こども園 3割「認定返上視野」に
毎日新聞(8/25)から
参照 子育て新制度 2014/02
男性社員、子育てしよう 2013/11
どうなる幼保一体化 2012/03
子育てビジョン 2010/02
幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「認定こども園」の間で、認定を返上し、幼稚園などに戻ることを検討する動きが出ている。来年度から認定こども園への補助の仕組みが変わることで、減収になる園が出てくる見込みとなったためだ。国は来年4月からスタートさせる子育て支援の新制度の目玉として、支援を拡充し、こども園を普及させる方針だったが、返上が相次げば、新制度の根幹も揺らぐ事態となる。
《もともとこの制度が計画された時点から、上の参照でも取りあげてきたが、このような対策よりも、企業内保育所の制度化の方が余程効果があることを指摘してきた。こども園をスタートさせたはいいが、経営上のほころびが発生する始末だ。下手な考えに終わる懸念すら出できた。》
「まさか、この数字になるとは思わなかった。大きな減収だ」。認定こども園「子どもの森」(東京都稲城市)の角田園長(67)はため息をつく。
同鄢の母体は1962年に開設した幼稚園。「共働き家庭でも、幼稚園教育を受けさせたい」との地域の親の要望を受け、認可外保育所を併設し、2009年に認定こども園となった。0〜5歳まで約500人の子どもたちが通う。
今年5月、政府は、新制度で認定子ども園などに支払う事務費などの補助金(公定価格)案を公表。案に沿って来年度以降の園の収入を試算してみると、現在の収入の約15%に当たる約5200万円もの減収となることが分かった。「今と同程度の補助金がなければ、園の継続は厳しい。国にこども園の普及をはかるつもりではなかったのか」。角田園長は憤る。
「新制度では大幅な減収になる」「このままでは認定こども園を返上するしかない」。同様の悲鳴が、全国の認定こども園から上がってきたのをきっかけに、NPO法人全国認定こども園協会は7月、全員を対象に、新制度移行に向け、緊急調査を実施した。回答した181園の30%にあたる55園が「認定こども園の返上を視野に、検討している」と答えた。返上を考えているところは大規模園が殆どで、現在の収入の1〜2割にあたる2000万円から多いところでは7000万円の減収という。なぜこうしたことが起きるのか。
一つには、新制度の導入で、補助の仕組みが変わることの影響が考えられている。認定子ども園は、幼稚園と保育所が併存する形で運営されている。これまで幼稚園部分は文部科学省、保育所部分は厚生労働省と、管轄が別々で、自治体を含め、補助金もバラバラだった。新制度ではこれを一本化し二重行政を解消する。
この際、定員規模が大きいほど、園児1人当りの補助額が減る仕組みに統一される。例えば、4、5歳児で1日4時間程度の利用者の補助額は15人定員で約8万5000円だが、301人以上では約2万1000円になる。このため、大規模施設は減収になるという。
全国認定こども園協会の若盛代表理事は「こども園構想は、十分な財源の確保も、幼保の一本化の見通しも立たないまま進んで来てしまった」と訴える。
認定こども園の拡充を含む、来年度からの子育て支援策の実施には、1兆円超の財源が必要とされるが、消費税増税分からの7000億円しか確保のめどが立っていない。このため、各施策の縮小、先送りを余儀なくされており、こども園に関しても、当初想定していた財源支援の充実が、描きにくくなっている。
栃木県内のある認定こども園は、7000万円超の減収が見込まれ「このままでは破綻する」と、こども園を返上する意思を固めた。今月末にも保護者に説明せざるを得ず、現場では既に影響が出始めている。
こうした事態に対し、政府は「詳しい原因は調査中」としつつも、「正しく試算できていないところが多いのではないか」とみており、事業者側の言い分と、かみ合っていない。内閣府の担当者は「一部の単価が低くなるからといって、人件費の追加分などトータルの収入でみれば、マイナスになることは考えにくい」と説明する。
しかし、そもそも公定価格の案を公表するのが遅れたうえ、その試算方法にしても複雑で分かりにくい。認定こども園協会には「行政側から試算方法の詳しい説明がない」という不安や不満の声が多数寄せられている。「県の担当者と一緒に計算しても減収は明らか」という園もあり、政府の説明に疑問も拭えない。
政府は今月11日になって、ようやく「試算方法のチェックポイント」を作成、自治体や関係団体に提供し始めた。また、全国の認定こども園関係者を集めた説明会を、28日に開く。政府による説明会は初めてで、開催自体も先月末、急遽決まるというドタバタぶりだ。
森少子化担当相は「もし(実際に)減収があるということであれば、是正しなければならない。予算編成の中で(対応を)検討していきたい」(先月末の記者会見)と説明する。
《国が予算確保を約束することは、いとたやすいことだろう。これまでのように紙に赤字国債を印刷してバラまくだけでいいことだ。ツケは後世の人に任せるだけですむ。》
認定こども園の事業者を引きとめようと、横浜市のように、国に先駆けて独自助成の導入を決める自治体も出てきた。また全国で最も多い118のこども園を抱える兵庫県は今月、国に対し、補助額が減ることのないよう要望した。
認定こども園の多くが、10月には園児募集を始める。来年度に向けた準備期間は事実上、残り1カ月余りだ。タイムリミットが迫る中、政府は、園の継続を決められるだけの材料を提供できるのか。混乱に手を打てなければ、最終的なしわ寄せは、利用者である親子に向かう。
| 固定リンク
最近のコメント