労働市場改革法成立へ、解雇容易に(イタリア)
毎日新聞(6/28)から、
《イタリアへは5度ばかり行ったが、その度にガイドは口癖のように説明した、「イタリアは世界1ストライキが多い国です。今日も何かあるようです」。確かに激しいデモや争議には出くわさなかったが、行く先々の広場や街なかで、警官隊が列を作っていたり、あちらこちらに集まる姿をよく見かけたものだ。》
イタリアのモンティ政権が「構造改革による成長戦略」の柱と位置づけた労働市場改革法案が27日、下院で可決され、成立する。従業員を容易に解雇できず、労働市場を硬直化させてきた制度に42年ぶりで改革の手が入る。労働組合の抵抗で原案は大幅に後退したが、28、29日の欧州連語(EU)首脳会議に間に合わせるため成立を急いだ。改革は当初の大きな課題を越えることになるが、モンティ首相は債務危機が再びイタリアへ波及することを防ぐ次の新たな方策を迫られている。
70年にできた労働者の雇用を守る手厚い保護制度*は、非正規雇用や若者の失業**を増やし、海外からの投資や生産性の向上を妨げているとの批判も招いてきた。債務危機で昨年11月、国際通貨基金(IMF)監視下に入ったイタリアで、モンティ政権が欧州各国に約束した最後の大きな課題が労働市場改革だった。
《 * 企業の業績不振を理由に従業員を解雇することが許されていない。
** 2月の失業率が9・3%になり、04年1月以降最悪の数字に。特に15〜24歳の若年層の失業率が深刻で、31・9%だった。》
当初案は企業が業績に応じて自由に解雇や給与改定ができる内容だったが、労組と左派政党の反対で裁判所が介在する手続きに変わり、最大2年分の給与相当額を補償するなどの大幅な修正が行なわれた。それでも、遅れていた失業手当や就業訓練の制度を拡充するなど、イタリアの労働市場が先進国型へ変わるきっかけは整う。
労組も経営者団体の産業総連盟もなお修整に反対しており、政府は採決を急ぐため、各党に成立後の微調整を約束。だが、フォルネロ労相は「大幅な修正ではない」と強調している。
一方、スペイン救済が焦点となっている現在の債務危機からの連想で、イタリア国債の利回りも再び上昇する兆しを見せており、モンティ首相は欧州金融市場の安定策でも主導的な役割を求められている。22日にローマでドイツ、フランス、イタリア、スペイン4カ国首脳会談を初めて開いたのもその胃一環だった。
労働市場改革法案成立は、国内の構造改革というより、28日からブリュッセルで開かれるEU首脳会議出席の条件を整える通過点に変質。各党もそのために協力に同意した事情がある。
モンティ首相は「首脳会議が終わっても、週明けの市場が開くまで帰国せず、(市場安定化策を打出すため)努力する」と背水の陣を宣言している。
《解雇が容易になるということは、労働者への圧迫が強まり、却ってストライキや失業者を増やすことになるのではないのだろうか。》
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