「出る杭」効果抜群、生活道への車進入阻止
毎日新聞(4/20)から、
《渋滞を避けるのに便利な抜け道地図が書店に並ぶようになって随分と久しいが、そのために通学路や商店街、密集する住宅街の細い道路など、危険な道をお構いなしに通り抜けるマナー無視の車が目立つようになり、登下校時の学童の死傷事故などが問題となっている。》
通学路や生活道路に車が侵入し死亡事故を起こす事例が問題になる中、新潟市が車道上に昇降式の車止め(ライジングボラード)を設置して車を入らせないようにする全国初の社会実験に取り組み、成果を上げている。欧州では広く普及している手法だが、国内の公道では例がないという。2012年4月23日、京都府亀岡市で集団登校中の児童ら10人が死傷した事故から2年。新潟市側は「通学路にも拡大したい」と評価している。
【ライジングボラード】
英語のボラードは元々、岸壁で船を係留する杭(くい)で、車止めの意味でも使われる。車道の真ん中の地中に設置され、昇降することによって生活道路を抜け道に使う車輛の進入を阻む。許可を得た車が通る時は、センサーで感知したり運転手がリモコンを操作したりして、路面下に沈めることで通行できる。日本では車が衝突する危険や消防車など緊急車輛への対応がハードルとなり、設置例はない。
社会実験は新潟市中央区の商店街「古町モール6」で昨年10月〜今年2月に実施した。従来、人通りが増える正午から翌日午前8時までは車の通行を禁じてきたが、規則を無視して通り抜ける違反者が後を絶たず住民らから改善を求める声が出ていた。
ライジングボラードは高さ71センチ、直径8センチの円柱。道の中央部に埋め込み、手動または自動で上下する。欧州では金属製が一般的だが、新潟市では柔らかいウレタンゴム製を採用した。
モールの入り口に1本を設置し、進入禁止時間帯にはライジングボラードが上がって車の進入を物理的に阻む。救急車など緊急車輛には、道路脇のセンサーを手動で操作して下げられるようにした。
実験開始前には、違反車は1週間に119台あったが、開始後は強引に進入するなどした39台に激減。さらに2カ月後には同2台にまで減った。市が実施したアンケート調査では、歩行者や通行車輛の6割近くが設置継続を希望し、他地域での実施を求める人も半数を超えた。
通学路や生活道路では重大事故が多発している。今年の「春の全国交通安全運動」(4月6〜15日)では子どもと高齢者の事故防止を重点テーマに掲げたが、期間中に茨城県神栖市と静岡県沼津市で小学生計2人が登下校中に車にはねられて死亡。警察による検挙では、通行禁止違反が最多だった。
社会実験の結果を受け、新潟市の篠田市長(65)は「違反車が激減した。ライジングボラードの常設を目指し,通学路にも広げたい」と歓迎。社会実験を担当した久保田・埼玉大学大学院教授(都市交通計画)は「通学路では子どもの安全を守るべきなのに、車の進入を止められない。抜け道代わりに使われれば、スピードが出ていて子どもが命の危険にさらされる。車の進入を物理的に抑制できるボラードの設置を通学路で進めることは、犠牲を減らすのに有効だ」と分析する。
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