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2014年11月22日 (土)

子殺し続発

 毎日新聞(11/22)作家・柳田邦男の“深呼吸”から、《》内は私見。

 今朝も新聞の社会面を開くや、脳内に氷柱を突っ込まれたかのような思考停止に陥った。事件報道を読む時、私は事件の現場を映像的にイメージする習慣が身についている。何事につけ、作家として現場の状況を文書で表現するには、そういう手順を踏まざるを得ない。それがいつの間にか文章に表現する必要がなくても、脳の働きのいわばくせになってしまったのだ。

 3歳の難病の長女に食事を与えていなかったばかりか、真冬に薄着ではだしのまま閉め出したり、ベランダの手すりに縛りつけたりして放置していたという。体重は3歳児平均の半分にまで痩せ細り、司法解剖したところ、腸内にあったのは、アルミ箔やロウ、タマネギの皮だったという。大阪府茨木市で殺人容疑で逮捕された父親は22歳、母親は19歳。

《子どもの年齢を両親の年齢から引けば分かるように、二人が生んだ時の年齢は、どちらもまだ、少年少女だ。今の世の中、子どもが子どもを産むことに何の違和感も持たない世相になっているのだ。早熟の子ども同士がどうすれば子どもができるのかだけは知っていても、妊娠や避妊の知識は学ばず、その後の子どもを育てることについては無知無能そのもだ。》

 こうした記事の文字は、私の脳内で直ちに映像化される。虐待されているのに、誰かに助けを求めることも知らずに、家の前で「ママ!」と泣き叫んでいる衰弱し切った幼い子の姿。空腹のあまり、食べられる物と食べられない物の区別もできずに、台所を探したのだろうか、タマネギの皮やアルミ箔を口に入れてのみ込む姿‥‥‥。

 私はたまらなくなって、脳内の映像を消そうとするが、テレビの画面をリモコンで切りかえるようなわけにはいかない。

 そして、紙面のすぐ横には新潟県燕市でやはり3歳の長女を橋から突き落とした24歳の母親が逮捕された記事が並んでいる。自分を大事にしてくれると信じ切っている母親に抱き上げられ、橋の欄干から突き落とされ、暗い空間を落ちていく3歳児の姿が、脳内に広がる。一瞬、その子の脳裏に走ったに違いない恐怖心まで伝わってくる。こんなことをどうしてできるのか。

《逮捕された母親の供述が夕刊にある。殺人容疑で逮捕された同市吉田堤町、事務員、佐藤あゆみ容疑者(24)が「子育てに悩んでいた」と供述していることが21日、県警への取材で分かった。また、市によると、佐藤容疑者から9月に「娘の育児疲れでイライラする」と相談があった。「夜泣きされると、うざくなって放置してしまう」と電話相談もしていた。佐藤容疑者は2月に元夫の暴力が原因で離婚し、死亡した長女心優ちゃんと交際相手の男性の3人暮らし。県警によると、心優ちゃんの死因は水死と判明した。》
《元であろうと現であろうと、夫の暴力を言えば女は同情される。それほど男に苦労していながら早々と次の男と同棲だ。40年以上前の、私の子育てをブログで書いたばかりだが、その時の長男のぐずりや夜泣きは、昼夜を問わず、妻が懐に抱いたり背中に背負って私の睡眠の邪魔にならないように散歩に連れ出してくれていた。そのような知恵もなく、わが子を邪魔者扱いだ。産んではならないような親の子に生まれた子こそ哀れというべきだ。》

 実は、この夏ごろから、この国の子どもの悲惨さを巡って次々に報道されるデータに<この国は変だ><この国はいつの間にこんなことになってしまったのか>という暗澹たる思いを引きずっていた。

 ▼全国の児童虐待相談件数が2013年度は7万3765件に達し、過去最高となる。これは厚生労働省が全国の児童相談所で確認したものをまとめた数字で、表に出ない虐待もかなりあるとみられる。

 ▼虐待によって死亡した18歳未満の子どもは、厚労省調査で03年7月から13年3月までの約10年間で546人に上り、このうち44%の240人が1歳未満の赤ちゃんだった。

 生後1カ月未満の虐待死の加害者は、91%まで母親だった。死因は口を塞ぐなどによる窒息が39・6%、出産後の放置が14・4%、絞殺が7・2%などとなっていた。

 ▼一方、警察庁の統計によると、今年上半期に警察が虐待の疑いで児童相談所に通告したのは、1万3037人で、統計を取り始めた11年以降で最高。虐待の形態をみると、心理的虐待が約6割を占める。そのうち、両親間などのDV(ドメスティックバイオレンス)が面前で行なわれることで、恐怖や衝撃を受ける例が7割を占めている。以下、身体的虐待、育児怠慢・拒否、性的虐待などの順になっている。(註・直接虐待を受けなくても、面前で両親間のDVや不和を目撃することは、子どもの人格形成をゆがめる要因となる)

 ▼路上や商業施設のトイレなどに放棄された子どもは、今年3月までの5年間に120人もいた。2歳以下が7割を占める(毎日新聞が全国の自治体に尋ねて調査)。

 高度成長期のころは、こうした統計はないが、半世紀に亘って社会問題をみてきた私の印象では、右の統計にみられるような子どもたちの悲惨な状況は、やはり1990年代のバブル経済崩壊後に広がった時代の全般的逼塞(ひっそく)状態によって広がった傾向と見るべきではないだろうかと思う。

 乳幼児期から少年少女期にかけての精神保健の専門家たちが、重要な課題としてとらえているのは、人格形成のゆがみの世代間伝達という問題だ。被虐待児や心のゆがんだ親の下で育った子はやがて、暴力をふるうなど反社会的行動をしたり、心の病気になったりする傾向があるのだ。

 どうすればよいのか。親を処罰するだけでは解決しない。社会全体の問題として、個別の次元では、被虐待児の早期発見と保護の取組みを、制度的にも人的にも、従来の手ぬるさから脱却する格段の強化策を打ち出すこと。そして、社会全体の次元では、子育て世帯の経済的な貧困を支援して、世界的に恥ずべきレベルにあるこの国の「子どもの貧困率」を大幅に下げる具体的施策を打ち出すとともに、子どもは社会で育てるものという理念を国家目標に掲げ、地域ぐるみの新しい取組みのあり方をこの国の文化として確立すべきこと。こうしたアプローチが求められる段階に来ている。

《とは言いながら、子どもを育てるのは本質的に親でなければならないことを、親自身が自覚することを忘れている事が最大の問題だ。》

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