都内の部屋探し、「事故物件」に人気が
毎日新聞(4/7)から、
《たまたま、約20年間の京都本社務めの長男が、今現在の時刻、東京支社への転勤に伴い、事業所に近い板橋区に向かって引っ越しのため車中で移動中だ。これまで東京での仕事のため4〜5年間に亘り、新幹線でひっきりなしの往復、ホテル宿泊で目まぐるしく移動していたのを、会社も事業所の拡大や、経費節約で転勤という処置できりをつけたようだ。京都から事前のインターネットでの不動産屋選び、物件探しの依頼など、2度上京して現地探索を経て見出した物件だったようだ。》
賃貸物件の家屋内で自殺や孤独死、殺人事件などが発生したため、「縁起が悪い」などとして敬遠されがちな「事故物件」を敢えて指定して借りるケースが目立ってきている。経済的に余裕がない人たちが、安い家賃を求めて入居しているようだ。
元派遣社員の男性(40)は、東京都新宿区の築20年超のワンルームマンションに2012年6月から住む。広さ16平方メートル、風呂・トイレ・エアコン付き。日当りもよく、最寄り駅から徒歩約5分の好立地だ。しかし家賃は相場のほぼ半額の4万円だ。理由は前の住人が室内で病死して見つかったから。承知の上で入居した。
男性は部屋探しの際、知人の不動産仲介業者に「事故物件を探している」と依頼した。経済的な苦しさが理由だ。高校卒業後、飲食店やコールセンターなどでアルバイトや派遣社員で働いたが、バブル期には約400万円あった年収は、近年、200万円弱に。仲介業者から「事故物件は人気がある。早く抑えないと持って行かれる」とせかされ、すぐ契約を決めた。男性は「前の入居者のことは気にならない。住み心地にとても満足している」と話す。
事故物件の場合、遺体による部屋の痛みが想定されるが、事故物件を専門に扱うアウトレット不動産(横浜市港南区)の昆社長は「清掃の技術が上がり、期間を置けば臭いや汚れが残らなくなった」と解説する。不動産会社「スタートライン」(東京都中央区)の赤坂常務も「『事故物件でいい』という部屋探しをする若者が増えている」と話す。
「事故物件は家賃の半額」という業界の慣例があるが、定着させたのは全国に75万戸の賃貸住宅を持つ都市再生機構(UR)だ。「特別募集住宅」と銘打って入居後1〜2年間は家賃を半額とし、先着順で入居者を募る。他のUR物件と同じく礼金や更新手数料がいらないことも、住居確保に窮する人にとって魅力だ。近年は世帯主の平均年齢が上昇したため、住居内で亡くなるケースが多発。「特別募集住宅の新規入居者も増える傾向」(住宅経営部)という。
不動産法務に詳しい森田弁護士によると、事故物件の最初の借り手や買い手には「事故後5〜7年は告知義務が生じる」。URはこの基準に沿って、事故物件で亡くなった住人の死亡日時、遺体発見場所、年齢、性別、事件性の有無・・・といった情報も説明する。それでも「募集から1カ月以内で半分程度は埋まる」(UR)という需要がある。
経済的に苦しい人が入居しようとするのは、本来、低所得層の「受け皿」となる公営住宅が機能していないためだ。公営住宅の戸数は217万戸(11年度)で、03年度ごろからほぼ横這い。国土交通省は「高度成長期に建てた住宅の建て替えが多い。新規建設まで手が回っていない」という。
「スタートライン」の赤坂常務は20年東京五輪の影響も懸念。「古い木造アパートが続々と解体されたら、職探しに便利な都心部に貧困層が住めなくなる」と話している。
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