生活保護法改正案、不正受給の罰則強化
毎日新聞(5/17)から、
政府は17日午前、生活保護の不正受給防止や就業支援策を盛り込んだ生活保護法改正案と受給手前の人に自立を促す生活困窮者自立支援法案を閣議決定した。8月からの生活保護費減額と合わせて不正受給の罰則強化などで引き締めを図る半面、自立支援も目指す内容だ。生活保護法の抜本改正は1950年の法施行以来初めてとなる。
同法改正は保護費の抑制と不正受給などに対する国民の不信感を和らげる狙いがある。自治体の調査権限を広げ、就労や扶養の状況などを過去の受給者も調べられるようにする。扶養義務のある親族が「扶養は困難」と回答した場合、説明を求めることができる。不正受給の罰金(現行30万円以下)を100万円以下に引き上げ、返還金についても不正受給額の4割増まで請求可能にする。受給申請の際、本人の資産や収入、親族の扶養状況の書面での提出を義務づけた。事情があれば口頭申請も認める。
一方で、自立に向けた支援を強化する。同法改正案では、受給者の労賃の一部を積立金とみなし、生活保護から抜けた時に支給する「就労自立給付金」を新設する。
【解説】
厚生労働省は生活保護法改正案、生活困窮者自立支援法案の今国会での同時成立にこだわる。8月から始まる生活保護の切り下げにばかり注目が集まらないよう、自立支援の要素を入れ込み「最後の安全網を傷めた」との批判をかわす思惑が透ける。田村厚労相は17日の閣議後会見で「自立に向かっていろんな支援を用意した」と強調した。それでも、障害や病気で働けない人にとってはメリットが乏しく、保護費減額だけがのしかかる。
今回の見直しは、生活困窮者自立支援法案が「アメ」、保護費のカットが「ムチ」にあたり、生活保護法改正案には双方が混在する。働こうとする人に手厚い反面、不正に厳しい内容で、「自助」を掲げる自民党政権の意向が反映されている。
ただ、先駆的に就労支援を強化している大阪市では必ずしも生活保護からの脱却にはつながっていない。また、子育て世帯は「支給額が高すぎる」とみなされて保護費は減る一方で、就労や子どもへの学習支援は手厚くなる。だが最も受給者が多い高齢者や、働くのが困難な人たちへの「アメ」はない。
不正受給に対する批判の高まりを意識し、扶養義務のある人への連絡徹底など受給手続きを厳格化したのも大きな特徴だ。しかし、申請者を体よく追い返す「水際作戦」の乱用を招き、申請を自粛しかねない。生活保護は本来必要な人に行き渡らないでは意味がない。厚労省は自治体任せにせず、法改正後の影響を注視する責任がある。
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