「風立ちぬ」の喫煙シーン
毎日新聞(9/18)から、
米映画の名作「カサブランカ」でハンフリー・ボガートがゆったりとくゆらせる紫煙――。映画や舞台で表現方法の一つとして使われてきた喫煙シーンが、時代の中で揺れている。公開中のアニメ映画「風立ちぬ」(宮崎駿監督)には禁煙団体が「未成年者の喫煙を助長する」などとクレームをつけ、話題になった。健康志向もあいまって作り手側は苦慮している、という。
「且つて、たばこが男らしさの象徴だった時代があった」と言うのは「軽蔑」「さよなら渓谷」など若者が主人公の映画を数多く制作している森重晃プロデューサー。「アクションやヤクザものの映画では“良い悪い”ではなく、たばこと酒と女が絡まないなんておかしい。まあ、下手な役者ほど吸いたがるって話も合ったけど(笑い)」と映画と喫煙が結びついてきた実情を語る。
《言うに事欠いて「下手な役者ほど云々・・」とはバカなプロデューサーだ。男優に限らず世界中の名女優と呼ばれる俳優たちが、時には部屋じゅうに立ち籠める煙で眼が痛いほどの雰囲気の中、その時々の時代の世情を銀幕に写し出し、多くのファンの血を沸かせ、涙を誘ってきたものだ。今回の「風立ちぬ」は大正の初めから、背景には昭和の戦争にまみれた時代の話だ。その中で描かれた喫煙シーンが未成年者に影響するからいけない、とは歴史認識のかけらも理解できていない連中の言葉だ。当時、ひたひたと迫り来る戦争の足音の不気味な時代を背景にした価値観と、平和になって禁煙が叫ばれる現在の価値観とが違っていて当然で、その違いを教えるのが大人に与えられた後輩たちへの義務とも言えるのだ。私は1日平均60本のたばこをやめて(禁煙を公言したのではなく、ほぼ20年間の休止だ。)その後、一口たりとて嗜んではいないが、今でも隣で両切りのピースを吸われると流れてくる香りを思い切り吸い込むほどに好きだ。そして、それが癌の元凶だとも思っていない。》
喫煙シーンが社会的に問題視されるようになったのは、主に米国からだ。禁煙団体の抗議を受けた米国映画協会は2007年から喫煙シーンをR指定(年齢制限)の判断材料の一つに加えた。米疾病対策センターのホームページによると米国のヒット映画中の喫煙シーンは05年には4000件近かったのが、昨年は2500件前後に減少した。
日本も同様の傾向だ。映画「ヴァイブレーター」「100回泣くこと」の広木隆一監督は「5,6年前から際立って喫煙ンシーンが減ってきた」と言う。昔は新聞記者を描くとき、灰皿一杯の吸い殻と煙の中で仕事をするシーンがまず浮かんだが、今はもうあり得ない。たばこに代わって世相を表現する必需品となったのは携帯電話」と指摘する。
スクリーン越しでなく観客が直接、煙に触れる舞台の世界はさらに深刻だ。「芝居で喫煙シーンがあると、必ず終演後のアンケートでクレームが寄せられる」と青年座(東京都渋谷区)の紫雲幸一制作部長。約120席というコンパクトな自前の劇場では、たばこの煙は瞬く間に客席へ及ぶ。青年座では5,6年前から、たばこの形状で、火を点けるとたばこのように煙が出る咳止め用の医薬品を使い始めた。
文学座(同新宿区)が18日まで上演していた「熱帯のアンナ」は1920年代の米フロリダの葉巻工場が舞台だが、煙ではなく蒸気を吸う電子たばこの外側を加工し、葉巻らしく見せている。
最近では、上演前に「たばこを吸うシーンがありますが、本物のたばこは使用していません」とアナウンスする光景も珍しくなくなった。演劇関係者からは「原作に喫煙シーンがあるのに,削るようなことをすれば表現を狭めることになる」と、懸念の声が上がる。
ドラマを始めとするテレビ番組でも、喫煙シーンは以前に比べ減少している。NHK広報局は「番組制作にあたっては喫煙を助長することのないよう配慮している」と説明する。
たばこは世につれ、世はたばこにつ。愛煙家にとっては、エアンターテインメントの世界も肩身の狭い時代になったことは間違いないようだ。
《青年座にしろ、文学座にしろ、たばこの代わりに何を小道具として使用しているかということで、最初に取りあげた「時代の違い」と言うこととは次元の違う問題だ。たばこの代わりの小道具で済ませられることで芝居が成立するのなら、何も問題はなかろう。上演する芝居がいつの時代のものなのか、が歴史認識として問われているのではないのか。キセルしかなかった時代に紙巻きタバコが出てきてはおかしいが、正しく使い分ければ時代は推定することは可能だ。映画や演劇を見る観客の側に、たばこが使用されても時代認識が理解できていれば、問題はないし、理解できない青少年には、大人が教えればいいことだ。目くじら立てて、或いは真面目くさって拳振り上げて語ることではない。》
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毎週深夜に放映されている志村けんさん主演のコメディ番組の中で優香さんや他の共演者のタレント達とコントしている最中に、毎度のことながら志村けんさんがタバコを吸う場面では、共演者の優香さんから、タバコの吸い過ぎだよ!…と注意の文句を言われ、咥えタバコをハサミで切られたり、水を掛けられたりするシーンがあります。しかし、アニメ映画とコメディ番組を比較すること自体は次元的には別問題で異質な話題になりますが、今回の宮崎駿さん原作のアニメ映画のタバコを吸う一部分のシーンが幾度と無く多い様なイメージが強調され、それをマスコミなどに取り上げられ、アニメ映像全体の評価よりも、タバコの喫煙シーンだけをクローズアップし、その原作者である宮崎駿さんに対して、ワイドショーに出演しているコメンテーターがアニメ映像の一部分であるタバコの喫煙シーンだけを批判的な評論して仕舞う世論の在り方は余りにも世間体が狭過ぎる感じがして仕方がありません。今回のアニメ映画の最後にでも、タバコの吸い過ぎに注意しましょう!の字幕を愛煙家や喫煙者の健康を考慮して付け加えて頂ければ良かった様な気が致します。宮崎駿さんのアニメ映画は子供だけを決して対象しているのでは無く、大人達自身が童心の想像が出来る様にアニメ映像が作り上げられているでしょう。アレコレと評価や評論される為に宮崎駿さんはアニメ映画を試行錯誤しながら原作し描いているのでは無く、過去・現在・未来を強調しながら漫画と云うアニメ映像を創作している様な気が致します。今後の宮崎駿さんの再生と復活の期待に希望します!。
投稿: 間吊田和志輿為 | 2013年9月28日 (土) 01時37分