スマホ、フィルタリングは企業任せで安全置き去り
毎日新聞(4/16)から、
昨日はSNSが取り上げられたが、引き続いてスマホだ。自由にインターネットに接続できるスマートフォン(スマホ)が普及し、子どもがスマホを手にする機会も増える。従来型の携帯電話のフィルタリングが義務化されて3年。スマホのフィルタリングはどうなっているのか。
《携帯電話でさえ、必要ない子どもたちに持たせることで、犯罪に巻き込まれるケースが後を絶たないのに、自由にインターネットに接続できる多機能携帯を持たせることは、これまで以上に犯罪に絡むトラブルが増えることが想像できる。タイトルは他人事のように書くが、安全を置き去りにするのは企業ではなく、持たせるだけで子どもの管理責任を放棄している親そのものだ。》
スマホ向けフィルタリングソフトを販売する「デジタルアーツ」社が昨年、10〜18歳の男女1236人に実施したネット調査によると、スマホを持っている人の19%がネットを巡るトラブルを経験していた。従来型携帯を持っている人(10%)の約2倍にのぼった。同社は、スマホと従来型携帯でフィルタリングに差があることが原因とみている。
ポルノや暴力など、子どもに有害なサイトへのアクセスを遮断すのがフィルタリング。09年に施行された青少年インターネット環境整備法は、携帯電話の販売店やネット接続業者に対し、18歳未満が使う携帯電話にはフィルタリングを設置するよう義務づけた。
だが、スマホは自分でアプリケーション(ソフト)を入れて機能を増やすことができるなど、実態は携帯電話よりパソコンに近い。同法はパソコンについて携帯電話のような義務づけはしておらず、結果としてスマホはどんなサイトにも,無制限につながる「抜け道」になるのだ。
技術的な問題もある。従来の携帯電話は電話回線を使うため、携帯電話会社が自前の回線にフィルタリングをかければ有害サイトへのアクセスを遮断できたが、スマホは街中の無線LAN回線(Wi-Fi)経由でネットに接続することも可能だ。電話回線にフィルタリングをかけても、その網から外れてネットに接続できてしまう。
携帯電話各社にはスマホ用フィルタリングサービスもあるが、ブロックできるのは電話回線か、自社の無線回戦に限られる。NTTドコモは「他社の(無線回線の)サービス内容までチェクするのはそもそも不可能」と指摘する。デジタルアーツ社は「無線回線にはいろいろな接続業者が参入し、得られる情報量も従来の比ではない。自社だけではすべてを監視できない」と限界を認める。
NPO青少年メディア研究協会の下田理事は「スマホはブレーキのない自転車のようなもの。安全性が全く担保されていない」と指摘する。総務省のワーキンググループはは昨秋、スマホのフィルタリング提供を「民間による自主的な努力」にとどめる提言を出したが、、下田は「フィルタリングが不十分だと認めながら、スマホを売りたがっている企業に委ねるのは無責任」と、国の対応を批判している。
《携帯電話のフィルタリングが、いかに中途半端なものかを理解した上で、「民間による自主的な努力」とした総務省の方に理がある。保護者が、携帯以上に危険なスマホを十分理解し、それに対する危機意識が伴わない限り、「子どもがどこにいても把握できる」程度の幼稚な考えで、子どもに必要のない携帯やスマホのようなものは持たせるべきではない。》
閲覧をすべて遮断するのではなく、ルールを決めて閲覧を可能にするソフトもある。
シマンテック社がホームページ上で無料提供しているフィルタリングソフトは、有害サイトの閲覧をいったん制限するものの、子どもがアクセスしたい時には保護者に理由を添えて申請できる。閲覧のルールを親子で決められるのが特徴だ。同社ノートン事業部の吉田氏は「保護者がネット事情に疎いと、厳しい制限を設けるか、諦めるか、と極端になりがちだ。親子で話し合い、正しくネットを活用すべきだ」と話している。
スマホのような高機能携帯が普及する一方で、当初インタ−ネットやゲームなどの機能が付いていた子ども向け携帯は、09年に文部科学省が小・中学校への持ち込み原則禁止を打出して以降、大きく変容している。
携帯電話大手3社は、親など特定の相手としか電話・メールができず、ネットにもつながらない一方、GPS(全地球測位システム)による居場所検索や防犯ブザーの機能をつけた機種を販売している。ソフトバンクの担当者は「学校への持ち込みを意識した」と話す。
電話はいずれも登録した相手としかつながらない。メールはソフトバンクは登録先20件から受けられるが、送信はできない。NTTドコモは登録先10件に、33の定型文のみ送ることができる。受信に制限はないが、保護者が制限をかけることは可能だ。KDDI(au)は登録先10件とやり取りができる一方、メールを使えない設定もできる。
月額使用料は各社とも1000円未満。当初数年は無料になるサービスもある。機能限定型の機種「マモリーノ」を2年前から販売しているKDDIは「機能を削ぎ落とすことで、安全確認のニーズに応える電話を安く提供できる」と説明する。
見た目も電話より防犯ブザーに近く、こうした目的で小学校入学時に購入する保護者が多いというが、GPSで居場所を捜す場合、ドコモとソフトバンクは、保護者の携帯が他社のものだと利用に制約がある。
東京都品川区は05年から区内の小学生全員にGPS付き防犯ブザーを無料貸与している。ブザーを鳴らすと、位置情報が役所内の窓口や近所の防犯協力員に届き、駆けつけて安全を確認するという。現在はマモリーノを利用しており、保護者が契約すれば、電話やメールも使える。
《品川区でなくても、保護者がどうしても子どもに持たせるのなら、このように、必要最小限の機能のもので十分なのだ。》
10年度は子どもが危険を感じてブザーを鳴らしたケースが21件あり、事件の未然防止に役立ったという。区教委の担当者は「常に首からぶら下げているので区内の子だと分かる。可視化によって、地域の子どもの安全に係わろうという大人の意識が高まっている」と、思わぬ効果を実感しているという。
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