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2012年3月12日 (月)

PPS(特定規模電気事業者)人気

 毎日新聞(3/12)から、

《何もがめついのは大阪商人ばかりじゃない、という話。》
 全国の自治体で、経費削減のために電力の購入先を大手電力会社からPPSに切り替える動きが広がっている。企業向け電気料金の値上げ方針を示した東京電力管内でも「脱東電」の取り組みが加速するが、高まりすぎた人気に「落とし穴」が。思惑外れの自治体も出始めているという。ほくそ笑んでいるのは東京電力だろう。

 「全国の自治体、議会からの問い合わせは200件以上、受け入れた視察団は50を超えた」。東京都立川市の田中・行政経営課長は話す。市は、運営する立川競輪場の電力購入先をPPSに変えたことで、09年度は約6280万円だった電気代を10年度には約4620万円と約26・5%も節電。昨年5月に報道され、「立川モデル」として注目を集めた。視察団から一番訊かれるのが「デメリットは?」という質問だが、田中課長は「『全くない』と事実をそのまま答えている」。同市は今年度、対象施設を小中学校にも拡大、来年度はさらに市庁舎にも広げる計画だ。

 全国市民オンブズマン連絡会議によると、10年度で既に27都道府県と16の政令指定都市が電力購入に競争入札を実施しているが、東電福島第1原発事故を機に拡大。東電管内では、今年に入ってからだけでも、都内で人口最多(84万人)の世田谷区が電力の購入先を競争入札にしたのをはじめ、練馬区、足立区、千葉市、埼玉県、吉川市、神奈川県大磯町などが続々と競争入札の実施、または対象施設の大幅拡大を表明した。9日には枝野経済産業相が、PPS普及推進の立場から、国民により分かりやすくと、略称を「新電力」とすると発表している。

〖PPSとは〗
 パワー・プロデューサー・アンド・サプライヤーの略。00年にビルや工場などの大口需要者を対象に、電力の小売りが自由化されたのを受けて、商社や鋼鉄メーカー、ガス会社などが設立した電機の小売業者。自前の発電施設で発電したり、自家発電した企業から余剰電力を買い取って小売りする。送電網を持たず、東電などの大手電力会社に託送料を払って契約先に送電している。

 ところが今、自治体が立川市のような電気代削減を実現するのは難しい状況になっている。PPSの供給量に「限界」があるためだ。

 資源エネルギー庁によると、PPSは全国に52社あるが、実際に電力の小売りを手がけているのは26社。その供給量は、大手を含めた全国の販売電力量の約3%に過ぎない。既に04年から県庁本庁舎や上下水道の電力業者を競争入札で決めてきた茨城県では2月、新年度の入札を行なったが、応札はゼロ。再度入札を実施したが同じ結果だった。担当者は「応札ゼロは想定外。これまでは競争原理で安い業者と契約できたが、このままでは東電と随意契約を結ばざるを得ない」と困惑する。

 あるPPSの担当者は「自治体と取引したいのは山々だが、電源には限界があり、急に仕入れは増やせない。『脱原発』のイメージづくりでPPSに切り替えたいという企業も多く、競争入札で価格を抑えられがちな自治体と契約する余裕はない」と話す。

 PPSの電力価格も値上がりしている。余剰電力の売買を仲介する「日本卸電力取引所」によると、秋口からじわじわ上昇し、最近の取引価格は1キロワットあたり約20円と昨年の倍以上。因みに、企業や自治体など大口向けの東電の電力価格は「相対取引のため個々の契約内容は公表できない」(広報部)が、関係者によると家庭用(使用料によって1キロワット当り17円87銭〜24円13銭の3段階)より「割安」という。とすれば、PPSの競争力はかなり削がれている。

 長年、PPSから電力を購入する自治体の担当者は「原発事故を機に、売り手と買い手の立場が完全に逆転した。今は完全な売り手市場だ。東電の値上げに連動してPPSも相応の値上げをしてくるはず」とみる。

「来年度からは大幅な経費削減は難しいだろう」。立川市の担当者も顔を曇らせる。

《「風が吹けば桶屋が儲かる」の現代版だ。》

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