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2013年3月18日 (月)

第三者の卵子提供

 毎日新聞(3/17)”論点”から、

 病気で卵子がない女性に提供者を斡旋する「卵子バンク」事業が1月から始まった。不妊に悩む夫婦には朗報かも知れないが、生まれる子への支援体制や法的整備は十分だろうか。

 ○手放しで歓迎できない、とする医師で、自身が精子提供で生まれた出自を持つ加藤英明。
 ○多様な家族形態認めて、をいう、岸本佐智子(卵子のない女性に斡旋する民間団体)「OD—NET」代表。
 ○欠落する親子法規定を指摘する、埼玉医大教授(生殖内分泌学)・石原理。

 《私の一番の関心事。生まれた子の出自の取り扱いが未整備のままの現状では、治療が技術の進歩で進んでも、生まれてからの子どもが「アイデンティティの崩壊」を経験(加藤)しないで済む法整備を進めることの方が優先されるべきだと考える。》

 三者の中から、石原の考えを取り上げることにする。
 体外受精など生殖医療によって生まれた子どもは世界で500万人を超え、この治療が既に広く受容されたと考えられる。しかし、早発閉経や化学療法による小児がん治療後の女性、40歳代の女性など、自らの卵子で妊娠することが難しい症例は少なくない。

 その結果、第三者からの提供卵子を用いる生殖医療は、世界の約2・6%、米国では約12%を占める。つまり、医療行為として提供卵子の使用は確立され、最早特殊な治療ではない。一方、わが国では、03年に卵子提供に関連する厚生科学審議会報告書と法政審議会中間試案が提出された後も、環境整備は全く進まず、現在も国内における提供卵子使用は困難である。

 そこで、日本から米国やタイなどへの海外渡航による治療が選択されてきた。今回の「卵子バンク」設立は、一向に進展しない国内法や生殖医療管理機関の整備にしびれを切らした当事者が、直接行動に及んだと理解できる。

 ただし、提供卵子利用については、その医学的リスクについて厳密な評価を行い、さらに関係者全てに対して社会的リスクを含めた十分なカウンセリングを提供する必要がある。提供者には採卵にまつわるリスク、提供を受ける者には個々の年齢や身体的背景による妊娠のリスクについて詳細な情報を提供する。

 子どもが生まれた後の親子関係規定に関するわが国の法的不備や、子ども出自を知る権利などの現況と将来の可能性についても性格に伝える必要がある。さらに、将来に備え提供者情報などを80年間以上保存することが望ましい。その点で、今回の民間クリニックとNPOという枠組みには、やや不安がある。

 わが国の法体系における最大の問題は、母子関係、父子関係を規定する法が欠除していることである。母子関係が自明であった明治時代に制定された現行民法が、提供卵子使用を含む生殖医療を想定していないのは当然である。世界の殆どの国でも、最近になり親子法などを再整備した。また昨年、性別を「男性」に変更した後結婚し、第三者の精子で子を設けた性同一性障害の人が、「産んだ女性の夫=この父親」であることを主張したのに対して、法務省は出生届を受理せず、認知も認めなかった。

《私の考えは次の参照で述べた。》
 参照 性別変更、「父」と認めず 2012/11/03
    性同一性障害夫婦の子、父子関係認めず 2011/02/27

 このように、明らかに子どもの不利益になる場合でも、現状では、徹底した血縁主義の立場が取られる。従って、子どもの出自を知る権利を含む基本的権利と福祉を安定的に確保するには、「出産した女性が母、その夫が父であること」を、法的に明確にする子tが必須である。

 「自分が妊娠するために提供卵子を要する女性が一定数いること」は、歴史的に変化のない事実であろう。変化したのは、診断・治療技術や生殖医療の進歩など「医学・医療」と、血縁に依存しない家族に対する「社会的受諾」である。卵子提供などによる新しい家族の形を社会が受け入れることは、同時に、養子のいる家庭、単親家庭など多種な家庭で育つ子どもたちへの眼差しをより優しくするきっかけになるのではないか。また、不妊のカップルにとって、現状は子どもがいるかいないかの二者択一だが、選択肢の拡大は「治療しない」、あるいは「子どもいない家庭を選択する」ことを、より考えやすくするのではないか。

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