幼児健康度調査
毎日新聞(10/16)から、
10年度の調査では、異常に高かった10年前(00年度)より夜更かしの子どもが大幅に減った。背景には何があるのだろうか。
幼児健康度調査は全国の満1歳から7歳未満の未就学児童が対象。日本小児保健協会が1980年度から10年ごとに実施し、今回で4回目だ。
10年前の調査(00年度)では就寝時刻が「夜10時以降」の子どもが全年齢平均で50%を占めたが、今回は29%に減少。2歳児では59%もいたのが35%に激減。20年前(41%)よりも減った。起床時刻も早まる傾向がみられ、午前7時に起きる子どもの割合は変わらなかったが、午前6時に起きる割合が25%で、10年前(11%)より倍増した。
なぜ、「早寝早起き化」が進んだのか。調査研究の代表者、衛藤隆・日本子ども家庭総合研究所副所長(小児科医)は「今回の調査では、経済状況を反映してか、母親の就職割合が増えている。出勤時刻が決まっていれば親も夜遅くまで起きていられず、子どもも早く寝るようになったのでは」と推測する。
今月7日、東京都荒川区立汐入東小(羽中田彩記子校長)で、東京ベイ・浦安市川医療センター長の神山潤が、眠りについて学ぶ授業を聞いていた4〜6年の児童と保護者たちに「皆さんは毎日何時に寝ますか」と問いかけた。午後10時前後の子が多かったが、中には「0時過ぎ」に手を挙げる子もいた。
神山は、日本の小学5年生の平均就寝時刻(06年)は午後10時10分なのに対し、米国の小学4年生は同8時35分、中国は同9時で、日本の子どもの宵っ張りぶりを指摘した。「人は寝て食べて出して(排泄)初めて元気が出る。寝たいな、食べたいな、という身体の声をよく聞いてください」。
神山は医師や保育関係者らでつくる「子どもの早起きをすすめる会」の発起人。99年に自身が行なったアンケートや00年度の幼児健康度調査の結果に危機感をもち、01年に活動を始めた。全国の幼稚園や学校などで睡眠の他切さを説いて回っている。文部科学省も06年に「早寝早起き朝ご飯」運動を始めた。
神山は夜更かしが減った調査について「一部の家庭が頑張った結果だと思う」と話す。「最近でも、幼稚園や保育園の先生に聞くと、子どもが午前中から疲れていたり、ボーッとしていると感じる人が増えている。保護者の長時間労働やテレビやゲームなどメディアの影響で、子どもが眠りにくい環境にあることに目を向けるべきです」と。
鈴木みゆき・和洋女子大教授(保育学・睡眠学)も「規則正しい睡眠リズムが大切と考え実行する家庭と、意識の乏しい家庭に二極化している。生活するのがやっとの世帯もあり、経済格差の広がりが意識格差につながっている」と指摘する。鈴木が訪れた都心の高級住宅街にある幼稚園で、母親らに子どもの就寝時間を尋ねたところ、「午後8時」が9割を占めたという。
「夜更かしがそんなに減ったとは」。東京都杉並区の区立保育園の所沢文江園長は調査結果を聞いて少し意外な感じがしたという。「確かに、少子化で保護者のお子さんへの高まっていると感じる。例えば子どもの歯もきれいに磨かれていて、健診で歯科医にほめられる。健康へのこだわりが早寝早起きにつながったのでは」と推測。「朝早く登園する子が増えている。早朝に仕事や習い事をする朝活の影響か、朝の出勤が早まって子も早起きになったのかも」とも話した。
夜更かしはなぜよくないのか。夜間に長時間光を浴び続けたり、朝の光を十分に浴びないと、体内リズムが乱れる。心を穏やかにする脳内物質の分泌を抑えたり、性的成熟が早まる可能性もある。睡眠不足が肥満をもたらすという研究報告も増えている。鈴木教授は、こうした科学的裏付けが広まったことが、早寝早起きを浸透させた一因とみている。
《10年前に比べて夜更かしの子どもが大幅に減ったというが、00年の状況が異常過ぎるだけで、20年前と比べれば4〜5、6歳では逆に増えている傾向がみられるほどだ。この10年前の異常値の背景を考えてみる方がグラフを読む上では興味がある。2000年といえば、世の中は、携帯電話の開発の話題で沸騰していた時期で、1997年にEメールが開発され、1999年には世界初のカメラ付き携帯(PHS)、2001年の写メールのキャンペーンが始まる直前の賑わいだったのだ。大人たちが我先にこれに飛びつき、我を忘れて手に取っていたのだ。今でもそうだが、居場所確認の口実で子どもに持たせることで一安心の携帯は、親のある種育児責任の回避になっているほどだから、発売当初のブームに踊った大人たちには、子どもの早寝早起きのことなど眼中になかったろう。》
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