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2012年5月26日 (土)

ブータン国民の「身の丈」の「幸せ」って

 毎日新聞(5/26)“現地ルポ”【福田隆】から、

 昨秋に国王夫妻が来日して以来、日本でも「幸福の国」として知られるようになったアジアの小国・ブータン。「国民総幸福量(GNH)」という独自の概念を打出し、経済的な豊かさだけではない「幸せ」の追究が国家目標だ。05年の国勢調査で国民の97%が「幸福」と答えたという彼らの幸せとは。国連児童基金(ユニセフ)国内委員会「日本ユニセフ協会」のプレスツアーで現地を訪れ、人々に聞いてみた。「あなたは幸せですか?」

 GNHは1970年代に先代国王が提唱した。国内総生産(GDP)などの経済的指標ではなく、物質・精神両面での身の丈に合った幸福を目指す概念だ。

 ブータンを訪れたのは4月下旬。首都ティンプーから南に車で約8時間、比較的貧しい地域とされるダガナ県で農業を営むラル・ドシュ(42)は妻と子ども7人の9人家族だ。1年前、突風で屋根を吹き飛ばされたままで資金を確保して要約工事を始めた。「幸せですか?」と聞くと「はい」。「現金収入につながるオレンジの木を増やしたい」と前向きだ。

 ペマ・ヤンゾム(28)は1〜11歳の子ども3人を育てる母親。夫(24)はほとんど家におらず、トウモロコシなどを作って3食を確保するのがやっと。それでも「幸せですか?」の問いに「前に住んでいたところでは土地がなかったが、ここでは政府から土地を与えられ、なんとかやっている」と穏やかに話し「ノー」とは言わなかった。

 ティンプー市内では4年ほど前から若者の非行が始まった。深夜の街なかでは、10代の少年少女たちのグループが徘徊し、帰宅を促す警察官を無視して騒いでいた。ブータン警察によると、市内での11年の薬物事件は327件で、前年より約100件減ったが、8割が25歳以下の犯罪で市民の間に潜在化への危機感が強い。

 幸福感と現実のギャップは、政府も認識している。開発をチェックするGNH委員会のリンチェン・ワンディ主席計画調整官(40)は「テレビの普及で、これまでになかった文化が急に入ってきたため、GNHの考え方を逸脱する子どもが出てきた。きちんと対応したい」とし、こう述べた。「GNH政策とは、一人一人の国民が幸せになりやすい状況をつくること。目立った資源のないわが国にとって『GNH』自体が唯一の資源なのです」。

 厳しい生活や社会不安の中でも、身近な幸せを慈しみながら強く生きていく。ブータンの人たちの幸福感は、そんな姿勢に根ざしたものと思えた。

《豊穣の時代を経験し、贅沢三昧に明け暮れる昨今だが、且つては日本人も「身の丈」に見合った生活をした時代があった。破れ障子にすきま風が通り抜ける居間に集まり、これまた破れ畳に薄っぺらな座布団を敷き、麦混じりのご飯に粗末な献立の並ぶ円卓で、家族が揃って大黒柱(懐かしい名前だ)の父親を囲んでみそ汁をすすった。この風景が今では死語と化した「一家団欒」の姿だった。貧乏でも幸せだった。子供部屋などという部屋など、日本の家庭のほとんどにはなかった。居間は食事をする所であり、昼寝をする所であり、無駄話をし、子どもたちの遊び場になり、時には喧嘩もし、宿題や勉強をする場所であり、夜は寝室にもなった。》

《戦後の復興が進むにつれ、人々に少しずつ上を見る目が生まれていった。東京オリンピックを前に高速道路ができ、新幹線が走り、テレビが街頭でお目見えした。テレビが一般家庭に行き渡るにはまだまだ時間が必要だった。そのテレビが各家庭に広がり始めた初期のテレビに向かって「一億総白痴化」なる言葉が囁かれた。今ならさしずめ流行語大賞受賞だろう。教育番組は無に等しかった。下らない娯楽番組の溢れることに識者たちは牙を剥いて襲いかかった。》

《テレビが行き渡り電化製品が家庭に入り込んできた。主婦の労働を軽くしようと洗濯機が現れ、炊飯器が、冷蔵庫が入り込んできた。都営住宅が建ち並び、そして主婦の目が向いたのは窓越しに見る隣近所の動向だった。「お隣さんにテレビが、お向かいに洗濯機が、ピアノが運び込まれた」となって弾きもしないピアノが大量生産された。今に続く現代日本人の好きな付和雷同の「みんなが、みんなが」の始まりだ。》

《田中角栄の列島改造論が出版され、所得倍増論が現実となり、それまで世界一の低賃金で働いていた日本の労働者はみるみる給料が上昇し、世界1の高級取りにまでなっていった。》

《ここまではバブルがはじけるまでの大まかな動きだが、ブータンのルポで既に発生している10代の若者たちの非行ぶりを、政府も「テレビの普及」と見ているようだが、日本のほぼ半世紀以前のテレビが普及し始めた当時の世相と似ている。日本の若者の無軌道ぶりをテレビや漫画のせいにする風潮は今も変わらずにある。ブータンもいずれは変っていくだろうが、「きちんと対応したい」という首席計画調査官の将来像とその結果がいかがなものか見極めてみたいが、80歳を過ぎた私にそれが叶うだろうか。》

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