クラウドって何?
毎日新聞(12/7)から、
そろそろ老爺にはついて行けないややこしいことになりそうだ。時代はクラウドコンピューティング!─なのだそうな。書店に並ぶ経済誌は、とにかく挙(こぞ)ってそう書いてある。クラウド(cloud)とは「雲」の意味だが、コンピューターとはどんな関係が? 聞けば「クラウドは出雲の国にある」という。本当か? 確認に行ってみた。(レポート 小島昇)
《書店でもその一角の経済誌など、とんと目にしたことがない老爺には疎い話題だが、小耳にしたことがないではない。しかし、極々ちっぽけなブログで消えて困ることや、秘密の隠しごとなど何もない話題を細々と取り上げるだけの内容では、巨大なクラウドのお世話になることもない、と思い込んでいる。その程度の知識(?)だがちょっと中を覗いてみたくなった。》
東京から飛行機で1時間半。JR松江駅からは車で10分。雲のようにつかみどころがないどころか、それはそれは出雲の国、松江市郊外の約8000平方メートルの敷地に、どんと鎮座していた。トラックのコンテナ7台がコンクリートの床にボルトで留められ、空調装置とつながっている。これがクラウドか?
「そう。これが日本では初めてのコンテナ型データーセンターです。IZmo(イズモ)と名付けました」。そう胸を張るのは、インターネットイニシアティブ(IIJ、東京都)の久保力・データセンターサービス部副部長。IIJは、1992年設立のインターネット業界の“老舗”だ。
ここでちょっよ確認しておこう。「クラウドコンピューティング」とは、手元のパソコンやスマートフォン(多機能携帯電話)から、「遠く」のコンピューター(サーバー)に接続して、情報やソフトウエアを随時利用するサービスのことだ。近くの社内のサービスではなく、「遠くの別会社」のサーバーを利用するのがミソ。東日本大震災後、クラウドへの注目が高まったのは、安全な場所に情報システムを預けてインターネットで利用する仕組みのため、非常時でも営業を続けられるからだ。しかも、企業は高額なサーバーなどを所有しなくてもよく、維持管理などコスト面のメリットが大きい。社員にとっては、パソコンが壊れたり紛失したりしても、データがクラウドに保存されているので、大事な文書や写真が失われない。
検索サービス最大手、グーグルのエリック・シュミット会長が06年に提唱したのが始まりという。クラウドの名はサービスを図解する際、雲の形を描いていたのが元らしい。調査会社のIDCジャパン(東京都)によると、2011年の国内クラウドサービスの市場規模は662億円で、前年比46%増。15年予想は2550億円で、急速に拡大する。
データを安全に保存し、必要に応じて提供するサーバーのある場所がデータセンターで、いわばクラウドの拠点。IIJは4月、出雲の国にセンターを新設した。コンテナの扉を開けるとサーバーがずらりと並ぶ。
だが、待て。これまでデータセンターは、テロなどを警戒して、人目につかない殺風景なビルや倉庫にひっそりと置かれてきたはずだ。「あまり隠さなくなりましたね。グーグルで検索すると、航空写真が出てくるからでしょう」と久保さん。クラウドが発達した米国では、郊外に大規模なセンターを置いており、隠しようがないよいう。マイクロソフト、フェイスブックなどのセンターも場所が知られている。
国内のデータセンターの7割が首都圏に集中する中で出雲を選んだ理由について、久保さんは「地理的に離れて同時に被災しにくいところに置きたかった」と話す。震災前から検討していたという。
一方の島根県。「IIJが用地を探している」と聞き「ぜひ来てほしいとアプローチした」(宮崎・県商工労働部企画立地課長)。文部科学相地震調査研究推進本部の資料を基に地震が少ないと訴え、島根原発があるので、松江市では電力料金が8年間にわたって実質負担が半分になると強調。誘致に成功した。
高台を切り開いた現地の標高は約40メートルあり、地盤も強固だそう。コンテナは最大24台並べられる。特注品だが、大型トラックで輸送でき、需要が増えたら増設できる。今あるコンテナは,大手コンピューターメーカーの工場がある福島県に持ち込み、サーバー320台をセッティングして輸送した。福島を3月8日に出て、松江で設置を始めたのが10日。震災前日だった。
コンテナには、サーバーから出る熱を自然の外気で冷やす仕組みがあり、エアコン稼働を抑える。久保さんは「電力消費の効率は、従来のビル型データセンターに比べて半分」と説明する。一見ただのコンテナが、ハイテクと省エネの結晶とは以外だった。
一方、「さくらインターネット」(大阪市)は、先月15日、北海道石狩市で国内最大級のデータセンターを稼働させた。敷地は東京ドーム1・1個分の5万1448平方メートル。鉄骨2階建ての建家2棟(縦165メートル、横37メートル)が完成している。最終的に8棟を整備すると60万台以上のサーバーが稼働する。
「広大な用地があり、冷房の電力消費を抑えられる北海道はデータセンターの最適地」と北海道経済部産業振興課。08年から誘致セミナーを東京や大阪で開いてきた。千歳、旭川、美唄、苫小牧の4市も誘致合戦に参戦している。他にも、ヤフー(東京都港区)はグーグル企業を通じて、福島県白河市で9月1日に着工した。
トラブル時にすぐ駆けつけられるようにと、日本では都市部に置かれたデータセンターだが、さくらインターネットの舘野副社長は「電力費、設備費などのトータルコストは東京23区内の半分。日本のITコストを世界標準にするため北海道に出た」と言う。
関西でもデータセンターを整備してきたIIJも、原発依存度の高い関西電力管内で電力の安定供給に懸念が出たことから、松江の拡張や,九州への進出を検討中だ。渡井常務は「グーグルや(通販大手の)アマゾンが,大規模なセンターを整備して国内外で安いクラウドを提供している。これに対抗しなくてはいけない」と言い、地域分散は不可欠と説明する。
松江のセンターは、サーバーを遠隔監視するので、工場誘致のように、大きな雇用の場は生まれない。それでも島根県は「データセンターを利用するIT、ソフト産業を誘致する呼び水になる」(室崎課長)と期待する。用地のリース料や法人事業税収入もある。
クラウドを掴むのは、雲を掴むどころか、とても堅実なビジネスのようだ。
《やはり、HDで2テラもあれば心配することもない弱小ブログの老爺には、知らなくてもいいような話だった。しかし、心配事は天変地異だけではなく、テロだってないわけではないのだが・・・・。》
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