ヘイトスピーチ
毎日新聞(6/4)社説から、
東京・新大久保や大阪・鶴橋など韓国・朝鮮人が多く住む地域で、ヘイトスピーチ(憎悪表現)と呼ばれるデモが頻繁に行なわれている。
「朝鮮人を殺せ」「ガス室に叩き込め」「出て行け」といった罵倒や挑発の言葉を繰り返し、差別感情を煽り立てている。行なっているのは、在日外国人の「特権」を根拠を示さず批判しているグループで、デモや集会の様子をネットの動画で発信し、一定の賛同者を得ている。
憲法は、「表現の自由」を保障する。デモによる意見表明もその一つだ。だが、他者の人格やプライバシーなど、侵してはならない範囲は当然にある。特定の民族を汚い言葉でののしる行為は、個人の尊厳をないがしろにするものだ。限度を越えており、到底許されない。
激しい言葉を投げつけられた在日コリアンの人たちの恐怖や失望は察するに余ある。また、ヘイトスピーチは、国際化社会を担う子どもたちにも悪影響を及ぼす。共生すべき外国人に対する偏見や、排外主義的な感情を助長させかねないからだ。
韓国や中国などでは、デモなどの映像がネットで紹介され、反日感情を刺激している。竹島問題などで悪化した市民レベルの対立感情が、一部の人たちの言動によってさらに増幅されることは避けねばならない。
《竹島問題や、植民地下での慰安婦問題で反日感情の濃い韓国と、北朝鮮のミサイルやテポドン問題、日本人拉致問題をひっくるめて「朝鮮人」とひとくくりにしてのヘイトスピーチのようだ。相手が反日デモをやるのなら、こっちもやってやるの憎悪のぶつけ合いは、止むことがないだろう。》
先月の参院法務委員会でヘイトスピーチが取りあげられ、法規制の是非も焦点になった。ヨーロッパなどは特に差別的な表現に厳しく、刑事罰を伴う規定を持つ国もある、
日本も加入する人種差別撤廃条約は、立法を含む適当な方法で、人種差別を終了させるよう締結国に求める。処罰義務の規定もあるが、日本はその部分は留保している。表現の自由に配慮しているためだ。
表現の自由は、国民の基本的人権の中でも特に大切な権利とされる。新たな法規制による行き過ぎた言論統制を心配するのはもっともだ。
だが、現実の前で手をこまねいてもいられない。政府が黙認していると国際社会に受け止められれば、日本の立場を危うくする。外国の法制に学ぶべき点がないか研究するのは当然だ。一方で、現行法の範囲で止めさせる手だてをもっと尽くしてほしい。
《現行法の範囲での規制はとても無理だろう。誰が見ても厳しく取り締まるのが当然と見える暴走族でさえ、署が大挙して出動しても捕らえられるのはネズミ1匹が精一杯だ。まして、シュプレヒコールだけでは「表現の自由」を振りかざされて手も足も出せまい。》
違法行為については、警察が毅然と対応してもらいたい。裁判所がかつて,特定の地域の街宣活動を禁じる仮処分決定を出したこともある。そんな例も参考にしたい。
日本全体としてヘイトスピーチを容認しないという姿勢を示すことも重要だ。安倍首相は国会で懸念を表明したが、もっと強いメッセージを発してほしい。また、常識的な人権感覚を育てる啓発や教育に政府は力を入れるべきだ。
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