« 「お母さんに優しい国」日本31位 | トップページ | 道交法改正案「自転車は左」厳守 »

2013年5月12日 (日)

ハーグ条約

 毎日新聞(5/12)から、

 Th_ 国際結婚が破綻した夫婦間の子の扱いを定めた「ハーグ条約」の加盟承認案と国内手続き法案がそれぞれ衆院を通過し、今国会で成立する見通しとなった。早ければ年度内にも条約加盟が実現することになり、当事者の間には期待と懸念が交錯している。専門家からは、子の返還手続きにあたって人権に十分配慮するよう求める声が上がるなど課題も浮かぶ。

 ”なるほドリ”から
 ハーグ条約って、どうしてできたのだろうか。国際結婚がうまくいかなかった夫婦の子をどう扱ったらよいか、「ハーグ国際私法会議(HCCH)という国際機関がルールを考え、1980年にこの条約を作った。当時、一方の親が無断で子を国外に連れ出すことが問題になっており、各国に共通する解決方法を求める声が高まっていたからだ。

 Q どんな国が加盟しているのか

 A 今年3月末現在で89カ国が加盟している。北米や欧州は殆どが加盟国だ。いわゆる主要8カ国(G8)では、ロシアが2011年に加盟し、非加盟国は日本だけになっていた。

 Q 実際に日本人がトラブルの当事者になることもあるのか?

 A 外務省が11年に公表したアンケート結果によると、日本人が外国から子を連れ帰ったケースは18件、国外に子を連れ去られたケースは19件確認されている。また、外国から日本に問題の解決を求められている連れ去り事件は12年時点で、米81件、英39件、カナダ39件、仏33件に及んでいる

 Q 条約加盟後に連れ出された子は元々住んでいた国に戻されることになるんだね

 A 原則はそうだ。08年のHCCHの統計では、取り残された親の申請により、子を連れ帰った親が自主的に元の国に戻すケースが全体の約20%を占めている。申し立ての却下や取り下げなどが約35%。裁判に発展して判断に至ったケースは約45%で、うち3分の2で子の返還命令が出され、3分の1で子の返還が拒否されている。

 ハーグ条約は、子の返還を拒否できるケースを「子の心身に害を及ぼす重大な危険がある場合」と定める。9日に衆院を通過した国内手続き法案は、DVの恐れがある場合や外国での子育てが困難な場合なども、日本の裁判所が返還を拒否できるとしている。加盟国がこうした規定を明示するのは異例で、専門家の間にも賛否両論がある。

《日本国内の争いや裁判で、DVが持ち出された場合、女性に甘く、圧倒的に男性側には不利な結果が言い渡されることが多い。戦前の男尊女卑の反動は凄まじく、現在ではどちらかと言えば男女間の問題では女性側に有利な判決が出されることの多い日本だ。》

 中央大法科大学院の棚瀬教授(法社会学)は「加盟は大変好ましいが、日本が独自に『子を返還しない』運用をしたら、条約の趣旨が骨抜きになる恐れがある。加盟国の中で孤立し、国際的信用が失墜しかねない」と懸念する。

 米国などの加盟国は日本以上にDVの保護制度が整っているとして、棚瀬教授は「被害女性も不法に子を連れ帰るのではなく、まず現地の制度を利用して上で、離婚後に両方の親がどのように子の養育をしていくか取り決めてから分かれるべきだ」と話す。

 一方、日本弁護士連合会「両性の平等に関する委員会」副委員長の長谷川弁護士は(兵庫県弁護士会)は「返還されるのは生きた子であり、その福祉が害されてはならない。家裁は、条約が定める返還例外事由や国内手続き法の規定を踏まえ、元いた国に子を返すかどうか、慎重に判断すべきだ」と指摘する。

 その上で、条約加盟にあたっては
 ①担当裁判官が児童虐待やDVも含め、子どもの人権に関わる専門的な研修を受ける
 ②児童虐待やDVを理由に子を連れ帰った親が裁判でそうした事実を証明できるよう、在外公館が支援態勢を整える ——— ことの必要性を強調した。

《日本独自の国内手続き法が認められた場合、考えられるのは、条約が定める返還例外事由だらけになり、取り扱うその殆どが『例外』扱いとして処理されるだろう。結果として、棚瀬の懸念する国際的信用の失墜となるだろう。》

 また、条約は返還手続きとは別に、加盟各国の「中央当局」(日本では外務省)に当事者間の友好的な解決を促すよう求めているが、日本では当事者間を仲介する「受け皿」の整備が進んでいない。

 このため日本仲裁人協会(東京都)は条約発効後に国際的な家事調停を実施できるよう、調停人の研修などを始める予定だ。同協会常務理事の小原弁護士(大阪弁護士会)は「返還は必ずしも子の最善の利益にはならない。十分な面会が保障されるのであれば、返還まで求めない親もいるはず、連れ去られた外国人の親が利用しやすい調停機関は不可欠だ」と話している。

【ハーグ条約の加盟国】
<アジア>
 中国、(香港、マカオのみ)、韓国、シンガポール、スリランカ、タイ
<オセアニア>
 オーストラリア、フィジー、ニュージーランド
<北米>
 カナダ、アメリカ
<中南米>
 21カ国が加盟(非加盟はキューバやジャマイカなど)
<欧州(旧ソ連連邦を含む)>
 殆どの国が加盟(ロシアを含む47カ国)
<中東>
 イスラエル、トルコ
<アフリカ>
 ブルキナファソ、ガボン、ギニア、レソト、モーリシャス、モロッコ、セーシェル、南アフリカ、ジンバブエ

 参照 ハーグ条約要綱案、「日本特有視」は誤解の危険 2012/02
    娘連れ出し 親権妨害容疑問われた日本人女性を釈放 2011/12
    日本人女性 娘連れ出し 親権妨害容疑で米国で逮捕 2011/11
    国際結婚とハーグ条約 −3− 「離婚」 2009/10

|

« 「お母さんに優しい国」日本31位 | トップページ | 道交法改正案「自転車は左」厳守 »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ハーグ条約:

« 「お母さんに優しい国」日本31位 | トップページ | 道交法改正案「自転車は左」厳守 »