欧米で心停止移植急増
毎日新聞(6/24)から、
英国など欧米諸国で延命治療を中止し心臓が停止した後の臓器移植が急増していることがわかった。臓器提供者の2〜5割程度から、これまで脳死以外で不可能とされてきた肝臓や肺が摘出されている。重篤な患者の生命維持装置を停止、心停止を待ち臓器を取る手法で心臓以外は摘出可能。臓器提供者(ドナー)不足を改善する新技術として定着しており、日本にも影響を与えそうだ。
《日本にも影響を与えそうだとは、即、心停止から臓器移植のケースが広がるだろうことを期待する、ということか。これまでも日本での臓器移植が進まないのは民族的な問題、宗教観、死生観、生命倫理の点で欧米と異なることを上げてきた。》
毎日新聞が各国の政府・公的機関の資料を基に算出した臓器を提供する事例のうち、延命治療中止後の心停止と、脳死の割合を調べた。 新技術を先行導入したオランダでは90年代後半から心停止移植が広まり、04年から臓器提供の4割程度になった。昨年、初めて脳死例を上回り、50・2%になった。英国でも00年代に入り急増、昨年、初めて40%になった。ベルギーでは02年まで0件だったのが昨年、18・6%に増えた。米国でも増加し、昨年は12・9%で1000件を超えた。
心停止後の移植は日本でも1979年から腎臓で行なわれている。しかし、心・肺・肝臓では不可能とされ、97年の臓器移植法で脳死からの臓器提供が認められるようになった。新しい心停止移植はこの常識を覆す手法になる。
90年代はじめに米国で開発され、95年にオランダの医学者により定式化された。臨床医によると、事故や,自殺、病気などで脳に障害を受け入院、昏睡状態になり、人工呼吸器が必要になるような重篤な事例で、医師が「健康に回復する見通しがない」「良くても意識の戻らない状態になるだけ」などと判断して生命維持装置を外す。本人の停止に関する意思が不明なケースがほとんどで、家族の了解を得て止めるのが通例という。
《家族の了解を得て維持装置を外すことは日本でも可能だろう。しかし、装置を外すことと、心停止したあとの遺体を臓器移植に提供することとには、欧米と日本では大いに差があるだろう。》
数十分経って心臓が停止したことを複数の医師が確認。5〜10分間、遺体に触らない時間をおいて、移植チームが臓器を摘出する。
臓器摘出時点で心臓が動いている脳死と異なり、心停止では血流が止まるため臓器は傷む。ただ、技術の向上で長期的な成績は脳死移植に見劣りしなくなっているという。
医学的に難しい概念である脳死と異なり、伝統的な心停止は家族も受け入れやすく、ベルギーでは家族による臓器提供拒否率が脳死の場合より低い。
一方、生命維持装置停止後数十分程度では「蘇生できる可能性がある」としてドイツは新しい心停止移植を認めておらず、欧州内でも倫理的論争がある。
引き続き24日、“なるほドリ”から、
臓器移植には脳死からの場合と心停止からの場合とがある。心停止は昔からある死で、心臓が止まった状態。脳死とは事故や病気などが原因で脳の機能が取り返しようもなく失われた状態だ。医学的検査を経て死と判定される。人工呼吸器のお陰で体には血が流れていて、臓器は“生きている”状態だ。
Q 二つの場合で移植できる臓器は違うのか
A 脳死では原則すべての臓器が移植可能だ。心停止では血の流れが止まって臓器が傷むので、心臓、肝臓や肺は移植できず、血流がある程度止まっても使える腎臓などしか移植できないとされてきた。ところが、欧米で、心停止の後も肝臓や肺が移植できる手法が広まっている
A 人工的に心停止をもたらすやり方だ。集中治療室で昏睡状態に陥り人工呼吸器などに頼って治療している重い症状の患者を、「もう健康な状態に回復しない」と医師が診断。家族と相談して生命維持装置を染める。心臓が止まった後、すぐに臓器を取り出すので肝臓や肺の傷みも少なく、移植ができる
Q 脳死の場合との違いは?
A 人工的な心停止移植の場合は、生命維持装置を止めるときは患者は死んでいない。患者が重い障害を負って意識が回復せず寝たきりの状態にしかならないと、医師が判定する
Q 生きているのに生命維持を止めるのか
A 欧米でも意見は割れている面はあるが、「無駄な治療は中止してもよい」と考える治療機関も少なくない。ただ、移植のために治療を止めるわけではない
Q 日本ではどうなんだ
A 日本では、どんな患者にどんな条件で治療を止めていいかという基準は未だない状態だ。だが、「無駄な延命はやめてほしい」と思う人も少なくない。欧米の激変をよく見ながら、移植のあり方を再考していく必要があるだろう
《「欧米の激変」とは随分誇張して表現したものだ。如何にも生命維持は無駄、とでも言わんばかりだ。さあ、どんどん遺体を移植に回そう、と。》
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