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2012年10月 8日 (月)

救急の緊急度判定

 毎日新聞(10/8)から、

【緊急度判定(トリアージ)】
 高齢化などによる救急出動の増加に対応し、病気や怪我の症状から傷病者の緊急度の高低を判断して出動や搬送の必要性を見極めること。08年10月から119番受信時の判定に取り組む横浜市の場合は、医師などの協議会の検討を経て作った判定基準をコンピューターでプログラム化し、通信員が聴取内容に従い画面の項目を選ぶと緊急度が5段階で表示される仕組み。消防庁でも06年度から検討会を設置し、全国的な基準作りを進めている。

Photo_2病気や怪我の重さから傷病者の緊急度を判断する「緊急度判定(トリアージ)について、全47都道府県庁所在地の消防本部にアンケートを実施したところ、119番受信時に緊急度判定をしていると回答した29本部のうち13本部(45%)で、統一運用している判定基準がないことが分かった。個々の通信員によって救急出動などの判断にばらつきが出る恐れもあり、専門家は「基準なく判定するのは危険」と指摘している。

 アンケートは9月下旬に行ない、119番受信時や搬送時に緊急度判定をしているか、▽判定基準の有無▽不要不急の通報の状況——などを尋ね、44本部(94%)が回答した。

《81歳の妻が、7月初旬に1人で買い物に行った帰り、電車の発車時にあおられて車内で転倒する事故に遭った。救急車を呼ぶというのを断って、車内の人や駅員に介助されてタクシーに乗せてもらい、自宅まで戻ってきた。日常の食料品などを買い込んで二つになった荷物は結構重量があった。買った荷物が気になってどうしても帰ってきたかったという。だが、帰宅してから急激に痛みが増し、我慢できないということで、要請までの顛末を話し、救急車にきてもらった。「近いところがいいですね」という署員が自宅から10分ほどのの救急病院に駆けつけてくれた。短い病院までの時間、車内で事故が起きた際の現場の状況を聞き、体の状態を観察し、妻を元気づけてくれた。病院に入ってからは、救急隊員は患者の状態を「医者から聞き取り、署に出動の顛末を報告するまでが仕事」と見届けてから返っていった。レントゲン撮影、診断の結果、肩の骨の一部が骨折していたが、手術を嫌がる妻の言い分を聞いてくれて、骨折の状況から、右腕は真横に90度以上は上がらなくなるが、体に沿ってなら真上まで挙げられるようには回復する、とのことだった。事故の2日後、腕の鬱血がひどく、腕全体が真っ黒くなり、腐るのではないか恐れたが、徐々に正常に戻り、それから現在まで週2、3回から来月からは週1回のリハビリですむまでに回復している。この間、利き腕が使えない妻に代わり、買い出しから台所仕事までをすることになり、80際になって独身時代が再来したような毎日を過ごすことになっている。昨年11月末で廃車にしたことで、行動の不便を感じているのだが、これもひょっとすると、これからの我が身の予兆となっているのかもしれない、とも思っている。》

 119番受信時の緊急度判定の有無は、29本部が「あり」▽13本部が「なし」▽2本部が無回答。緊急度判定に全国的な基準はないため、「あり」のうち16本部は、意識や呼吸の有無などから緊急度を示した自治体独自の基準に基づいて判断していた。

 一方、「あり」の残る13本部は基準なしに緊急度判定をしているといい「通信員の個々の判断に任せているのが現状」(那覇市)などと回答。中には、「基準があるのが理想だが、作ることが難しい上、基準自体に縛られてしまう問題点もある」(岡山市)という指摘もあった。

 また29本部のうち、緊急度が低いと判断した場合に特別な対応をしているのは10本部で、医療機関を紹介するなど自力受診の要請が9本部、救急車を呼ぶべきか迷った時の電話相談の紹介が4本部あった(複数回答)。

 山形市で昨秋、体調不漁で自ら119番した山形大の男子学生に通信員が自力受診を要請、男子学生は9日後に1人暮らしの自宅アパートから遺体で見つかり、遺族が市に損害賠償を求め、提訴している。アンケートで同市は係争中を理由に半分以上回答しなかったが、既に市が通信員の聞き取り項目を定めた簡易な通信受理票以外に基準なく判定していたことが分かっている。市川市長は8月の記者会見で「119番にはいろんなケースがあり、市が独自に(基準を)作るのは難しいと思う」と述べた。

 総務省消防庁の緊急度判定に関する検討会で10、11年度に座長を務めた有賀・昭和大学病院長は「基準なく判定するのは危険。緊急度判定に関する全国的な『物差し』が必要だ」と話している。

<不要不急の119番>
 「『寂しい』と4カ月に通報160回」——。アンケートでは、全国の消防本部が救急要請とかけ離れた「不要不急の119番」に頭を悩ませている実態が改めて浮き彫りになった。緊急度判定の基準を設けていない消防本部からは、基準の必要性を認める声が聞かれたが、一方で、導入に慎重な違憲もあった。

 「過去に悪質だった不要不急な119番の例」で多かったのは、「同じ人物による複数回の119番」(8本部)▽「通院目的(タクシー代わり)」(4本部)など。

 大阪市では「同じ人から1日百数十件」の通報があった。和歌山市では「寂しいからと虚偽の通報を4カ月に160回繰り返した女性がいた」という。富山市には「病院に来たら診察まで時間がかかると言われ、病院の駐車場から救急車を要請した」患者もいた。

 救急以外の目的で119番する人も。「通報で現場につくとテレビリモコンを落としたので拾ってほしいと言われた」(津市)▽「ストーブに灯油を入れてほしいと通報があった」(福岡市)などの例が挙がった。

 総務省消防庁が進める緊急度判定の基準や仕組み作りには期待の声が聞かれた。「不要不急な119番にはどこの消防本部も悩んでいる。多少時間がかかっても、しっかりした基準や仕組みを作ってほしい」(広島市)▽救急需要が高まる中、非常に関心を持っている。緊急度判定の基準が完成次第ぜひ活用したい」(福岡市)。

 一方で、「国が示した基準をそのまま運用できるのだろうか」(松山市)▽「基準は重要だが、119番受信時の緊急度判定では司令室に医師が常駐する仕組みも併せて必要だ」(大分市)——などと基準への過大な信頼を疑問視する声もあった。

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