2014年9月 6日 (土)

野生生物3割 絶滅の恐れ

 毎日新聞(9/5)から

 ニホンウナギが「絶滅の恐れがある」とされたことで注目された国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリストは、最初に出版されてから今年で50年になる。「命のバロメーター」とも呼ばれるリストから見える野生生物の現状を探った。

 参照 南米の熱帯雨林の60種の新種発見 2013/10
    世界の絶滅危惧種 2013/07

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《驚くことはない。地球上の生物は、滅びては生まれるの繰り返しだ。ただ、人間という尊大で我が侭な動物が驚異的な増殖を始めてからは、ヒトの他に生まれるものが少なくなり、滅びるものが多くなっただけのことだ。千年、二千年の短いサイクルで考えるのではなく、数千万、数億年で想像してみればいい。千年、二千年なんて瞬きほどの時間だ。滅びるものの中には、ヒトの生産をストップしたような日本人や、憎み合い殺し合う人類の絶滅が含まれることだってあり得ることだ。》

 IUCNは、世界各国の政府や政府機関、非政府組織(NGO)などが加盟する国際的な自然保護組織だ。世界の絶滅の恐れがある生物について、その原因や現状、対策などをまとめたものがレッドリストで、1964年、哺乳類と鳥類に関するリストが公表されたのが最初だ。

 以降、世界中の専門家が参加してリストを改訂し、現在に至っている。この7月に正式に発表された改訂リストで、ニホンウナギが「近い将来の絶滅の恐れが高い」とされたことで注目された。

 最新のリストでは7万4106種が評価され、うち約30%の2万2176種に絶滅の恐れがあるとされた。両生類やサンゴの生息状況が近年、急速に悪化し、絶滅危惧種が増えており、増礁サンゴは評価した種の33%、両生類は41%が絶滅危惧種だ。

 レッドリストは絶滅の危険度を「ごく近い将来の絶滅の危険性が高い」(EN)、「絶滅の危険が増大している」(VU)の3ランクに分けて評価。既に絶滅してしまった種と、動植物園のような飼育・栽培下でしか存在していない「野生絶滅種」も記載されている。

 アフリカのクロサイはCRで、ジャイアントパンダやトラはEN、VUにはホッキョクグマなどが含まれる。

 日本では沖縄のリュウキュウカラスバトやニホンアシカが絶滅種。最も絶滅の危険度が高いCRには、北海道のサケ科の魚・イトウ、アベサンショウウオ(福井県、兵庫県、京都府)、オキサンショウウオ(島根県)、ノグチゲラ(沖縄県)やキクザトサワヘビ(同)、甲羅がべっ甲の材料として使われた海亀の一種、タイマイなどがある。

 レッドリストの見直しの中で注目されるものがアフリカ大陸東岸の島国マダガスカルに多数の絶滅危惧種がいるとされたことだ。

 日本の約1・5倍の59万平方キロのマダガスカルには独自の進化を遂げた多数の生物がすんでいる。専門家によると、植物は約1万1000種、陸上の哺乳類は約140種、カメレオンなどの爬虫類は約360種が、この島にしかいない固有種で「生物多様性のホットスポット」と呼ばれる重要地域の一つになっている。

 特にユニークなのが、キツネザルと呼ばれる霊長類の仲間で、101種いるすべてがマダガスカルの固有種だ。最新のレッドリスとによると、体長9㌢と世界最小のサルとされるマダムベルテネズミキツネザルから、体長70㌢近くになる大型のインドリまで、101種中90種に絶滅の恐れがあると評価された。脊椎動物の中で、これほど絶滅危惧種の多いグループはないという。

 商業目的の森林伐採や農地開発などによって、森林のほぼ90%が既に破壊されたことに加え、ペット目当ての爬虫類の捕獲などもあって、多くの生物が絶滅の危機に立たされた。童話「星の王子さま」で有名なバオバブの中にも、マダガスカルの固有種で、絶滅危惧種とされているものもある。

 2009年1月に発生した反政府勢力による暴動や大統領の追放などの政情不安によって国内政治が混乱し、先進国からの援助がストップしたことが環境破壊に拍車をかけた。だが、IUCNの専門家は「状況は厳しいが、まだ希望はある」と言う。「昨年新大統領が選出され、政治が安定を取り戻しつつある。新たな自然保護区の設定などが進むと期待したい」と話す。

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2014年7月31日 (木)

富士山屎尿処理能力すでに限界「携帯トイレ」を

 毎日新聞(7/31)から、

 《サッカーの世界大会で名を挙げた日本のゴミ拾いも、スキモノの仕業だったのか。26、27日のももクロのばか騒ぎ、同じく26日の隅田川の花火大会の後のゴミの山がツイッターで世界に発信され、日本人のマナーのなさ、その宴の後の惨状ぶりに世界が呆れ返った。春は花を見てゴミを捨て、夏は海水浴場や花火大会のある所、加えて近年の山登りブームに乗っかって山がゴミの山。日本の心ある人には、季節ごとに繰り返される日本の有象無象の人間たちがが集まった後の汚らしさには、苦々しい思いで息が詰まる。》

《富士山に登る男たち、女たちのくそ小便の問題もそうだ。》

 NPO法人「グラウンドワーク三島」の調査団が今年2月に屋久島(鹿児島県)、3月にはニュージーランドを相次いで訪問した。世界遺産に登録されている現地の環境政策や、観光客の増加に伴う課題について調べ、富士山の環境保全に役立つヒントを探ることが目的。調査団に同行し、富士山のトイレ問題について考えてみた。

Photo_2 屋久島は1993年、世界自然遺産に登録された。樹高30mの「縄文杉」に代表される山の大自然を楽しめるほか、海のレジャーも満喫でき、年間30万人の観光客が訪れる。観光客が急増すると、トイレの問題が浮き彫りになる。標高約1300mに立つ縄文杉を見るためには、最も人気のある「荒川登山口」ルートで片道約5時間。1日当り1000人以上が訪れる5月連休などには「トイレ待ち渋滞」が発生する。

 このため、屋久島町や地元観光業界、ガイドらが協力し、登山口から縄文杉までトイレ3カ所、携帯トイレ用のブース4カ所を整備。携帯トイレ(1個400円)の利用を登山客に勧め、屎尿処理のコストを下げようと務めている。

 トンガリロ国立公園は90年に世界自然遺産、93年には世界文化遺産にも登録され「世界複合遺産」となった。原住民マオリ族の聖地でもあるため、自然破壊は即マオリに対する差別、蔑視につながることから、ニュジーランド政府や地元自治体も環境保全には敏感だ。

 公園内にある人気の縦走コース「トンガリロ・アルパイン・クロッシング」(19・4キロ)には、駐車場や「ハット」と呼ばれる小屋など計5カ所にトイレがあり、いずれもきれいに使われている。ニュージーランドは携帯トイレ教育が盛んなお国柄で、小学校では年に1回、携帯トイレを持参して山に入り、大も小も立ったまま用を足すトレーニングを実施している。

 登山口で渡す必要もある
 富士山の山小屋42軒には計49基のバイオトイレが設置されているが、登山シーズン中の処理能力は約25万人分とされ、理論上はすでに限界だ。

 屋久島、ニュージーランドの調査団員を務めたグラウンドワーク三島の速水理事は「富士山の登山客に携帯トイレの利用を徹底してもらうためには、それなりの要因が必要だ。普及のためにも、登山口のゲートで携帯トイレを渡し、用を足してもらうようお願いしてはづだろう」と提案する。

《山小屋での宿泊計画のない1日限りの私の登山心得は、出発する前1週間ぐらいから、極力水分を摂らないように調整した。登山中の汗を嫌っての対策だが、それでも汗は出る。途中の水分補給は殆どしないで一気に登る。30代半ばでの富士登山だったが、友人はこっそりと西瓜を運び、頂上で8人で分け合った。加えて頂上ではコップ一杯(高額に感じたが値段は失念した。)の水を飲み、そのまま下山、砂走りを駆け下りたが誰1人、往復にかけて尿意を催し用を足すものはいなかった。》

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2014年3月20日 (木)

鳥獣保護法の改正

 毎日新聞(3/19)から、

 シカやイノシシによる農作物被害などが深刻化し、鳥獣保護法が抜本的に改正される。改正に向けた答申をまとめた中央環境審議会(中環審)小委員長の石井信夫・東京女子大教授(専門は哺乳類保護管理)にインタビュー。

 ☻中環審の答申を基に鳥獣保護法改正案が今国会に提出された。そのポイントは?

 現行法は野生鳥獣の捕り過ぎを防ぐ仕組みが基本になっている。改正案は、ニホンジカやイノシシなど、種によっては積極的に捕獲を進めて数を減らすという考え方を明確に打ち出し、そのための仕組みを定めている。
 これまで捕獲の主な担い手は趣味で狩猟をするための免許を持つ人たちだったが、技能や安全管理体制などの基準を満たす団体や企業を「鳥獣捕獲等事業者」として認定する制度を導入し、捕獲を専門とするプロの育成を促進する。都道府県や国が〔鳥獣捕獲等事業」を認定事業者に委託して実施することで、より効率的に捕獲が進むと期待される。

 【鳥獣捕獲等事業者】
 鳥獣保護法改正案に盛り込まれた新制度。捕獲に関する安全管理体制や、所属する狩猟者の技能・知識が一定の基準に達している企業や団体を都道府県知事が認定する。ビジネスとして狩猟を担う団体が参入することで、効率的に捕獲が進められると期待される。

 ☻野生鳥獣に被害はそれほど深刻なのか

 鳥獣による農作物の被害額は、農林水産省が調査を始めた1999年度から年に200億円前後で推移し、2010年度は239億円に上っている。そのうち、90年代から目立つようになったニホンジカによる被害額が約80億円、イノシシと合わせて全体の6割以上を占めている。
 シカが植物を食べることによって、ササなどの下草がなくなる、樹木が枯れて森林が衰退するといった自然環境の激変も日本各地で起こっている。南アルプス高山帯のお花畑の消失、尾瀬の湿原の荒廃など、多くの国立公園でも歴史上初めてといえる事態が起きている。植生が変われば、そこに見られる希少な植物や鳥、虫なども消えてしまう。こうしたことの背景には個体数の増加と分布域の拡大がある。シカの分布域は78〜03年の間に1・7倍、イノシシは1・3倍になり、その後も拡大している。

 ☻シカやイノシシが増えた原因は何?

 狩猟圧の低下と、生息に適した環境の増加が主な要因と考えられている。狩猟免許所持者の減少と高齢化は急速に進んでいる。天然林を伐採してスギやヒノキを植える戦後の拡大造林はシカの餌場を増やした。シカやイノシシの良い住み場所になる耕作放棄地や利用されなくなった里山林も広がっている。冬期の死ぬ率が低下したこと、狩猟規制の緩和が遅れたことなども関係していると言われている。

 【狩猟免許所持者】
 減少が続いており、最近40年で6割以上減り、2010年度は約19万人。高齢化も進み、60歳以上が約64%を占める。鳥獣保護法で認められる捕獲には、①趣味などの狩猟 ②都道府県知事などによる許可捕獲(被害防止、個体数管理)があるが、②の場合も実際の捕獲は地元猟友会が行なうことがほとんど。免許所持者の減少が許可捕獲の担い手不足に直結している。

 ☻捕獲強化には、動物愛護などの観点から反対の声もある。

 動物を殺すのはかわいそうという気持ちは自然な感情だと思います。でも「捕獲は安易で、殺さずに済むやり方があるのではないか」という考えは都市生活者の幻想です。農作物や生活環境の被害を抑えるために、今でも都道府県知事などの許可の下に「有害鳥獣駆除」や「個体数調整のための捕獲」が行なわれ、鳥獣捕獲数は年約100万頭に上っている。そのうち、10年度はイノシシが約25万頭、シカは約20万頭で、2種ともに狩猟による捕獲数を超えている。
 これだけの動物を毎年殺すことによって、野菜や米など私たちの食料が生産され、生活が守られていることを認識してほしい。時に危険な「有害駆除」に携わっている人たちには感謝するほかない。しかし今の捕獲レベルは十分でなく、今回の法改正提案に至った。捕獲しなければ、動物の数は更に増えて農林業被害はもっと深刻化し、衝突事故や生活被害も増える。自然からも多くのものが失われる。それは誰も望まない。

 ☻自然との関わり方が改めて問われている。

 動物である人間は生態系の中の「消費者」であり、他の生き物の命を取り、住む場所や食物を巡って他の動物たちと争わなければならない存在だ。昔の人にとっては、農作物を荒らすシカやイノシシの数を抑え、山に押し込めることは、死活問題だったと思う。今はその緊張関係が弱まっている。自然から切り離された都会に暮らしていると分からないが、ある側面では本来の人と自然の関わり方に戻ることが求められていると思う。

 ☻今後の課題は何?

 新しい仕組みができたとしても、実際に効果を上げるには、人材の確保や育成が必要だ。捕獲事業が適切に行なわれるよう専門家を自治体に配置するなど体制作りも欠かせない。捕獲強化だけでなく、長期的には生態系全体の保全を考慮して山の環境を整えていくことも重要になる。
 また、現状や捕獲の必要性を多くの人に理解してもらう普及啓発が課題だ。捕獲された動物を山の幸として活用することも、そのために役立つと思う。狩猟が自然を守るのに貢献することを広く知ってもらい。特に若い狩猟者が増えることを期待っしている。

《常々、殺した動物の肉を口にしながら、クジラやイルカの捕獲に、同じ口で異を唱える動物愛護を唱える人たちを筆頭に、殺した動物の皮を纏って暖をとる人、足に履く人、肩から下げたり脇に抱える人、首に巻く人たち。可愛がるつもりの動物自身には余計で迷惑なトリミングや首輪にくさり、人間の独りよがりの自己満足でしかないのが理解できないのか。石井教授の説も分かるが、動物たちが現状のように住みにくくなったのも、我が物顔の偉ぶった人間の開発に次ぐ開発の結果そうなったものだろう。記事には特に目立つ大きな字で「狩猟は自然を守る」と書くが、私には、人間の勝手な言い分にしか聞こえない。私はこれまでに『命』の問題として多くを書いてきたが、数篇を参照に付す。》

 参照 世界遺産「白神山地」シカ食害危機 2013/10
    「秩序ある狩猟」 2011/09
    知床、尾瀬国立公園で初の鹿駆除実施へ 1010/07

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2013年7月 2日 (火)

世界の絶滅危惧種

 毎日新聞(7/2)から、

 国際自然保護連合(IUCN)は2日、世界の絶滅危惧種は2万934種に上るとした最新版の「レッドリスト」を発表した。生息状況を評価した計7万294種の約30%に当たるという。

〖レッドリスト〗
 絶滅の恐れがある野生生物の種のリスト。植物や動物など個々の種の絶滅の危険度を評価し、剪定している。IUCNは絶滅危惧種を「ごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高い」「危険性が高い」「危険が増大」の3ランクに分類し、国際交渉などで保護の優先順位を決めるために利用されている。

 参照 生者必滅会者定離 2006/10/

 IUCNはニホンウナギを絶滅危惧種に指定するかどうかの検討を始めており、5日まで英国で開かれる専門家を集めた会合で議論する。決定すれば、次回以降のレッドリストに掲載される。

 IUCNによると、今回は中国の揚子江に生息する淡水イルカの仲間「ヨウスコウスナメリ」が「ごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高い種」に分類された。1980年代から年5%のペースで減少し、2006年の生息数は約1800頭と推計されていた。

 また淡水に生息するエビの全種を評価し、28%が絶滅危惧種と判明した。98年に全種を評価したスギの仲間についても再評価し、絶滅危惧種が34%に達した。乱開発などにより評価が悪化した種もあるが、保全活動の効果で回復している種もあるという。

 米アリゾナ州の川に生息していたメダカの仲間があらたに絶滅種に認定された。水の枯渇が原因という。

 ほかに淡水エビの仲間と、1912年に最後に目撃されたトカゲの1種も追加され、絶滅種は799種となった。

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2013年6月14日 (金)

鹿肉を食材に、普及目指す

 毎日新聞(6/14)から、

 1 全国各地で鹿や猪が、農作物に大きな被害をもたらしている。特に鹿は全国の農作物被害額の4割弱を占め、農家にとって悩みの種だ。そんな中、増え過ぎた鹿を捕獲し、食材として有効活用する「ジビエ(フランス語で野生鳥獣の肉の意味)料理」を東京や大阪などの大消費地で普及させようと、猟師や料理人が動き始めた。

《いつもの伝(デン)で、騒がしい動物愛護団体からの横槍に気兼ねしてか、遠慮がちに取りあげているが、山の動物たちは古くから狩猟によって食材として利用されてきた。時代の流れとともに東北地方を中心としたマタギや、全国に分布していた猟師の数は減少し、反面野生動物の数は増え続け、開発により生活圏を狭められた動物たちは、餌を求めて山を下り人間の生活圏に入らざるを得なくなり、農作物に与える被害が見過ごせない状況になっている。》

《菜食から西洋並みに肉食人種に変わった日本民族は、牛や豚、鶏ばかりではなく、鹿や猪、兎など、普通に食卓に並べば、何だって食いつくだろう。流通が始まれば、制限を超えて捕獲するようになるのが目に見えている。遠慮することはない、鯨肉がジリ貧になった現在、鹿や猪などを食肉産業として飼育から始めて拡大していけばいい。ただ、猪を一般に流通させるには、品質改良は必要だろう、菜食主義の私はこれまでに一度、柔らかくなったといわれるイノブタ(猪と豚との掛け合わせ)を口にしたことがあるが、歯が立たなかった。》

【閑話休題】
 エゾシカロースト、エゾシカ担々麺‥‥‥。野生のエゾシカ肉を使った料理が並ぶ。東京都世田谷区にある「エゾシカフェ」。金曜日のみの営業だが、仕事返りのサラリーマンらで賑わう。店主の石崎は「脂身が少ないので、特に女性に人気がある」と話す。
 
 石崎はエゾシカ肉の卸会社「クイージ」(東京)の代表も務める。北海道で猟師が捕獲し、食肉処理場でさばかれた野生のエゾシカ肉を、都内の仏・伊料理店などに年間約600キロ販売している。ここ数年流通量は増加傾向といい、「5年前にはニュージーランド産の鹿肉が多く輸入されていたが、最近はエゾシカが取って代わった」と石橋は、手応えを感じている。

 農林水産省によると、2011年度の全国の野生鳥獣による農作物被害額は約226億円に上る。うち、牧草や果樹などを食い荒らすしかによる被害は約82億円。ほかにも、希少な高山植物を絶滅に追いやるケースも出ている。

 環境省などによると、狩猟や国・自治体による被害対策で鹿36万310頭(10年度暫定値)が捕獲された。ところが、食材として活用されたのは、最も先進的と言われる北海道で約14%、長野でも約6%程度で、殆どは廃棄されているのが実情だ。山で捕獲した鹿を麓に運んで解体するにはコストや労力がかかる。その一方で、日本では野生肉を食べる習慣んがある地域は限られ、大量に肉を売ることができないためだ。

 鹿肉消費の拡大を目指し、全国の料理人や猟師らが参加して昨年5月、「日本ジビエ振興協議会」(埼玉)を発足させた。これまで鹿肉を解体して食べる文化がなく、技術が広まっていない地域で、自治体職員や住民を対象に解体処理技術や調理方法の講習を実施するなど人材育成に力を入れる。

 また、JR東日本と協力し、鹿肉を使ったレトルトカレーなどを東京、渋谷駅などの中にある飲食店で提供。手頃な値段で鹿肉を味わえると評判となり、12年度にはカレーなどで2・5トンの鹿肉が消費された。

 協議会代表で、長野県茅野市の仏料理店主、藤木は「鹿肉の食材利用が大幅に拡大できれば、増え過ぎた鹿の捕獲が進んで農家が助かるのはもちろん、野生動物の命を無駄にしないことにもなる」と強調する。

《鹿に限れば鹿の増殖と,人間の胃袋とのバランスが取れればいいが,きっと人間が勝つことになるだろう。その前に、人間の手で牛の領分を脅かすほどに鹿の食肉産業化を考えればいい。》

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2013年5月27日 (月)

外来トカゲ 自然遺産食う(小笠原諸島)

 毎日新聞(5/27)から、《》内は私見

 Photo 世界自然遺産の小笠原諸島(東京都)の無人島・兄島で、外来種のトカゲ『グリーンアノール」の侵入が初めて確認された。このトカゲは繁殖力が強く、島固有の島固有の昆虫を食い荒らし、世界遺産としての価値を傷つける恐れがある。事態が悪化すれば「危機遺産」に指定されかねず、専門家でつくる国の科学委員会は、国内の自然遺産で初の「非常事態」を宣言。環境省などが緊急駆除対策に乗り出した。


〖小笠原諸島〗
 東京都心から約1000キロ南の太平洋情にあり、南北約400キロの及ぶ大小30の島々で構成される。2011年6月に国内4カ所目の世界自然遺産に登録。過去に大陸と地続きになったことのない「海洋島」で、動植物が独自の進化を遂げたことから「東洋のガラパゴス」と呼ばれる。

 グリーンアノールは鮮やかな緑色で体長約15センチの北米産トカゲ。米軍占領下の1960年代に貨物に紛れ込んだか、ペットとして持ち込まれて野生化し、有人の父島と母島では数百万匹が生息すると推測される。90年代に小笠原にしか生息しかない貴重なチョウやトンボなどが姿を消した際の「主犯格」とみられる。両島では駆除が進められているが、根絶はできていない。

 父島から約800メートル離れた兄島(面積約8平方キロ)では今年3月末、東京都などによる外来植物の駆除作業中に4匹見つかり、科学委員会が直後に非常事態を宣言した。その後の調査で、島南部に広がっていることが確認された。NPO法人「小笠原自然文化研究所」によると、生息数は万単位の可能性が高いという。

 兄島北部には、小笠原の乾燥した気候で独自に進化した背の低い原生林(乾性低木林)が広がり、遺産の中核として、世界的価値がある固有の生態系が高く評価された。グリーンアノールの侵入域が広がれば乾性低木林を支える昆虫類が減り、島全体の生態系に大きなダメージを与えかねない。事態が悪化すれば、国連教育科学文化機構(ユネスコ)から「危機にさらされている世界遺産」に指定される恐れさえある。国の科学委員会委員長の大河内・森林総合研究所理事(森林動物学)は「時間がない。人的資源を集中し、何にも優先して対策を行なうべきだ」と訴える。

 小笠原が2011年6月に自然遺産に登録された際、「新たな外来種の侵入に対して継続的な注意が必要」と注文がついた。グリーンアノールの兄島への侵入経路は、流木などの自然現象とも観光など人の往来に伴うものとも考えられる。グリーンアノールを食べるクマネズミも外来種で、駆除を進めた結果、グリーンアノールが増えてしまったとの見方もある。一度侵入した外来種を根絶するのは容易ではなく、環境省は拡大を防ぐフェンスの設置や、ゴキブリ捕獲用の粘着シートなどの「わな」を仕掛けるなどして集中的に駆除に取り組む。

《1960年代から侵入の推測もあるということは、遺産登録の半世紀も前から住み着いていたことになる。登録の申請に当たって、外来種問題は問題としての認識はなかったのか。今更ながらのことと思う。それにこれまで外来種問題が話題になるたびに私見を述べてきたが、当面の50年100年の短いスパーンではなく、100万年1000万年でみれば、固有種、外来種を論ずることは殆どナンセンスとなっていることだろう。現在、この流れはすでに止められないところまで来ているとみていい。》

《動物や昆虫、魚類、植物でも全く同じことだ。例えば「動物」である人間で考えてみればいい。漂流や冒険で、小舟から大型船になり、飛行機になり、或いは戦争や植民で、或いは奴隷制度で駆り集めた黒人種の大陸をまたいでの白人種との混血が起きている。最近でも国際結婚と呼ばれる進んで外来種となり種の混合、混血に走る人間もいるくらいだ。人間だけに許されていい問題ではないだろう。》

 参照 生者必滅会者定離 2006/10/

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2013年2月25日 (月)

富士山入山料徴収へ

 毎日新聞(2/24)から、

 富士山の世界遺産登録を目指す「富士山の日フェスタ」が23日、東京都千代田区で開かれ、川勝静岡県知事と横内山梨県知事は記者団に環境保全活動の財源確保のために早ければ今夏にも富士山の登山者らから入山料の徴収を始める考えを表明した。

 会場で記者団の取材に応じた横内氏は「世界遺産になったら、しっかりした保全をしなければならない。経費について、入山者に一定の負担をお願いすることは十分にあり得る」と述べ、環境保全の財源としての必要性を強調した。また、徴収方法や金額について川俣氏は「あまり強制する形にならないのが望ましい。お気持ちを自然にいただくということから始まるかもしれない」と話した。

 富士山の登録の可否決定を前に国際記念物遺跡会議(イコモス)は5月、富士山の現地調査を踏まえた評価結果を勧告する予定だという。横内氏は「イコモスの考え方も取り入れながら、両県で一緒に議論していく必要がある。関係者のコンセンサスが得られれば、早く試験的にスタートすることもある」と述べ、今後早期導入に向けて関係者と協議を進める考えを示した。

 フェスタは富士山の日(2月23日)に合わせ、両県と認定NPO法人富士山を世界遺産にする国民会議(中曽根康弘会長)が初めて共同開催。関係者約400人が参加し、今夏の世界遺産委員会での登録決定に向け、機運を高めていくことを確認した。


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2012年6月11日 (月)

シェールガスって何?

 毎日新聞(6/3)から、

 原油に代わる「革命」的資源として脚光を浴びているシェールガスだが、東日本大震災で原発が危なくなって眼が向けられたのがシェールガスだ。

 Photo1859年8月、ペンシルベニア州
タイタスビルの近く、
オイル・クリーク
で機械掘りによる油井が出現し、
石油生産の一大画期となった。
( Wikipedia より)

 爾来およそ150年。資源としての
原油の埋蔵量が心配され、
あと40、50年で枯渇すると煽られ
たが、
一説には2000年〜8000年は
大丈夫と主張する学者
(武田邦彦・資源材料工学)もいる。

Photo_2シェールガスとは砂より小さい粒や粘度でできた泥岩の一種、頁岩(ケツガン=シェール)層という岩盤から採掘される点ノンガスのことだ。従来の天然ガスと成分は同じで、200年ほど前から存在はしられていた。従来のガスが比較的浅い砂岩層にあり、ガスのある層に穴を開けるだけで自然に吹き出すのに対し、シェールガスは深さ2000〜3000メートルの地層にあるため採掘が技術的に難しく、開発が進んでいなかった。00年代半ば以降、地中でシェール層に沿って水平に井戸を掘る掘削法と、水圧で岩盤にひび割れを生じさせてガスを取り出す方法などの特殊技術が発達し、生産が飛躍的に伸びた。これにより、ガスの低価格化が進み、「シェールガス革命」とも呼ばれている。

《しかし、いずれにしても地球の寿命や大きさだって限りがある。8000年だって地球寿命の40億年からみれば、一瞬とは言わないまでも微々たる時間だ。今、合い言葉のように「次世代の子どもたちのために」を叫ぶが、現在生存している者の将来(次世代、次々世代・・・)への責任は、どのようにとることができるのか。結局は「後は野となれ山となれ」ということではないのか。》

 中東に埋蔵が集中している原油と違い、シェールガスは世界の広範囲に確認されている。今の技術で採掘できる資源量は、東京ドームに換算すると中国の約2900万個分がトップで、米国(約1800万個分)、アルゼンチン(約1700万個分)メイシコ(約1500万個分)などと続く。

《しかし、数えられると言うことは限りがあるということを言っているだけだ。いずれにしても限りある地球を切り崩し、掘り崩していることに違いはない。》

 中国は、自国開発を本格化させることを決めた。数年前から中国の石油会社は米国のガス会社に投資し、開発ノウハウを得ようとしているようだ。米国政府も中国に協力姿勢を示し、今後は中国での開発が進むかもしれない。一方、プレート境界上にある日本には強固な岩盤がなく、地層が新しいためシェールガスの存在は確認できていない。

 近い将来に枯渇の懸念があるといわれる原油に代わる資源として期待されることで、「革命」的と呼ばれ、開発が進めば原油や石炭からのエネルギー転換が進むだろう。シェールガスが存在する場所にはシェールオイルと呼ばれる原油も眠っており、開発が進めば、オイルショックで2次3時の高騰が続く原油価格も下がる可能性がある。ただ、シェール層の掘削に使う水は特殊な薬剤を含み、地下水を汚染する可能性があり、環境対策との両立が課題だ。

 東日本大震災から原発の相次ぐ停止で火力発電の割合が増えた日本には朗報だ。主な燃料となるのは、マイナス162度まで冷却して液化した天然ガス(LNG)だが、11年度の輸入量は8318万トンと、前年度比17・9%増になった。日本はLNGの最大の輸入国だが、今後も火力発電頼みは変らないとみられ、商社各社は米国やカナダでシェールガスの採掘権を確保しようと動いている。

 期待は大きいが、日本は既にシェールガスの恩恵に浴している。震災直後に電力会社がLNG調達に奔走したが、米国でのシェールガス開発の進展で、世界全体でガスが供給過剰になったため、なんとか調達できた。日本にとってシェールガスの魅力は価格の安さだ。11年度に火力発電用燃料としLNG5289万トンを使ったが、最近のスポット価格(1回ごとの契約で取引する価格)で換算すると約3兆9300億円かかったことになる。これを米国のシェールガスを原料とするLNGに置き換えると4割ほど安くなる計算だ。
 
 米国から輸入することで電気代も下がることが期待できるが、米国からの輸入には課題もある。米国は自国のエネルギー確保のため、ガス輸出を自由貿易協定(FTA)締結国にしか認めていない。日本は非締結国なので特別な許可が必要になる。米国内では低コストなガスの普及が、製造業の国内回帰を後押ししており、輸出でなく国内産業に振り向けるべきだとの指摘もある。

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2012年1月31日 (火)

「職場のパワーハラスメント」定義と種類

 毎日新聞(1/31)から、

 参照 続・職場のいじめ 2010/08

 《数年の間に、『行為』を定義するのに、日本語の「いじめ」や「嫌がらせ」からなぜか横文字カブレの「パワハラ」に変わったようだ。いじめる側もいじめられる側も、日本語では幼稚園か小学生のことと勘違いするのだろうか、横文字の方が分かりやすいのだろうか。いずれにしろ、これが大人の世界を対象にしてつくられる決まりごととは余りにも淋しく、悲しい現実だ。》

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 職場のいじめ対策について検討している厚生労働省の円卓会議のワーキンググループ(作業部会)は30日、上司からのいじめだけでなく、同僚や部下からのいじめや嫌がらせも「職場のパワーハラスメント(パワハラ)」と定義すべきだとした報告書をまとめた。

 パワハラについて報告書は、地位だけでなく、I Tなど専門知識や人間関係などの職場内の優位性を背景に「業務の適性範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為」と定義した。政府がパワハラの定義を打出したのは初めて。

 労働局に寄せられた職場のいじめ・嫌がらせに関する相談件数は02年度の約6600件から、10年度には約4万件に急増。厚労省は来年度、パワハラの実態調査を実施するなどして取り組みを強化する方針だ。

 円卓会議の作業部会は、企業の聞き取りや訴訟事例の検討などを実施。この結果、無視を続けるなど同僚からのいじめや、I T知識が豊富な若手社員が上司に嫌がらせをするなどの事例が多いことが判明したため、パワハラの定義を幅広くするべきだとした。

《上司の勉強不足、威厳と統卒能力の欠除、若者の幼稚な人を見下す感性、現在の職場がこれほど心の貧しい人間の集まりとは、俄には信じがたい。》

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2010年10月19日 (火)

続・山小屋のトイレに国の補助が

 毎日新聞(10/18)から、
 8月に取り上げたが(参照)その続編。
 Toilet_2 山岳地帯の屎尿処理のあり方が揺れている。トイレがない山では登山道周辺に排泄物が散乱し、トイレがあっても維持管理はボランティアや民間の山小屋頼りだ。国の補助も対象が限定されている。受益者負担の観点から「公費を出すべきではない」との議論もあるが、処置を放置すれば山の裸地化や水質の悪化を招く。山小屋トイレの現状はどうなっているのだろうか。

 「用を足してから登下山しましょう」。長野県・北アルプスの岳沢小屋で、山岳ガイドが登山者に呼びかけた。小屋は、上高地と穂高連峰を結ぶ要所にある。4年前、雪崩で全壊し、再建の際にトイレは約1600万円かけて7月、地上に排泄物を運搬できる「カートリッジ式」に建て替えられた。

 90年代後半、世界史全遺産登録を目指した富士山が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の関係者から「環境保全に問題がある」と指摘され、山の屎尿処理が注目された。当時、多くの山小屋が排泄物をそのまま地下に浸透させたり、埋め立て処分していた。

《若いころ、山登りをしていた私は、例えば富士山に登っても、頂上で昼食を取り、ミルクも飲み、その後下山するわけだが、排泄をしなくてもいいように、数日前から体調をコントロールし、そのため排泄する必要もなく往復していた。特に富士山は昔から山岳信仰の対象であり、「六根清浄」(“ろっこんしょうじょう”‥‥我欲などの六っの執着を断ち、魂を清らかな状態にすることで、登山の際にかけ声としても用いられた。)を唱えて登っていた。最近の決められたトイレまで用意されての登山では、極力それ以外の場所を汚さないようにすることは、登山者の最低限のマナーと心得るべきだろう。》

 事態を重く見た環境庁(当時)は99年、環境配慮型トイレの普及に向け補助制度を導入。カートリッジ式や微生物に分解を手伝わせるバイオトイレが広がった。最も補助を受けている自治体は、常念岳(2857メートル)を始め有名な山が多い長野県。09年度までに山小屋トイレ163カ所のうち、補助制度による38カ所を含めた109カ所が「垂れ流し」から環境配慮型になった。

 補助が出るのは1000万円以上の規模の大きい新設や改修に限定されている。それより小規模のトイレやその後の維持管理は所有者やボランティアに委ねられている。

 9月中旬、日本百名山の幌尻岳(北海道、2052メートル)の山小屋から、登山愛好家らで作る「日高山脈ファンクラブ」の21人が、一斗缶などに詰めた342キロの屎尿を担ぎ降ろした。登山口から車で公園に運び、ゴム手袋やマスク装備で浄化槽に捨てた。「においがきつい」と声が出る。屎尿が跳ねて、顔にかかることもある。

《田舎で少年時代を送った者には、畠の近くに2〜3畳ほどの大きさの深い肥溜めが設けられていたことを知っていよう。今では下肥(しもごえ)を畠に蒔く野菜栽培は無くなったが、お百姓には欠かせない「こやし」を溜める屎尿池だった。その当時のお百姓には失礼だが、その肥溜めの傍を通るだけで今にも鼻が曲がりそうなほどの悪臭が立ち籠めていたものだ。当時は柄杓で畠に蒔いたが、山のトイレの屎尿を入れた缶を背負って廃棄作業をするのは、思っても頭が下がる思いだ。何十年と我が家のトイレの掃除をしている私も、便器の手入れには手や顔、口にまで屎尿が跳ぶこともあるが、家族のものと思えばこそ我慢も出来るのだが。》

 人力の運搬は年2、3回。下山まで沢を10回以上渡り、高橋事務局長は「いつ事故が起きてもおかしくない状況」だという。小屋を所有する平取町に、ヘリコプターによる運搬を要請しているが、町の担当者は「1回200万円以上かかり、財政的に厳しい」と話す。

 年間3万人が訪れる北ア・涸沢カールにある「唐沢ヒュッテ」ではヘリコプターを使う。昨シーズンは20回の搬送を頼み、屎尿処理費や人件費、トイレットペーパー代も含め300万円弱かかった。山口孝社長は「客のチップだけで賄うのは難しい」と溜め息をつく。トイレがない山では、ボランティアが定期的に登山道周辺の排泄物を回収している。9月上旬、北海道の大雪山系ニセイカウシュッペ山の林で年1回の回収作業があり、排泄物やトイレットペーパーが散乱しているのが確認された。

《雑多な人間の集まるところでは、それこそ「たけし」ではないが、皆んなで破れば怖くない心理が働き、当たり前のようにマナーは失われる。スイス・レマン湖畔のトイレの凄まじいほどの汚れっぷりは、何度か取り上げたが、世界共通のことかも知れない。》

 愛甲哲也・北海道大准教授(園芸学・造園学)の調査では、大雪山系トムラウシ山の南沼夜営指定地で、植物の生えていない「裸地」が77年は約120並行メートルだったが、97年には1066平方メートルに拡大。登山者が用足しに踏み入ることと、垂れ流された排泄物が主な原因とみられる。

 屎尿は微生物によって分解されても窒素やリンが残る。高山植物にとって栄養過多の状態になり、成長し過ぎたり枯れたりして、生態系が壊れる。大便に含まれる大腸菌で、水源が汚染される恐れもあるという。

 トイレが整備されてもマナーが守られなければ環境悪化は止められず、関係者の間では「補助の継続は必要だが、受益者(登山者)も負担すべきだ」との意見が強い。NPO法人「山のECHO」(東京都港区)の上幸雄代表は「適正な額を議論したうえで、入山料に含めた徴収などを試行してはどうか」と提案する。

《山が山男だけの数で済んだ時代は終わった。性別も年齢もピンからキリまでが揃って山へ山へと金魚のフンか蟻の行列のように続く時代になった。垂れる糞尿も膨大なものになっている。もう垂れ流して済むことは許されないだろう。だがしかしだ、受益者負担で金をとれば、今度は「金を払っているんだから、これくらいいいだろう」を言う人間の数が、また「皆で垂れれば怖くない」と続くことになるだろうな。》

 愛甲准教授は、行政の役割について「携帯用トイレなど、入山者数などに応じたトイレのあり方がある。初期投資の補助だけでは不十分で、対策の前提として登山者数や環境への影響など基礎データを調査すべきだ」と指摘する。

《携帯トイレについては、私も以前のブログ(「富士山が糞尿まみれに」2008/08/02)で書いている。》

 

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