アスピリンの癌予防効果
毎日新聞(4/17)から、
「アスピリン」と聞けば、健康で薬と無縁の人も「あの痛み止めの・・・」と思い当たるだろう。1899年の発売以来、世界中で使われる解熱鎮痛薬の代名詞的存在だ。近年は解熱鎮痛薬の用量より少ない用量(100ミリグラム)を服用すると、血が固まるのを防ぐ抗血小板作用を発揮することが分かり、脳梗塞患者などの再発予防薬にも使われる。
《アスピリンは我が家の、というより私にとっては子どもの頃からの、それ以外の薬は全く必要としないと言ってもいい万能薬としてこの年になるまで欠かしたことのない重宝にしている薬だ。しかし、どういう訳か38度や39度の熱では寝込んだ記憶もなく、普通に生活できる体質のため、真っ先に上げられる解熱の為に服用したことがない。幼児の頃、父の会社の医局で調合してもらって飲んだ風邪薬、30歳の頃ただ1度だけ風邪気味で医院に出かけたこと以外、医者に看てもらった記憶がない。アスピリンの用法としては頭痛はもとより、腹痛、歯の痛み、下痢、など何でもよかった。飲めばおかしなもので、ポリシーボ効果ですっきりとなる。そのうえ根っからの医者嫌い、薬嫌いのため、インフルエンザの流行にも無頓着、予防注射もしたこともなく、薬も何年かに1回程度しか必要とせず、いざアスピリンとなった時、大抵は期限が過ぎており、次の日に買い求めることになることの繰り返しだ。》
そのアスピリン(アセチルサリチル酸)について、国立癌研究センターなどのグループが「大腸癌の前段階である大腸ポリープの再発を抑える」との研究結果を英消化器病専門誌(Gut)(電子版)に発表した。一度できた大腸ポリープを切除した日本人患者約300人を1日1錠(100ミリグラム)のアスピリンを、2年間飲む群と偽薬を飲む群に分け追跡したところ、アスピリン群では再発リスクが40%下がり、心配された消化管出血などの有害事象もなかったという。
アスピリンの癌予防効果は、欧米で研究が進む。世界の医学研究を紹介する医学総合雑誌「MMJ」(毎日新聞社刊行)でも、大腸癌の死亡率の抑制効果や胃癌などの予防効果を報告した英国の論文を紹介した。日本人で同様の効果が分かったのは今回が初めてだ。日本の大腸がん患者は増え続けており、胃癌に次ぐ第2位。研究代表者の武藤・同センターユニット長は「薬(化学物質)で癌を予防する『科学予防』を確立したい」と意欲を示す。
健康な人が服用する以上、癌予防薬は安全で安くなければならない。100年以上の実績があり、1錠約6円のアスピリンは理想的だが、一般の人が使えるように国の承認を得るためには、より大規模な試験による有効性と安全性の検証が必要だ。巨額の投資で新薬開発に取り組む企業が、「6円の薬」に関心を示すだろうか。武藤らは「国主導で」と期待するが、従来存在しなかった「癌予防薬」よいう概念のため、前途は多難といえる。
今回の成果は、薬による癌予防に注目を集める出発点となるかもしれない。とはいえ、アスピリンには消化管出血など有害事象の恐れもあるので、自己判断で予防的に服用することは禁物だ。
【高野聡=MMJ編集長】
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