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2012年7月16日 (月)

小児脳死臓器提供調査

 毎日新聞(7/15)から、

【法的脳死判定基準】
 脳に障害を負って回復の可能性がないと認められる状態の患者に対し、
 ①深い昏睡
 ②瞳孔が左右とも4ミリ以上に開いたまま
 ③喉や眼球への刺激に対する脳幹反射の消失
 ④平坦脳波
 ⑤自発呼吸の消失 ── の五項目について、
 2人以上の医師が2回判定する。改正臓器移植法は臓器提供をする場合に限り、脳死を「人の死」としている。

2_2毎日新聞社が全国の医療機関に行なったアンケートの結果から、脳死判定を巡る医療現場の戸惑いや、小児患者の家族に承諾を得る難しさが浮かぶ。6歳未満の初の脳死判定後も、小児脳死臓器提供が今後増加するには依然高い壁がある。
 
 15歳未満の小児からの脳死臓器提供について、臓器提供施設として体裁を整えている施設のうち約6割が「今後増えない」と考えていることが、調査で分かった。10年7月の改正臓器移植法の全面施行で15歳未満からの脳死臓器提供が可能になったが、これまで実施は2例にとどまる。法改正後、これとは別に15歳未満の脳死と考えられるケースが93例判明したが、いずれも脳死判定や提供に至っていない。医療現場では国内で、小児の希望者に移植の機会が十分に確保されるとは考えられていない実態が明らかになった。

 社は6月、臓器提供施設としては体裁を整えていると厚生労働省を通じて公表している全国340施設を対象に、郵送によるアンケートを実施、206施設から回答を得た(回答率60・6%)。6月14日に富山大病院で初めての6歳未満の脳死臓器提供が行なわれる以前に回答を寄せた施設には、変更がないか確認して集計した。

 小児脳死臓器提供の今後について、
 「増えない」と答えたのが126施設(61・2%)
 「増える」 と答えたのが 80施設(38・8%)
 「増えない」理由を複数回答で聞いたところ、
  親の承諾を得ることが難しい    97施設
  脳死判定が難しく提供数が限られる 60施設
 ──などが上がった。一方、
 「増える」とした理由は
  時間をかければ徐々に浸透する     (51施設)
  提供に対応可能な施設が増えているから (24施設)
 ──が多かった。

 脳死と考えられるケースで臓器提供に至らなかった理由は、
 「家族が承諾しなかった」が最多の 16例 で、
 今後の提供数が「増えない」と答えた理由と一致する。さらに、「虐待を受けた疑いが否定できなかった」が7例と続いた。

1_2関東地方の病院で4月、生後3カ月の乳児の容態を検討するため院内の医療スタッフでつくる「脳死委員会」が開かれた。頭蓋内で出血を起こし自発呼吸をしなくなった乳児は、法定な脳死とされうるよう件は満たしていた。だが、乳児には右手を刺激すると左手が動くという、大人には見られない反応などがあった。

 乳児や幼児の神経は発達途上で未解明な部分もある。「医学的に誰が見ても脳死と言える以外はやめよう」。委員会は、脳死に当てはまらないケースと結論づけた。「小児では現実の医学的な症状と法律の間にずれがあり、現場には戸惑いがあった」と打ち明ける。

 両親の看病する姿を見て、臓器提供の話は持ち出さなかった。医師は「一般的に、子どもの回復を願う家族に臓器提供の選択肢を告げるタイミングはつかみにくい」と打ち明ける。別の医療機関は「臓器提供という選択肢があることは世の中で定着している。脳死状態だと説明した場合は、あえて家族に提示していない」と語る。

 小児は、脳死とされ得る状態になったあとも30日以上、心臓が動き続ける「長期脳死」と呼ばれる状態になることがあり、心停止まで1〜3年、まれには10年以上というケースもある。このため、成人と比べてより慎重な判断が求められる。法的脳死の判定で、自発呼吸の消失の確認など五項目を2度判定することは大人と変らないが、6歳未満は2度目を24時間以上空けて行なうよう定めている。

 参照 「長期脳死児」診断後1カ月以上60人 2007/10/    続 2007/10/23

 富山大病院で6月に行なわれた6歳未満で初めての脳死判定では、慎重を期して小児の専門医を外部から招き、進められた。判定方法の妥当性について、静岡県立こども病院の植田医師は「現実として、日本の基準は世界で最も厳しい」と語る。

 アンケートでは、小児患者が虐待を受けた有無を見抜くことの難しさを指摘する声も多かった。

 関東地方の別の病院に入院した15歳未満の患者は家庭内の事故が原因で脳死状態となったが、家族以外に事故の目撃者がいなかったため「虐待を完全には否定できない」と判断漁れた。この病院が設ける倫理指針では、警察などが事件性がないと判断しても「家庭内の事故で家族以外の第三者の目撃者がいない場合は脳死とされうる状況とは判断しない」と定めていている。院内コーディネーターは「一点の曇りもない状態でないと、脳死臓器提供はできない」と語る。

 厚生労働省のマニュアルでは、虐待された子どもから臓器が提供されることのないよう、重症の子どもが入院した場合は、臓器提供に係わらず確認するよう明記されている。臓器摘出が虐待の隠蔽に使われてはならない、▽虐待をするような保護者や親族は
子どもの意思を代弁する立場にない──といった議論が背景にあるためだ。

 富山大のケースでは、虐待がないと判断した理由について「院内のマニュアルにのっとって判断した。児童相談所と警察からも虐待情報のないことを確認した」と説明。小児からの臓器提供施設で救急医療に携わる医師は「実際に脳死判定を行なった施設の実例が詳しく明らかになれば、それを反映して院内の基準が変っていく可能性もある」と話し情報開示に期待を寄せる。

 アンケートでは、今後脳死臓器提供が増えるためには、「虐待の有無の判定は現場の人材だけでは難しく、公的な支援を」「脳死判定の正確性を維持しながら、手続きの簡素化が必要」「家庭の精神的なケア体制を早急に整備してほしい」などの意見が寄せられた。

 参照 小児脳死判定基準見直し(改正臓器移植法)2010/04

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