野生生物3割 絶滅の恐れ
毎日新聞(9/5)から
ニホンウナギが「絶滅の恐れがある」とされたことで注目された国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリストは、最初に出版されてから今年で50年になる。「命のバロメーター」とも呼ばれるリストから見える野生生物の現状を探った。
参照 南米の熱帯雨林の60種の新種発見 2013/10
世界の絶滅危惧種 2013/07
《驚くことはない。地球上の生物は、滅びては生まれるの繰り返しだ。ただ、人間という尊大で我が侭な動物が驚異的な増殖を始めてからは、ヒトの他に生まれるものが少なくなり、滅びるものが多くなっただけのことだ。千年、二千年の短いサイクルで考えるのではなく、数千万、数億年で想像してみればいい。千年、二千年なんて瞬きほどの時間だ。滅びるものの中には、ヒトの生産をストップしたような日本人や、憎み合い殺し合う人類の絶滅が含まれることだってあり得ることだ。》
IUCNは、世界各国の政府や政府機関、非政府組織(NGO)などが加盟する国際的な自然保護組織だ。世界の絶滅の恐れがある生物について、その原因や現状、対策などをまとめたものがレッドリストで、1964年、哺乳類と鳥類に関するリストが公表されたのが最初だ。
以降、世界中の専門家が参加してリストを改訂し、現在に至っている。この7月に正式に発表された改訂リストで、ニホンウナギが「近い将来の絶滅の恐れが高い」とされたことで注目された。
最新のリストでは7万4106種が評価され、うち約30%の2万2176種に絶滅の恐れがあるとされた。両生類やサンゴの生息状況が近年、急速に悪化し、絶滅危惧種が増えており、増礁サンゴは評価した種の33%、両生類は41%が絶滅危惧種だ。
レッドリストは絶滅の危険度を「ごく近い将来の絶滅の危険性が高い」(EN)、「絶滅の危険が増大している」(VU)の3ランクに分けて評価。既に絶滅してしまった種と、動植物園のような飼育・栽培下でしか存在していない「野生絶滅種」も記載されている。
アフリカのクロサイはCRで、ジャイアントパンダやトラはEN、VUにはホッキョクグマなどが含まれる。
日本では沖縄のリュウキュウカラスバトやニホンアシカが絶滅種。最も絶滅の危険度が高いCRには、北海道のサケ科の魚・イトウ、アベサンショウウオ(福井県、兵庫県、京都府)、オキサンショウウオ(島根県)、ノグチゲラ(沖縄県)やキクザトサワヘビ(同)、甲羅がべっ甲の材料として使われた海亀の一種、タイマイなどがある。
レッドリストの見直しの中で注目されるものがアフリカ大陸東岸の島国マダガスカルに多数の絶滅危惧種がいるとされたことだ。
日本の約1・5倍の59万平方キロのマダガスカルには独自の進化を遂げた多数の生物がすんでいる。専門家によると、植物は約1万1000種、陸上の哺乳類は約140種、カメレオンなどの爬虫類は約360種が、この島にしかいない固有種で「生物多様性のホットスポット」と呼ばれる重要地域の一つになっている。
特にユニークなのが、キツネザルと呼ばれる霊長類の仲間で、101種いるすべてがマダガスカルの固有種だ。最新のレッドリスとによると、体長9㌢と世界最小のサルとされるマダムベルテネズミキツネザルから、体長70㌢近くになる大型のインドリまで、101種中90種に絶滅の恐れがあると評価された。脊椎動物の中で、これほど絶滅危惧種の多いグループはないという。
商業目的の森林伐採や農地開発などによって、森林のほぼ90%が既に破壊されたことに加え、ペット目当ての爬虫類の捕獲などもあって、多くの生物が絶滅の危機に立たされた。童話「星の王子さま」で有名なバオバブの中にも、マダガスカルの固有種で、絶滅危惧種とされているものもある。
2009年1月に発生した反政府勢力による暴動や大統領の追放などの政情不安によって国内政治が混乱し、先進国からの援助がストップしたことが環境破壊に拍車をかけた。だが、IUCNの専門家は「状況は厳しいが、まだ希望はある」と言う。「昨年新大統領が選出され、政治が安定を取り戻しつつある。新たな自然保護区の設定などが進むと期待したい」と話す。
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