プロ野球、16球団構想
毎日新聞(6/9)から、
《バカが何を考えているのか、とも思わせるマンガチックな話が降って湧いている。地域活性+経済効果で安倍晋三も乗り気だという。止めようもなく人口が減り続ける現状に、何ら手を打つこともなく、現状でさえ経営難が続く(黒字経営は現在3球団と言われる)プロ野球を一層経営を難しくし、貧困に喘ぐプロ集団に変えようとする。バカの考え休むに似たり。計画の大前提、マーケットリサーチもろくにしないで、妄想の上に景気よくアドバルーンだけは揚げたいようだ。》
《プロ野球の球団数を今の12から16に増やして経済の活性化を図ろう。自民党が先月発表したアベノ何とやらの第三の矢だという。安倍晋三も乗り気のようだが、本当に実現できるのか?》
「この数年、政・官・民を問わず働きかけてきた、夢が現実になるかも、と興奮しています」。自民党の提言を受け、静岡市のある職員は喜びに浸っている。市は活性化の目玉として自民球団の設立とプロ野球入りを掲げ、2012〜14年度予算に計約1800万円計上。合同トライアウト(入団テスト)を誘致したり、野球教室を開いたりしてきた。静岡県も昨年、約34億円をかけて市内の草薙球場をリニューアル。両翼外野ファウルゾーンんまでせり出した「ウイングシート」を設けるなど最新のプロ野球仕様にして後方支援する。
《2040年(すぐに来るゾ!)には日本全国の自治体1800市区町村の半分の存続が難しくなるとの予測もある。私の表現では、日本の人口減は現在既に『生産年齢8000万人割れ(日本人人口25・3万人減)』。直近の3年間の人口減は、島根県か高知県から人はいなくなり、無人の県になっている状態と同じだ。》
そうした努力も「2リーグ制12球団が“岩盤”のようの固定化」(同職員)した球界の実情を前にして、なかなか実らなかった。そんな中で浮上した16球団構想だけに、地元で「大きな前進」と受けとめられたのは当然だろう。
構想は、自民党の日本経済再生本部(本部長・高市早苗政調会長)が5月23日に発表した「日本再生ビジョン」の地域活性化策の一つ。米大リーグが30チームあることなどを根拠に、既存の球団の本拠地がない静岡県、北信越、四国、沖縄県の4地域に新球団を創設し、2リーグ4地区制の再編するよう提言。政府に支援策の検討も求めている。
とりまとめをした若林健太参院議員は「野球の競技人口は、各地にJリーグのチームがあるサッカーに匹敵し基本的な土壌はある。米大リーグもうまくいっていると聞く。プロ球団が来れば郷土愛が醸成され、観客動員などに伴う経済効果も期待できる」と皮算用するのだ。安倍晋三は「地域活性化に役立つのではないか。私は賛成だ」と構想に乗り気。政府は今月中にも改定する成長戦略に盛り込むかを検討している。
とはいえ、プロ野球もビジネスである。これから新球団を作ったとして、うまくいくのか。
「球団経営に新たに参入した場合、選手の年俸や球団関連費用など新年度だけで約200億円はかかるでしょう。一方、既存の球団を見てもチケットやグッズの販売収入は限定的で、多くの球団は赤字経営。実際、04年に経営難のためオリックスと合併した近鉄は年約40億円の赤字を抱えていました」。そう解説するのは、スポーツによる経済効果試算で知られる関西大会計専門職大学院の宮本勝浩教授だ。近鉄の親会社は近畿日本鉄道。交通インフラを支える大企業でも耐えきれないほどの負担なのだ。
それでも名乗りを上げる企業が出てくればいいが「株主代表訴訟だって起こされかねない中、負担の覚悟ができるのか。隆盛のIT企業などが手を挙げるかも知れないが、継続性はどうか。構想は、球団経営の実情を甘く考えすぎています」と宮本教授。成長戦略の一つであれば日本全体の活性化につなげなければならないが、この点にも「経済効果が及ぶ範囲は限られ、とても成長につながるとは思えません」と否定的だ。
「絶対ダメ。喝どころか『大喝』だよ!」。プロ野球評論家の張本勲は構想にダメだしをする。「私はむしろ球団を減らすべきだと主張してきたんです。今、増やそうとして、球団を持とうとする企業がいるの? いないでしょう。無理ですよ」
新球団の選手の「質」についても疑問を投げかける。
「球団を増やすなら選手も増やさないといけませんが、プロのレベルの選手なんて、そんなに多くはいないんですよ」。現在、1球団に約70人の支配下登録選手がいる。4チーム増えれば単純計算で280人が新たに必要になる。四国や北信越地域には既に独立リーグがあるし、静岡、沖縄両県には春夏の甲子園で優勝した高校もある。土壌はありそうだが、張本は「お客さんにとってプロとは、自分にできないことをやってくれる存在。練習したら届きそうに思える選手に高いお金を払う人はいないんです」。安易に入団させて、新球団だけでなくプロ球界全体のレベルまで下がることを懸念する。「もし安倍さんが16球団にすると本気で言うなら、直接(ダメだと)言いに行こうと思っているよ」
実はこの構想、スポーツジャーナリストの二宮清順が4月に自民党本部で講演した内容を基にしている。若林議員は「ほぼそのまま」と言うのだが、二宮に聞いてみると「話をしたのは事実ですが、その内容と、構想として出てきた中身には齟齬(ソゴ)がある」と戸惑いを隠さない。
例えば、自民党が公表した構想には当初、「4リーグ制」と書かれていた。二宮は「私は『2リーグ4地区制』と言ったが、『4リーグ制』とは言っていない」。自民党の理解に疑問を抱いた二宮が直接指摘すると、党側は該当部分を修正した。「そもそも16球団構想はプロ野球活性化、地域振興の議論のたたき台。実現に向けクリアしなければならない点はたくさんある。もっと具体策を書き込まないと理解は得られない」。賛意を示した安倍とは対照的に、自民党の「本気度」に懸念をにじませるのだ。
「球団を増やすことこと自体はリーグ発展のために必要」と話すスポーツ評論家の玉木正之も「自民党の構想は議員がパフォーマンスをしているだけとしか思えませんね」と切り捨てる。
なぜか。やはり「本気度」が感じられないというのだ。「例えば、今のプロ野球界はマスメディアが牛耳る不健全な状態になっているが、構想を唱える議員は、その方面に根回しをしたのか。あるいはマスメディアが球団を所有してはいけないという法律を作るだけの覚悟があるのか。でも、そんな話は聞こえてこない。『ただ言っているだけ』なのは明らかですよ」
静岡県内の自民党系地方議員の一人は「構想は人気取りと言われても仕方ない」と冷ややかだ。「そもそも球団を増やすかどうか、政治が口を出すものではないでしょう。地方の活性化策にこんな構想を持ち出さなければならないほど、案が不足しているかねえ・・」
ペナントレースの盛り上がりとは裏腹に、構想実現への道のりは険しそうだ。
《この程度のレベルの議員たちで日本の政治が動かされているとは。喫緊の問題「人口激減」によるより早く日本滅亡が来るかもしれない。》
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