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2015年4月 9日 (木)

粛々

 毎日新聞から、

 《安倍晋三は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に関し、8日の集中審議の際、強情はって「粛々と進めている」と口にしたが、結局は、今後は使わないことにすると鼻っ柱を折られた感じで、官房長官に続き粛々は使わないことにすることに。》 

 7日“余録”から

 1990年の19件が、その10年後は376件、2010年には594件⎯⎯⎯急増したのは全国紙3紙で1年間に「粛々」という言葉が使われた回数という。大半は政治家の発言だ(円満字二郎著「政治家はなぜ『粛々を好むのか』新潮選書)

 中国最古の詩集『詩経』では鳥の羽音の擬音語としても使われた「粛々」である。日本の有名な用例としては、川中島の合戦を詠んだ頼山陽の詩の中の「鞭声粛々」が思い浮かぶ。先の本は、渡河する軍勢の静かさを鞭の音で表す擬音語に連なる用例と説明している。

 以後の「粛々」が集団で秩序を保ちつつ事を遂行するさまを指すようになったのは、この「鞭声粛々」の影響らしい。それを受け継ぐ今日の政治家の「粛々」は、批判を浴びる苦境にあって「慌てずさわかず」事を進めるという意味で好んで用いられるようになった。

 要するに「批判には耳を貸さない」というわけか。菅官房長官が米軍普天間飛行場の辺野古移設について「粛々と進める」との言い方をやめるという。選挙での民意を背景に移設に反対する翁長沖縄県知事との会談で、「上から目線」を非難されたのである。

 「琉球における自治は神話である」。こんな米統治時代の高等弁務官の強権を思い出させると、県知事は「粛々と‥‥」という官房長官の物言いに反発した。この民意軽視批判に、昨日(6日)の会見では移設について「適切に対応する」と言い換えてみせた官房長官だった。

 「粛」の文字本来の意味は「つつしむ」「おごそか」であろう。考えてみれば、政治家が民意に向き合う時の態度としてこそふさわしいはずなのだが。

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