ドコモ通信障害
毎日新聞(2/7、8)から、
昨年から相次ぐNTTドコモの通信障害は、スマートフォン(多機能携帯電話、スマホ)の普及で急増する急増するデータ通信量に、インフラ整備が追いついていない通信業界の危うさを浮き彫りにした。携帯電話事業者は各社とも、データ通信の使用が多いヘビーユーザー向けの抑制対策や、通信を捌くための設備投資に腐心しているが、スマホ特有の事情から完全に問題を解決するのは難しそうだ。
スマホの売り物は、携帯大手以外の事業者や個人が作ったアプリ(アプリケーションソフト)を利用して、機能を増やせることだ。しかし、1月25日にドコモで発生した通信障害では、このメリットが裏目に出た。
通信障害の原因は、スマホの扱う情報量がドコモの想定を超えるほど多くなり、情報を処理する「パケット交換機」の能力をオーバーしたことだった。情報量を押し上げたのは、スマホと交換機との間で常時やり取りされる「制禦信号」だ。
ドコモの多くのスマホで採用している米グーグル社製の基本ソフト(OS)「アンドロイド」は28分に1回、接続状況などを知らせるために制禦信号を発している。また、無料で通話やメールをやり取りできるアプリを組み込むと、使っていない時でも、端末がどこにあるかという位置情報や説状況を知らせる制禦信号を3〜5分間隔で送受信するため、さらに情報量が増える。つまり、使っている人の知らないうちに一定のデータが流れているため、そこに電話やインターネット閲覧などの使用が一定時間に集中すると、交換機に負荷が掛かり、異常が起きやすくなる。
だが、この制禦信号の量を事業者が把握するのは難しい。アンドロイドは、誰でも自由にアプリを開発できる「オープン性」が売り物のため、日々アプリは増えている。すべてのアプリについて、何分間隔でどのくらいの量の制禦信号を出すのかをつかむのは至難の業となる。実際、「データ量をつかめなかった」とドコモの山田社長は1月27日の会見で、アプリの情報をつかみ切れていなかった実態を認めた。
ソフトバンクやKDDI(au)が販売している米アップル社製の「iPhone(アイフォーン)」ではアップルが対応アプリを審査しており、アプリの制禦信号量も把握できる。それでも、端末の機能が向上してアプリの使用が増えれば、対応には限界がある。ソフトバンクの孫社長は「OSとアプリの製作者が一緒になって問題解決に取り組まなければ、みんなが困る」と述べ、業界全体で取り組む必要性を指摘する。ドコモは再発防止策として、グーグルやアプリ開発者に、制禦信号を減らす改良や、制禦信号量などの情報開示を呼びかける方針だ。
携帯電話のデータ通信は、1%の利用者の通信量が全体の3分の1を占めるとされる。背景には、スマホ普及のため、各社ともデータ通信が5000円前後で使い放題となる定額料金制を導入していることがある。ヘビーユーザー対策は各社にとって重要な課題になっている。
ドコモは、直近3日間の通信量が300万パケット(1パケット=128バイト)に達すると、通信速度を遅くする規制を09年10月から実施。KDDI(au)にも同様の規制がある。さらにドコモは、今年10月から、高速無線通信サービス「Xi(クロッシー)」については、通信量が7ギガバイトまで定額で、それ以上は通信量に応じて追加料金を払う制度を導入。メールだと730万通分に相当するため、「98%の利用者には影響しない」(ドコモ)という。
ただ、スマホ利用者が増えると通信量は底上げされる。ドコモは通信設備を増強するため、11年度から4年間で1640億円の設備投資を計画。このうち500億円は、一連の通信障害を受けて積みました分だ。
これだけ巨額の投資をしてまでスマホに対応しなければならないのは、スマホ販売が市場の主戦場になっているからだ。調査会社、MM総研の推計では、今年3月末の携帯電話契約数は1億1239万件で、スマホは約2割の2598万件。しかし、15年3月末には従来型の携帯電話を上回り、全契約数1億2068万件のうち6137万件を占めると予測されている。
収入の柱は音声通話からデータ通信に移っており、スマホ需要を取り込むことが各社の最重要課題になっている。値下げ競争で契約者獲得に走る一方で、急増する通信量をカバーするために巨額の投資が必要になるという構図になっており、「通信の質」を維持しながらどう契約者を増やしていくか、経営の舵取りは難しさを増している。
翌日8日には関西6府県で再び通信障害を発生。約40分間一部不通となった。一部利用者の電話がつながらなくなったが、今回は「音声交換機」の故障が原因で、予備交換機への切り替えで復旧した。
ドコモ広報部は今回の通信障害について「音声情報を扱う機器の故障。スマホによる通信混雑とは関係がない」と説明している。
続いて今度はKDDI(au)は9日の午後約1時間、通信障害が発生したと発表。全国でデータ通信サービスが利用しづらくなる通信障害が発生。スマートフォン(多機能携帯電話)からのデータ通信利用と法人向けのデータ通信サービスの一部で障害が起き、最大130万回線に影響が出た。
NTTドコモで通信量の急増などを背景とする通信障害が続発しているが、KDDIは「原因は機器故障。通信量の増加とは関係がない」と説明している。
携帯電話各社が7日発表した1月の携帯電話契約数によると、新規契約から解約を差し引いた純増数は、前月トップだったNTTドコモが8万5800件で3位に後退した。米アップルの人気端末「iPhone(アイフォーン)」など他社端末への顧客の流出が続いているほか、通信障害が相次いでいることも「影響がないとは言えない」(ドコモ広報)としている。
首位はソフトバンクモバイルで22万6600件。アイフォーン4Sの好調が続き、2カ月ぶりのトップとなった。2位はKDDI(au)で18万1100件。アイフォーンの在庫切れによる伸び悩みが解消した。
ウィルコムのPHSは4万7900件だった。イーアクセスは昨年12月分から単月での公表を取りやめている。
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