就活スタート
毎日新聞(12/2)「社説」から、《 》内は私見。
かつては難関の大学に合格することが良い就職先の切符を手に入れることを意味した。企業は採用後の社内教育で人材育成をしてきたので、大学時代はサークル活動とバイトで過ごした学生も「潜在能力」が認められれば、それなりに就職はできたものだった。それが通用しない時代になった。
今春卒業した学生の就職率は91・0%で過去最低、現在4年生の内定率も過去2番目に低い。まさに「超氷河期」である。オフィスの合理化が進み、製造拠点がコストの低い途上国へ流れる構図が変わりそうにないことを考えれば、新卒者の就職難は決して一過性のものとは言えない。外国人採用増を打出している企業も多く、日本の学生の苦難はさらに続く。
《入学を果たしたことで一安心し、サークル活動とバイトならまだしも、コンパに明け暮れ、ゲームにメールでキャンパスライフを謳歌して過ごしては、優秀な外国人に就職先を奪われ指を咥えることになっても仕方ない。就職の困難さは昨日今日の問題ではない。学びの中で将来を見据え、人生設計をたててこそ就職戦線を勝ち抜くこともできるのだ。》
そうした中で、13年春に大学を卒業する学生らの就職活動が始まった。これまでは10月から各企業が説明会を開催していたが、就活が加熱し学業に専念できないなどの批判を受けて経団連が倫理憲章を改定し、今年から2カ月遅らせることにした。現在の大学3年生はこれから3月までに企業説明会に参加し履歴書やエントリーシートを作成し、4月解禁の採用試験に向けた準備をすることになる。
学業に配慮した改善策は評価しよう。だが、就活期間の短縮で日程が過密になり、大学側が説明会を設定しても企業が集まりにくくなったという。学生にとっても週末や祝日に説明会が集中するため十分に情報が集められない不安が聞こえてくる。
だが、こんな時こそ変わるチャンスだ。大学の中には、学生に人気の大企業だけでなく、将来有望と見込んだ中小企業を説明会に招いて学生とのマッチングに努めているところがある。業績を伸ばしている中小企業は人で不足で困っていても、学生が企業の将来性を判断するのは簡単ではない。就活期間が短くなった分、大学側が普段から企業と交流会を重ねて収集した情報を生かすことは大切だ。現実の社会がどのような人材を求めているのか、その情報は就活だけでなく授業のカリキュラムにも生かすべきだ。大学教育そのものを見直すきっかけにしてはどうか。
《学生も教えられるだけの情報で満足していては必ず遅れを取る。学業は勿論だが、毎日の国内外の経済の変化や動きを自ら収集する努力は必要だ。なぜ企業が外国人の採用を増加させるのか、何が、どこが、日本の大学卒と異なるのか、繰り返し指摘してきたが、「なぜ」「どうして」を考え、追究する力が不足しているように思える。》
アジアの優秀な若者たちとの競争を強いられる学生は尚更だ。希望した就職先に採用されず大学院や海外留学の道を選ぶ学生もいるが、猶予期間を過ごした後も就職難の社会状況はそう変わらないだろう。大企業だから将来も安心とは限らない。今は好調な企業も10年先はどうなっているのか分からない。そもそも安定志向だけでは、向上心に満ちた新興国の若者に勝てるとも思えない。学生も変わらなければ。
《大学院や海外留学の道は逃げでしかない。「社説」もいうように、逃げた期間の後には一層厳しい競争率の垣根が立ちはだかることになるだけだ。優秀な外国人と優秀な後輩との間で漂うことになる。まして定年が延長されて若者の就職は尚更厳しいものとなるのが見えている。企業は企業で若返りのサイクルが鈍化するデメリットをどう乗り越えるか、学生はそれらにも考え及んで幅広い視野で物事を考える力を持ち合わせることが大切だ。》
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