ドライバー「認知症予備軍」急増
毎日新聞(12/19)から、
《私自身は網膜剥離後の視野狭窄と、白内障の進行とで、他人を傷つけることになるのを恐れ、2年前に80歳の肉体は頑健のまま車を離れた。高齢化の進行と同時にドライバーに限らず認知症人口も増加するのが普通のことだろう。ドライバーに限れば事故の発生率もそれに伴って自然に増加して行く。ドライバー自身だけの事故で終わればそれで済むことだが、周りを巻き込むことが一番恐ろしい。車を離れて生活の足を奪われる恐れはあるが、事故が起こってからでは遅い。そこは国や自治体の知恵が問われるところだ。》
満75歳以上の高齢ドライバーが運転免許更新の際に義務づけられている「認知機能検査」が今年度から変わり、「認知機能低下」と判定される人が急増しつつある。認知症ドライバーによる事故を防ぐため、警察は医療との連携を摸索する。一方、認知症と診断されて生活の「足」である車の免許証を失う高齢者の生活をどう支援するかも大きな課題だ。
「皆さんとの連携がないと、認知症の高齢者の早期発見はできません。ご協力をお願いします」。3日に大分市で開かれた大分県警主催の会議で、運転免許課の山本警部が約30人の医師を前に力説した。
続いてマイクを持ったのは、認知症診断の経験豊富な精神科の釘宮医師。スライドに「昨日の夕食のメニューが分からない」「右と左の識別ができない」など、特徴的な認知症の68症状をスライドに映し出し、解説を加えて行った。
認知機能検査で「認知機能低下」と判定された人は、その後一時不停止など特定の交通違反をすると、医師による「臨時適性検査」を受け、そこで認知症が確定すると免許取り消しとなる。検査の前に自主返納する人も多い。検査には医師の協力が欠かせないため、県警が県医師会に呼びかけ。両者が連携を図る会議を設置した。
6回目となるこの日の会議には、青森、長崎両県警の担当者が刺殺に来ていた。青森県警の担当者は「対応が後手に回らないようにしたい」と真剣な表情で聞いていた。
認知症になると、記憶障害が起きたり、空間を把握する能力が衰えたりする。周囲の状況の合わせて適切な判断が求められる車の運転には危険を伴う。
2009年6月から始まった認知機能検査は、満75歳以上を対象に、運転免許の更新時に記憶力や判断力の低下を調べる。「今年は何年ですか」と時間の感覚を試したり、数種類の絵を約5分間示して記憶させ、7分かけて絵の内容を答えてもらったりする。
従来の検査では検査の配点の偏りから、記憶力の低下が十分に評価できないとの声もあり、警察庁は今年9月、絵の記憶検査の配点を重くするなど、採点方法を大きく変えた。警察庁は、記憶力の衰えがこれまで以上に検査結果に反映されるようになり、機能低下判定が従来の2倍強に増えると予想している。
変更から3カ月、まだ統計は出ていないが、大分県では9〜11月、認知機能低下の判定は前年同期比で5倍以上に急増。「警察庁の予想を上回る数になっている」(青森県警)、「実感として確実に増えている」(広島県警)との声は全国的に上がっている。
認知症が疑われる高齢者が増えれば、日頃から患者と接しているかかりつけ医の役割が、今以上に重要になる。
だが、医師にとって、認知症の診断はただでさえ難しい。さらに、運転免許取り消しにつながる重い判断を強いられることに、心理的な負担を感じる医師も少なくない。
大分市のある医師は「地方では、車は『生活の足』。運転できなくなると、買い物にも行けない。認知症と診断するのは忍びない」と苦痛をにじませる。
《同情で認知症に目をつむり、そのことが事故の原因となった時、医師は責任が取れるのならそれもいい。しかし、認知症のまま運転することはそのまま、車は「走る凶器」となる場合があるのだ。》
運転免許を失った高齢者の支援に取り組む認知症専門医の浦上・鳥取大学教授は「免許を失うと自分で通院や買い物ができなくなり、他人との交流が減るなどしてかえって症状が悪化してしまう」懸念。「日用品の宅配サービスなどの生活支援を広げて行くとともに、高齢者が少しでも長く運転を続けられるよう、認知症になる前の段階で予防することも大切だ」と訴えている。
✦釘宮医師作成「認知症診断の手引」(1グループそれぞれ4〜9項目ある)
▽記憶の障害
•今日は何月何日か分からない
•昨日の夕食のメニューが分からない
•年齢・生年月日がわからない
•記憶の欠損を薄めるために作り話をする
•会話中に話や質問を何度も聞き返す
▽言語の要害(省略)
▽失認(同)
▽見当識障害(同)
▽失行(同)
▽実行機能の障害(同)
▽人格・感情の障害(同)
▽思考・意識の障害(同)
▽問題行動
•大声や奇声を発し続ける
•叩く,蹴る、つねるなどの暴力行為がある
•万引き、窃盗、収集などの行為がある
•ペニスを出す、裸になるなど性的逸脱行為がある
•どこにでも大・小便をする
•食べものを抑制なく食べる(過食)
•食事は口を開けずに食べることを拒む(拒食)
•人のものまで取って食べてしまう(盗食)
•食べられない物を食べる(異食)
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