伝学・人類学の入門書や雑文で時々引用されるイサドラ・ダンカン=1875年生まれのアメリカのモダンダンサー(一説にはサラ・ベルナール=1844年生まれのフランスの舞台女優)と稀代の皮肉屋のジョージ・バーナード・ショー=1856年生まれ、イギリス近代演劇の確立者)との有名な逸話がある。ある時ダンカンがショーに結婚を申し込んで言った「私の美貌とあなたの頭脳を持ち合わせた子を持ちましょう」と。すかさずショーは丁重に皮肉混じりに言った「私の醜さとあなたの愚かさを持った子が生まれるから」と断った。この逸話は同時に、好きな組み合わせで誰かの腹を借りて出産する、生物学的な親子関係とも遺伝子とも関わりのない奇妙なメカニズムが、現実に起こり得る将来を示唆しているように思える。》

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2010年4月18日 (日)

続 3/254

 毎日新聞(4/15)社説『締め出し試験の愚かさ』から、
 経済連携協定(EPA)に基づきインドネシアとフィリピンから来日している受験生が初めて看護師国家試験に合格した。ただし、わずか3人。両国の受験者は254人で、合格率は1.2%だった。一方、日本人の合格率は約9割に上る。外国人受験生にとっての壁は、難解な漢字や専門用語だ。本当に看護師の仕事に必要なのか。わざと締め出そうとしているようにしか見えない。

《インドネシア人やフィリピン人と日本人との知能差が1対90になる程も日本人が優れているとは思えない。昨日も書いたが、平明な日本語に言い換えできる漢字をわざわざ押し付けて学ばせる必要などない。》

 関税を撤廃し貿易の活性化を目指す枠組みが自由貿易協定(FTA)で、これに投資や知的財産保護を加えた幅広い自由化のルール作りをするのがEPAだ。インドネシア人候補者は08年8月から、フィリピン人は09年5月からそれぞれ受け入れ始め、これまでに看護師候補約360人、介護福祉士候補約480人が来日した。

 看護師候補者は半年間の日本語研修を経て、病院で働きながら国家試験の勉強をする。期限は3年間で3回の受験機会に合格すれば日本で働き続けることができる。試験は今年で2回目で、昨年は82人全員が不合格だった。第1陣は来年の試験に不合格だと帰国しなければならない。自国では看護師資格のある人々なのにである。

《自国では看護師資格があるということは、受験した日本人受験生よりも看護・介護の知識や実務はすでに上位にあるということだ。その人たちの殆どが試験に落とされて帰国したとなれば、当該国ならずとも、外交問題化する懸念さえあるだろう。》

 試験問題の文中には
  誤嚥   ごえん
  臍動脈  さいどうみゃく
  塞栓   そくせん
  喉頭蓋  こうとうがい
  喘鳴   ぜんめい
  落屑   らくせつ
 などの難しい漢字がたくさん登場する。どうしても必要ならば仕方ないが、
  たとえば「眼瞼(がんけん)」は「まぶた」
      「褥瘡(じょくそう)」は「床ずれ」
 などと言い換えた方が患者もわかるし医療現場でも便利ではないだろうか。「創傷治癒遅延」は「傷の治りが遅い」ではだめなのだろうか。

  腹臥位  ふくがい
  半坐位  はんざい
  仰臥位  ぎょうがい
  砕石位  さいせきい
などは、診察や治療の際に患者に取ってもらう姿勢だが、イラストをつけると分かりやすくなる。医学用語である「企図振戦*」は intention tremor という英訳を付けてはどうか。

《*(きとしんせん)と読むのだろうか。企図は意図でもあり、(しんせん)は体や手足の震えをいうようだ。ところで自動車教習所の教科書に「ワダチ(轍)」を「輪立」と書かれていた間違いを指摘したことを思い出した。テストに出された「振戦」も漢字で表現したいのなら本来正しくは「震戦」と書くのが本当ではないのだろうか。「振」では旗を振る、槌(鎚)を振る、のように使用されるのであって、体や手が「ふるえる」のは震えるで「震戦」と書かねばならない。》

 日本人の受験生もこうした業界用語を習得する勉強に時間を費やしているのだろうか。患者とのコミュニケーションや医療事故を起こさないスキルの獲得に励んだ方が有益ではないか。患者や第三者の監視の目を立ち入らせないようにする閉鎖性がこういうところに表れるのではないかとすら思えてくる。

《アメリカに似て、訴訟社会のようになったことは認めるが、そのための予防線を張ったとは、ちと穿ち過ぎた見方だ。》

 形式的な公平だけでなく、実質的な公平を実現しなければならないことを「合理的配慮義務」という。国連障害者権利条約などにある概念で、障害や宗教、人種などによる目に見えない障壁を取り除くために用いられる。看護師を目指す外国人に対する日本の国家試験はまったく合理的配慮に欠けている。高齢化が進んで行く一方で、就労人口は減っていく。外国人看護師にたくさん来てもらわなければ困るのに、いったい何を考えているのか。

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2010年4月17日 (土)

3/254

 タイトルの数字は一体なんだろう。凡そ1%だけしか合格しなかった日本の看護師国家試験での外国人合格者の合格率を表した数字だ。国内は不景気だ、就職できないといいながら、日本人の多くが比較的楽な一般事務職の方にばかり目を向け、最初から嫌うのが介護の現場だ。その介護の世界で働きたいと遠く海外から来日したけれど、難しい日本語がマスターできず、合格した1%以外の人たちは夢破れて帰国せざるを得ない結果となった。大卒が、高卒がいくら厳しいとは言いながらこれほど厳しい就職難ではなかろう。莫大な国費を使いながら何のための選抜だ、このことについて書こうと思っていた矢先のパソコンのトラブルだった。遅まきながら毎日新聞が15日、『締め出し試験の愚かさ』と題して社説で取り上げた。3月27、4月13日の記事と併せてまとめてみたい。

 3月26日、看護師国家試験の合格者発表があった。経済連携協定(EPA*)に基づき日本の病院で研修していたインドネシア、フィリプン人の計3人が初めて合格した。両国の受験者(254人)の合格率はほぼ1%の狭き門だった。
 受け入れは08年8月のインドネシア人から始まった。これまでに介護福祉士候補者を含めて800人以上が来日し、病院や施設で働きながら合格を目指している。しかし、日本語の壁があり、昨年の看護師試験では全員が不合格だった。

 *・・2国間の経済連携を強化するための協定で、看護師・介護福祉士候補者の受け入れも含まれる。インドネシア人候補者は08年8月から、フィリピン人は09年5月から受け入れ、両国合わせ看護師候補者約360人、介護福祉士候補者約480人が来日した。半年間の日本語研修の後、日本の病院・施設で働きながら資格取得を目指す。介護福祉士は実務経験3年が必要で1回しか受験できない。

《世界でも特にマスターすることが難しいといわる日本語だ。語学の天才ででもなければそう易々と身につくことはないだろう。翻って我が身に置き換えて考えてみれば理解も早い。中・高・大と短くても8年、普通に大学を出るまでの10年間、何%の日本人が英語をマスターできているか。それに後から記すが、横文字にはたやすく置き換える日本語を、現在の大学生では正しく読むこともできないだろう難解な漢字や言葉が理解できないからと、不合格にするとは理解に苦しむ。》

 (4/13)「なるほドリ」から
 外国人の1%は日本人の合格率90%に比べると超難関っだたと言える。試験問題240題はすべてマークシート。「漢字が読めない」「文章の意味がわからない」という日本語力のほか、日本の社会保障制度の勉強など受験対策が不十分だった面もあるようだ。

《昨年合格者ゼロだった経験は何も活かされていない。受験者のレベルが劣っている、勉強不足などを論(あげつら)っているだけでは何年繰り返していても結果はでない。昨年、なぜ1人の合格者もでなかったのか、問題の分析も改善にも手をつけた気配が全く感じられない。日本語の習得に時間がかかるのであれば、来日以前に本国である程度の準備をする機関の設置を呼びかけるとか、ある程度の習得をした者を受け入れるとか、難解な言葉をカタカナでもひらかなでも平明な言葉に置き換えるとか、必要な働き手を募集しているのなら、それなりの努力をするべきだろう。》

 Q これから何度もトライできるのか

 A 看護師候補者は来日から3年以内に合格しなければ、日本で働き続けることはできない。08年8月に来日したインドネシア人の候補者100人は来年が3回目の試験で、最後のチャンスになる。落ちれば帰国しなければなりません。

《ほんとうにそれでいいのか。嫌々連れてきた人たちではなかろう。進んで介護の職に就きたい人たちのはずだ。》

 Q 日本人と同じ試験なんて気の毒だ

 A 来日条件として日本語能力を問わないことや、働きながら国家資格を取るという制度に対しては、当初から「そもそも合格させる気がないのでは」という指摘があった。インドネシア政府の要請もあり、外務省から指示を受けた厚生労働省は「褥瘡 ジョクソウ(床ずれ)」「清拭 セイシキ(体を拭く)」「側臥位 ソクガイ(横向きに寝る)」など難しい言葉の言い換えを検討している。

《受け入れる前の準備段階で検討しておくべき事柄だ。それにも拘わらず、何の方策も持たないとは不合格にするのを楽しんででもいるかのようにさえ思える。》

 Q それだけで合格者は増えるのか

 A これまで試験対策は受け入れ先の病院に任せ勝ちだったが、今年度からは日本語学習支援への予算が増えた。日本語学校への通学や病院への講師派遣など、看護師候補者1人に約12万円が充てられる。政府は受験機会を増やすことや、来日前に一定の日本語能力を求めることも検討している。

《これを俗に『泥棒見て縄』という。》

 Q 母国で看護師だったはずだけど、日本の国家試験にも受からないとだめなのか

 A 日本看護協会によると、海外で看護師として働く人には、ほとんどに国が語学審査もしくは国家試験受験を課している。国家試験は必要としても、不合格で大量の看護師候補者が帰国すれば国際問題になるという危機感も政府にある。来年、最後のテストを受ける人たちの緊急対策と、長期的な体制の整備が同時に求められている。

 EPAの受け入れを巡っては、現場の病院・施設まかせで「日本語支援が不十分」(平野裕子・九州大学准教授)という指摘があった。インドネシアのマルティ・ナタレガワ外相も今年1月、岡田克也外相との会談で「漢字が難しい試験を改善してほしい」と求めているという。

 国は昨年から日本語学習教材の開発や過去の試験の翻訳を始め、2010年度は今年度に比べ10倍の予算(約9億円)が計上された。ただ「褥瘡」など難しい用語の言い換えの検討を初めたばかりだ。安里和晃・京都大准教授(移民政策)は「本国では一定のスキルがあるのに、不合格で無資格のまま大量帰国ということになれば、EPAの制度そのものが問われかねない」と話す。

                ーー 明日につづく ーー

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2010年1月10日 (日)

母親の高学歴志向

 毎日新聞(1/10)、昨日に続くベネッセの調査から。
 調査は首都圏の小3〜中3生を持つ母親を対象に実施。
  98年12月(4475人)
  02年9月(4896人)
  07年9月(5315人)の3回に亙って調べた。

 昔からの「トンビがタカを生む」、とは目立つ存在でもなかった親から優れた子が生まれることをたとえて言う言葉だ。タカがタカを生んでも当たり前で普通のことだから驚かないが、もしもトンビが生んだなら、それは驚く。大前提として、タカの子を生むためには親がタカでなければならない。

 これを人間世界に移して今の世の中の「格差社会」というはやり言葉で言い換えれば、金持ちの子はいい学校に進めるが、貧乏人の子には無理だから諦めるがいい、ということだろうか。だが、だからこそ、それに抵抗するのが親、特に昔からママたちだ。磨けば光る鉱石か、磨いても・・・、そう、勉強、また勉強で子の尻を引っ叩くことになる。

 それには抜け道がないわけではない。アメリカなどはノーベル賞を受賞したことのある所謂秀才などの、精子バンクなるものがあり、これとてカネに糸目をつけなければ、タカが生んだトンビでも、うまく行けばとんでもないタカに生まれ変わる可能性もある。

【閑話休題】
 普通の生活ができる学力よりも、できるだけいい大学に入れる力を。
 ベネッセ教育研究開発センターがまとめた母親の学力感・勉強感の調査結果をみると、わが子に求める学力が年々、高くなっていることが分かる。

 98年と07年の調査結果を比べると、「将来普通の生活に困らないくらいの学力があればいい」と答えた母親は58・1%から47・0%に減少。これに対し、「できるだけいい大学に」と希望する母親は18・0%から25・5%に増えた。

 親の希望の変化は、危機感の表れともいえる。「学校生活が楽しければ、成績にはこだわらない」という母親は35・8%から22・4%に減ったほか、「そんなに勉強しなくてもなんとか進学できるだろう」も7・3%から3%と半分以下になった。

 02、07両年の調査結果をみると、「いい学校に入れるには塾に通わせる必要がある」が17・4%から20・5%に増加。「高学歴よりも資格を身につける方が将来役に立つ」と考える親は43・6%から38・2%に減った。

《勉強勉強で、子どもの心がゆがみ、親への反抗から憎しみや遂には家庭の破壊、犯罪へと走る話がメディアを賑わしている。高校卒業に際してヘソ曲がりの私にしたためてくれた恩師の毛筆の5文字、「平常程是道」を贈っておこう。》

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2009年9月25日 (金)

司法試験の合格率最低を記録

 毎日新聞(9/25)「なるほドリ」欄から、要約と《 》内は私見。
 新しい司法試験になって4回目、合格発表によるとまたまた最低を更新したけれど、なぜ下がり続けているのだろうか。試験の合格率は初年の06年から48・3%、40・2%、33・0%と年々下がり続け、今年は27・6%と2割台に落ち込んだ。受験者数が増え続けているのに合格者数が伸びないことが合格率の低下につながっている。法科大学院の修了者が受験できるのだが、法科大学院は全国に74校あり、定員は約5800人。一方、合格者は過去3回とも2000人前後となっている。大学院終了から5年で3回受験できるため不合格者数が積み重なっていき、受験者数が増え続けているのだ。

 Q 今年も合格者数は前年を下回ったよね。

 A 今年の合格者数は2043人で、去年の2065人より22人減った。政府は合格者数を10年頃までに年3000人に増やす目標を定めている。企業法務など弁護士の需要が伸びると見込んでのことだった。法務省の司法試験委員会は合格者数を段階的に2500〜2900人に増やす目安を設定していたのだが、今年もかけ離れた結果になった。

 Q なぜ合格者数が増えないのだろうか

 A 法曹資格を与えられるレベルの受験者がそれしかいないということだ。法科大学院の質が問題視されている。法科大学院数は当初の想定を大きく上回っているため、法務省や文部科学省は適切な教育が実施されているのか、疑問を寄せており、定員削減や統廃合の必要性を指摘している。

《敗戦後の大学の粗製濫造が、今になって経営難を招き、淘汰のはなしさえ出ていることの問題点を何一つ参考にしていない。この問題は医者が足りないから医学部の定員を増やす考えにも通じ、レベルの低い薮医者を世に送り出すことになる懸念を抱かせるのだ。法曹界も同じだ。(参照 法科大学院乱立 教員足りず質低下 09/01/)》

 Q これからどうなっていくんだろう

 A 受験者は最終的に1万人程度に増える見込みだ。合格者数は目標の3000人に達する見通しはない。合格者は法科大学院修了者の7〜8割と想定されていたのだが、合格できない人が大量に出ることになりそうだ。高い授業料を払って修了しても法曹資格を得られないなら、法科大学院を目指す人が減る懸念もあるし、社会人から転身する人の意欲を削ぎかねない。法科大学院が適切な定員に集約される必要がある。進級や終了の認定を厳しくして、合格が難しい学生に途中で断念を促す必要性も指摘されている。

《大学院志願者には、共通試験の法科大学院適性試験の受験が義務づけられている。それなりに、適性試験をパスして入学してきたはずなのに、勉学がそこまでで止まってしまうようなレベルが多いということだろう。より深い専門知識の吸収や人格形成に取り組んでこそ法曹人としての資格が備わることになるのだろうが、通常の大学と同じような感覚で、キャンパスライフを楽しむ人間もいるのだろう。卒業資格が取れない者は、落第させるのが当然だ。高い授業料は本人の担保でもある半面、捨て金でもあることを承知のはずだ。そうならないために3回チャレンジの機会があるのだから努力すればいい話だ。》

《それにしても、何の規制もなく野方図に法科大学院を作らせておいて,当然起る問題を、ただ座して待っていたようにさえみえる。

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2009年1月 9日 (金)

法科大学院乱立 教員足りず質低下

参照 医学部定員693人増 08/12/19

上は医者の定員を増やすことへの不安を記事にしたものだが、不安は全く同様に法曹人口を増やそうとする施策でも現実のものになっているようだ。

毎日新聞(1/8)から、 《 》内は私見
 訴訟社会の到来を見越して法曹人口を増やそうと設置された法科大学院が、定員の見直しや再編を迫られている。7〜8割を目指した新司法試験の合格率が3割程度に低迷しているからだ。背景として、法科大学院自体の乱立による質の低下が指摘されている。裁判員裁判などの司法制度改革を控え、危機感を抱いた国は少数精鋭化に向けた定員削減を求めた。各校は2月以降、10年度の新定員を順次発表する予定だ。

《お笑いぐさの大騒動だ。パイを広げれば玉石混淆で集まってくるのは素人でも察しはつく。結果は初めから予想されることであったはずだ。敗戦後、雨後の筍の如く名ばかりの大学が増え、今では大学生とは言えない中学、高校生並みの生徒が集まる場所になっているのを見れば、法科大学院の乱立を許可した方にも多大の責任がある》。

〖法科大学院〗
 法曹需要が増大するとの司法制度改革審議会の想定に基づき、04年に設置。少人数で実践的な教育をする米国のロースクールをモデルにしている。合格率が数%で受験技術偏重との批判がある旧司法試験のあり方を改め、法曹人口を増やす狙いがある。旧試験は合格者数を段階的に減らし(09年の目安は100人程度)、10年まで並行実施する。

「修了者の7〜8割が合格するという話を信じたが、現実は違った」。新試験に3回挑戦し、いずれも不合格だった埼玉県の40代の男性は肩を落とした。法学部生時代から法曹を目指し、旧試験も十数回受験した。諦め切れず、04年に新設された東京都内の法科大学院に進んだ。だが、新試験には「法科大学終了後、5年で3回」という受験制限があり、昨年9月の3回目の失敗で受験資格を失った。

《志は立派だが、十数回失敗した過去から考えても、やりたい仕事とできる仕事とは必ずしも一致しないことの方が多いことを学ぶべきだ。望んで必ず成功するなら、失敗を味わう人間などいない。夢は叶うものとは限らない。自分の限界を見極める決断もまた、大事なことではないのか》。

新試験の合格者は、初年の06年1009人(合格率48%)、07年1851人(同40%)、08年2065人(同33%)で、合格率は予想を大きく下回った。

政府は02年、司法制度改革審議会の意見を踏まえ、年1000人程度の合格者を、10年までに年3000人程度に増やすことを閣議決定した。法務省幹部は「試験の成績をみる限り、目標実績は簡単ではない」と認める。

一握りの上位校と下位校の実力差も歴然だ。合格率別学校数は60%台が1校(一橋大)、50%台が4校だったのに対し、10%台は21校、10%未満は9校、ゼロも3校あった。合格者数でみても、東京、中央、慶応、早稲田、京都の上位5校が全体の4割を占めた。

当初想定された大学院の総定員は4000人程度。しかし、多くの大学が学生を呼び込む経営戦略の看板と位置づけたため、設立された法科大学院は74校に上り、総定員は約5800人に膨れ上がった。その結果、学生の質の維持が難しくなり、選任教員や実務家教員として期待された現職の検事や弁護士、裁判官は不足した。

新司法試験に合格した司法修習生の実力低下も問題になった。08年には1年間の修習終了後の卒業試験で全体の6%にあたる113人が不合格になった。不合格者は翌年の試験まで事実上留年を余儀なくされる。最高裁は「実力にばらつきがあり下位層の数が増加している」と指摘した。

《ドロナワで煮詰めないまま実施した、所謂、粗製濫造というやつだ。医者の増員計画もまた思いやられる。それでは打つ手はあるのだろうか》。

 国が念頭に置く法科大学院の改善策は、総定員削減と終了認定厳格化、学校間の連携などだ。少数精鋭化し、優秀な教員を効率的に配置することを目指す。

昨年の文部科学省のヒアリングによると、19校が10年度入試から実際に定員を削減し、19校が定員見直しを検討すると回答した。しかし、文科省は納得せず、先月には事実上全校に定員削減を迫る通知を出した。中央教育審議会の法科大学院特別委員会も昨年9月、終了認定の厳格化、▽適正な専任教員確保、▽学校間の教育課程の共同実施などを提言した。

こうした国の方針を受け、法科大学院側も改革に乗り出した。合格者が3年で1人だけだった姫路獨協大(兵庫県姫路市)は、09年度から40人の定員を10人に減らすことを決めた。島根、岡山、香川の3大学は、それぞれの法科大学院の共同運営を模索する。当面は共通講義を開くなどして、教員の質の維持や学生の競争意識の喚起を図る。合格者総数が8人にとどまっている島根大法科大学院三宅孝之研究科長は「弁護士の偏在を解消するためにも、地方で一定の数を養成する必要がある。そのためには時代に応じた変容も大切」と話している。

宮沢節生・青山学院大法科大学院教授は話す。弁護士過疎の解消、被疑者国選弁護の拡大、裁判員裁判の導入など、多くの弁護士を必要とする司法制度改革の実施が迫っており、3000人合格の目標は死守すべきだ。現在の法科大学院の定員を維持したままでは、新試験の合格率は2割台に低下する。実質的な予備校化が進行すれば教育の理想から遠ざかり、法曹を志す者の減少が続く。全校が大幅な定員削減に取り組むべきだ。

《法曹人口を増やすのが目的か、合格率を上げるのが目的かわからない。定員削減はパイを小さくすることだ。分母が小さくなれば合格者数は変わらなくても合格率は上がる。定員削減すれば合格者数が増えるという裏付けは何だろうか。教育の密度が上がるということのようだが、定員削減だけで期待通りに運ぶのだろうか。》


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2008年12月25日 (木)

学士力

『末は博士か大臣か』。その昔、“学士さま”と呼ばれた大卒者は、選りすぐりの秀才でなければ卒業はおろか、入学さえままならなかった。学士さまは社会からは一目(いちもく)もニ目も置かれるエリート集団だった。

敗戦を機に、新しい憲法、第3章第26条で、教育を受ける権利及び義務教育について規定され、その条文で
 1、すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
 2、すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。
と定められた。

その能力に応じてひとしく教育をうける権利は、高望みしなければ当然の理屈だが、それで済まなくなったのが片や幼い頃からの塾や予備校の花盛りの学歴社会であり、片や皆につられて大学だけは行っておこうかレベルの青春謳歌の男女交際が目的のような学園生活だ。

また、往々にして義務教育の甚だしい勘違いがあるが、親、保護者はわが子に教育を受けさせなければならない、というのが憲法でいう義務教育なのだが、それを都合良く、「これを無償とする」だけを取りあげて、全てを国や地域行政に求めようとする解釈がはびこり、モンスターペアレンツなどと呼ばれる怪物たちが跋扈する世情だ。

戦後、次々と数を増やして行った大学は、今ではピンからキリまで存在し、金さえあれば選り取り見取りで能力に応じて希望すれば誰でもが入学できるほどの数まで増えた。一方、すでにその数は飽和状態を超えて淘汰の段階に突入している多くの大学は、経営難から学生のレベルを問わず、資金集めだけの学生の頭数の確保でやっと破綻を免れている状態が続いている。そのために、年々学生の学力低下が目立ち、メディアなどで学力調査が発表されるたびに、大学とは名ばかりの中学生レベルの人間が集まるところまでになった大学もある。

毎日新聞(12/24)から、
 中央教育審議会は24日、大学の4年間で身につけるべき能力「学士力」を、国が指針として明示することなどを求める大学教育の改善策をまとめ、塩谷文部科学相に答申にした。「大学全入時代」を迎えて入学者の学力水準低下を懸念したうえで「各大学は安易に学生数確保を図るのでなく、入試のあり方を点検すべきだ」と指摘している。大学卒業の条件についても厳しくするよう求めた。答申を受け、文科省は各大学に改善を促す。

答申は、「学士力」を、
 専攻分野の基本的知識を体系的に理解する力。
 問題を発見し解決に必要な情報を収集、分析して解決できる力、などと定義。
「大学は学位を与える際の方針を具体的に示し、積極的に公開すべきだ」として、大学卒業の条件を厳しくするよう求めた。

また、「(入学者の学力向上のため)必要に応じて補習などの配慮を行なっていかなければならない」などと提言した。

一方、塩谷文科相は、フリーターや若年無業者の増加を踏まえ、高校や大学から社会に出る際の対応策となる「キャリア教育・職業教育のあり方」について同日、中教審に諮問した。


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