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2014年3月 9日 (日)

子宮に異形成細胞、原因は

 毎日新聞(3/9)”Dr北村のクリニックようこそ”から、

 Q 子宮頸癌の検診を受けたら、「前癌状態の『異形成細胞』が気になるので子宮の入り口を切除しましょう」と言われました。原因は性行為でうつるウイルスなのですよね。まさか夫が浮気をしたのでしょうか。(64歳)

 A 一般的なウイルスで、浮気とは無関係

 子宮頸癌の早期の発見・治療のために細胞を採取した検査の結果はとても重要です。私たち産婦人科医は、細胞診の検診結果を踏まえて、子宮頸癌の原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)のタイプが高リスクかどうかを確認し、さらに精密検査を行ない治療に進めるかを判断します。子宮の入り口を切除するというのは、異形成がある部分を円錐状に切り取る円錐切除のことだと思われます。

 僕自身は、検査を受けた以上、異常が発見されたら潔く決断し、行動するのが大事だと考えています。いたずらに時間が経ち、心が決まった時には手術も困難なほどに癌が進んでいたのでは泣くに泣けないですからね。

 気になるのは「性行為でうつるウイルスが原因なら、夫が浮気して自分にうつしたのでは」と危惧していることです。「私は夫以外との性行為はない」という自信に満ちた言葉と受け止めています。子宮頸癌はHPVの感染が原因で起こることが知られています。大雑把なデータになりますが、1万人の女性が性行為をすると、数週間から2年ほどで6割以上がHPVに感染します。でも、うち9割近くから間もなくHPVが検出できなくなります。検出できないのは、免疫力で自然に治癒したのか、組織内にウイルスが潜伏したのか意見の分かれるところです。その後、数年から十数年でHPVに感染した1〜6%程度が前癌期を迎えます。それでも、約5%は自然に治ります。

 子宮頸癌になって手術や放射線療法、化学療法などを施さなければならなくなるのは感染者の0・1%、60人ほどと言われています。HPVは子宮頸癌の原因ですが、感染したからといって必ず子宮頸癌を発症するわけではないことをご理解ください。また、子宮頸癌になっても、他人に感染するわけではありません。そこがクラミジアや淋菌、HPVなどと異なり、子宮頸癌を性感染症と呼ばない理由となっています。

 HPVはごくありふれたウイルスですから、性行為以外でも感染の危険性があります。例えば、ドアのノブに付着したHPVが、手指から性器へ感染したという報告もあるので、夫の浮気を疑うのはアホらしいと思われます。

 大切なのは、HPVの出所を突き止めることではなく、体にできた異形成細胞が癌へ移行する前に進行を断ち切れるかどうかです。もちろん、円錐切除をしたとしても、その後の定期検診を怠るわけにはあいかないことを申し添えます。(日本家族計画協会クリニック所長、北村邦夫)

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