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2015年1月 8日 (木)

冷遇「妊婦マーク」

 毎日新聞(1/8)から、

《足腰弱った妻に代わって食料の買い物に出かける日が増えている。今日もバスを利用して出かけた。外からは空いているように見えたバスも空席はなく、カートを曳いて運転席の横まで歩いた。腰の曲がってきた白髪の爺さんに席を譲る人はいない。優先席もあるが、いつものように老人や病弱の人以外が座っている。運転手の横まで歩いて手すりを掴んだ時だった。後で婦人が立つ気配があった。「○○ちゃん、もっと横に詰めなさい」と聞こえたとき、私の左肩をトントンと叩かれた。「どうぞ」と言われて振り向くと、2、3歳の女児を座らせた若い母親が、胸に赤ちゃんをスリングに抱えて、立ち上がって空いた席を案内してくれた。咄嗟に「大丈夫ですよ、お母さん、子どもさんに手がかかって大変なのに、ありがとうございます」。と好意を断って立ったままで三つ先の終点まで乗った。》

《外出には毎回、同じバスを利用する私は、以前、子ども連れの母子や、乳母車を畳まないまま座席に荷物まで置いて澄まし顔の母親のことを取りあげて、冷たく書いたことがある。》

【閑話休題】
 4月の予定日を控え、おなかは日々大きくなる。時々胃を押し上げられ、腰もじんわり痛い。できれば座りたいが、殆どの場合、席は埋まっている。

 東京都江戸川区の女性(31)は毎朝、世田谷区の会社まで乗り換えを含め約1時間の電車通勤をしている。勤務時間は長女(3)の保育園迎えに会わせているので、午前8時前後のラッシュを避けられない。

 かばんに「マタニティーマーク」を付けている。周りに妊娠を分かってもらえるから。途中の錦糸町駅から約40分乗る東京メトロの電車では、必ず優先席の前に立つ。普通席の人に気を使われると何となく心苦しいが、ここなら車窓に妊婦のステッカーが貼られているので少し気楽だ。

 先月3日のことだった。いつものようにつり革を握ると、前に座っていた中年男性がそれまで読んでいた本を閉じ、下を向いて目をつむった。しばらくして駅に着くと、みぞおちを右ひじで突かれた。「どけっ」。男性は言い放って立ち去った。

 呆然とした。そして悲しくなった。ツイッターで目にした文章を思い出した。マークを付けた妊婦への嫌がらせ。「やっぱりあるんだ」

 2014年2月、インターネット版の雑誌「WebR25」に、「マタニティーマークは危険?」と題した記事が載った。「電車なんかのんなよ! と暴言を吐かれた」「足をかけられてこけた」などツイッターやネット掲示板に書かれた事例を紹介し、「付けることによる危険性はゼロと言えないのが実情なのかもしれない」と結んでいた。

 一方、この記事を紹介したサイトには、過激な反発のコメントが書き込まれた。「満員電車乗るなら流産する覚悟はできてるだろうけど」「だって蹴って下さいマークだろ?」。電車を利用する妊婦へのバッシングがネット上で拡散した。

 2月に出産予定の大田区の女性(34)はこの攻撃を見て、マークを付けるのをやめた。「席を譲ってもらえることはまずない。好奇の目で見られるだけ」と元々感じていた。

 「席を取り合う形となった男性に『バカ』と言われた」(39歳日本語教師)。「優先席に座っていたら、年配の女性から『替わって。妊娠しているだけでしょ』と言われた」(25歳アルバイト)。いくつか妊婦の声を聞いた。国は昨年3月、電車内で「ベビーカーを折り畳まなくてもいい」との見解を示したが、最近もベビーカーを押して電車の乗った途端、嫌な顔をされた母親がいる。

 実情を知りたくて私(連載7おわり:伊藤奈々恵)は先月後半の平日8日間、肘打ちされた女性の朝の通勤に同行した。この間、彼女が立った前の優先席には、述べで男性18人、女性4人が座っていた。

 耳にイヤホンをしてスマートフォンを触っているビジネスマンらしき男性。ずっと目をつむっている40代ぐらいの女性。新聞を読み続ける男性。みな席を譲るどころか、視線さえ上げない。妊婦への嫌がらせはなかったが、他人への「無関心」を感じた。気づきながら、見て見ぬ振りの人もいたかもしれない。

 また、マタニティーマークを知らない人もいただろう。マークは厚生労働省が06年に作ったが、14年7月の内閣府調査で知っていた人は54%、男性の認知度は4割にとどまった。

 肘打された女性はその後もマークを外そうと考えたことはない。悲しい思いをしたのはその時だけ。体調が悪い時や万が一倒れたとき、マークがあれば周囲の対応も違う。付け続けることでより広く知ってもらい、肩身の狭い思いをする妊婦が減ればと祈る。

 同行3日目、途中の停車駅で優先席が一つ空いた。女性は隣に立っていた少し年上らしい女性から腕を軽く叩かれ、座るよう促された。棚から荷物を取り腰を降ろそうとしたところ、マークに気づいたらしい。

 月1、2回程度だが、こんなこともある。「譲ってもらえると、『きょう1日、この人にいいことがありますように』って願うんですよ。

《最後に書いてある妊婦さん、妊娠何ケ月目かな。私の勤務中のこと、妻が身重(中期)だったころ、自宅で棚の物を取ろうとして体を伸ばした途端にお腹に痛みが走って倒れ、たまたま、お隣の奥さんがいたことで救急車を呼んでくれ、大事にならなくてすんだことがあった。記事の妊婦さん、棚への上げ下ろしには問題ないのだろうか。迷信と軽く見る人もいるようだが、胎盤剥離などたまには発生するようだ。》

《思うことだが、女性専用車の利用を考えれば良いのでは。各鉄道会社は、妊婦の通勤利用時間帯、車輛の停車位置、利用に便利な乗降ドアの位置などを詳細に調べ、女性専用車輛をくっつけたからいいではなく、車輛の連結位置なども詳細に調べることだ。》

《若い独身の頃から私自身は、目で判る妊婦には手を引いてでも必ず席は譲ったし、特別優しかったと思っている。自分の足で立つことのできる年齢の子どもには、どんなにぐずっていようが決して席は譲らないが、母親となることが約束されている人には羨ましいほどの思い入れがあった。命を生み育てる「たらちね」「母なる大河」。胸を開いて乳房をふくませる風景には、男には叶わない羨望の目で眺めていたものだった。》

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