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2011年11月 2日 (水)

「学生の質」巡り認識に隔たり

 毎日新聞(10/31)から、
       オキザリス(せいようかたばみ)
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 4割を超える企業が「学生の質の低下」を実感──。就職情報会社の調査で、こんなデータが公表された。より優秀な学生がほしい企業と、進学率の上昇で「大衆化した」大学、義務教育も含めた社会状況が混在して生み出された減少とも言えそうだ。

《一律に教育を受けても、玉石混淆の受け手による仕上がりに差が出ることは当然の結果で、大量生産される大学生の中には、これでよく卒業できたものだと思わせるレベルも混じることになる。まして大学にも難関とよばれるものから中高生レベルで楽々卒業できるところもあるが、企業はより優秀な人材を求め、そして、卒業生たちは生きていくためにそれぞれに働き場所を求めることになるが、結局は己の能力にみあった就職先に落ち着いていくことになる。》

 就職情報会社「マイナビ」(10月に毎日コミュニケーションズから社名変更)が、国内企業に実施した調査(1757社回答)によると、12年春に卒業を予定する大学生の採用活動について「前年より厳しかった」「前年並みに厳しかった」と答えた企業は81%に上った。その理由(複数解答)で「学生の質の低下」を掲げたのは52%で、全体の42%。「母集団の確保」(37%)▽「辞退の増加」(37%)など他の項目を上回り、もっとも多かった。
 
 マイナビの栗田・HRリサーチセンター長は「学生への不満はここ数年、よく耳にする。企業がグローバル競争にさらされ、社員に求められる仕事のレベルが上がったことも背景にある」と話す。「マナーや挨拶など一般常識のなさ」「主体性の欠除」が挙がることも多いという。

《流行を追うのもその一つだが、化粧にしても、服装にしても、趣味、ゲーム、音楽、ピスト自転車など、各人の主体性のなさは目に見えて衰えている。何事においても先ず口をついて出てくる「みんなが、みんなが」が良い例だ。付和雷同は古くから日本人の特徴として言われていたが、近年のそれは特にひどい状態で、揃ったように判でついたように異口同音に誰もが口にする。》

 東京都内の中堅メーカーの採用担当者はこの時期、各大学で合同企業説明会を開くと、消極的な学生がめにつく。「就職先が決まっていないにもかかわらず、会場の壁ぎわに屯し、ブースを回ろうともしない。特に男子学生はガッツが感じられず、『草食系』と言われるのも頷ける」

《敗戦後「強くなったのは靴下と女」と言われて久しいが、日本でいまほど女が強い時代はない。そしてますます男は弱くなっていくように見受けられる。》

 関東地方を中心に展開する小売会社の採用担当者は「会社説明会で『よろしくお願いします』の挨拶さえしない学生が少なくない。入社後にちゃんと仕事をしてくれるのか不安だ」とぼやく。

 これらの声を、大学側はどう受け止めているか。一橋大学キャリアの高橋シニアアドバイザーは「今の学生は、社会全体が貧しかった親世代と違い、がむしゃらに勉強しなければ未来が開けないわけではない。意欲やモチベーションに欠けているかもしれない」と、トップクラスの学生の「質低下」論は否定する。

 同大はキャリア教育の一環で、社会で活躍する卒業生が自らの経験を伝える授業がある。18日に教壇に立った投資助言会社「フジマキ・ジャパン」社長で同大非常勤講師の藤巻健史も「企業が学生に対して厳しい見方をするのは、儲かっていないからだろう。優秀と言われる大学の学生の質は落ちていない」と学生を擁護する。

 日本大学の宇田川理・就職課長も「一般論として今の学生は、挨拶なども含めたコミュニケーション能力が落ちたとの指摘は理解できる。でも、ITスキルは昔よりも向上している。総じて学生の能力は落ちていない」と述べる。

《どうかばってみたところで「挨拶は人間社会の根本だ。挨拶もできない人間に碌な仕事ができるわけがない」というのは古くからの価値観だし、今も変わることのない真実だ。ITは手段であって、仕事は人間がするものだ。》

 更に「大学が学生を磨けるのは4年間だが、実質的な就職活動スタートまでは2年余り。企業側が一括りにする学生の『質』は、小中高までの学校生活や家庭環境に左右される部分も大きい」と反論。「大学悪玉論」を否定する。

《大学だけが悪玉であることをいっているだろうか。大学で突然変異することでもあれば悪玉論も言えるだろうが、小中高や家庭環境が影響していることは言う必要もないほど当然のことで、これで反論しているつもりとは情けないことだ。》

 一方で大学進学率が5割に達したことに原因を求める見方もある。関西の新設大学の教員は「中学生程度の学力で、コミュニケーション能力が決定的に欠けた学生も珍しくない。学生の質は明らかに低下している」と打ち明ける。マイナビの栗田も「90年代以降、大学進学率が大きく伸びたことで、大学生の裾野は大きく広がった。一方で、企業が社員に求めるハードルは年々上がっており、『質低下』を問題視する動向は続くのではないか」とみる。

《強くなった女たちは、バブル期に入ると、結婚相手の男性に求める理想像として、高学歴、高収入、高身長の3つの条件を掲げるようになった(いわゆる流行語にもなった3高)。男たちは大学へ行かないと結婚相手に恵まれず、高収入も望めない、などで猫も杓子も男たちは「みんなが、みんなが」と大学へ大学へと走り出した。景気が泡と消えた現在でも、この傾向は消えることなく進学率だけは高くなっていく。併せて女性の進学熱も向上し、社会参加も加わることになる。質の低下は必然的なものだ。》

 企業と大学のギャップを埋める方策はないのだろうか。企業の人事担当と大学の就職支援担当を経験した、コンサルティング会社「採用と育成研究社」の小宮社長は「企業が『学生の質が落ちた』と繰り返すのは、大学と企業が、人材育成の観点から連携できていないからだ」という。その上で「企業側は求める人物像を『変革に耐えうるチャレンジ精神』などと曖昧な言い方でなく、具体的に示すべきだし、大学側も育成しようとする人物像を『建学の精神』など抽象的な文言に頼らずに明示する必要がある。そうしない限り、学生が『質低下』を言われ続ける状況は収まらないのではないか」と話している。

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