日本女性の育休率、83・7%というけれど
毎日新聞(9/30)“私の社会保障論”から、
日本女性の育児休業率は普通に83・7%と思っていたが、中央大教授・山田昌弘の記事「育休制度の根本的改正を」を読んで、83・7という数字、参考になることが幾つかあった。
ある子どもを持つフリーライターの女性が、育児休業を利用してキャリアを継続していた女性を取材したという。キャリア女性は、育児休業中も企業の配慮で常にメールで連絡し合い。復帰後、キャリアの継続に何の支障もなかったと語ったそうだ。ライターは話しを聞いていて、雲の上の話しに聞こえたという。彼女はフリーなので育児休業とは無縁、仕事を休んで給付金が出るわけではない。仕事を回してもらえなくなる不安から、無理して子連れで取材に行き、子どもを寝かしつけた間に記事を書いた。それでも、育休取得の正社員の給付金より少ない額しか稼げない。育休取得者は別世界に住む人だと思った、という。
日本の女性の育児休業率は、2010年度でも83・7%と高率である。しかし、この数字は誤解を招きやすい。なぜなら、統計の「分母」が極めて限定されているからだ。出産時に仕事をしていない専業主婦(出産女性の約4割)、仕事を継続していても雇用保険未加入の非正規雇用やパート、そして、冒頭の彼女のようにフリーランスや自営業従事の女性は、そもそも育児休業をとる選択肢はない。出産する女性の中で、育休取得という選択肢がある人は半分もいない。その中でも出産で仕事を辞めた人や職場を変えた人(出産女性の約4割)も母数に入らない。出産時に正規雇用を同一職場で継続している女性が分母だから、女性の育休取得率は高率なのだ。
育児中に収入の5割とはいえ給付金をもらえ、職場復帰まで保障されている育休取得者は、正社員や公務員の特権のようなもので、出産女性の2割未満である(育休取得女性の実数は未公表)。これを8割の高率と喜んではいけないのだ。日本では、子どもを産み育てる女性の大多数にとって、育児休業は無縁の制度なのである。そして、育休取得女性がこれほど少ない国は日本くらいなものである。
ヨーロッパではパートタイムは勿論、フリーランスでも育児休業給付が出る国が多い。育児休業を、雇用形態によって取れたり取れなかったりすることは「差別」だと意識されているからだ。近年、制度を改正したイタリアなどでは、自営業の家族従業者でも、育児で仕事を休んだ期間、休業給付金が出る。オーストラリアでは今年から、出産で仕事を辞めた女性へも最低賃金相当額の給付金が出るようになった。
《学者の話しにはまたまた、羨ましげに表面的な数字が並び、ヨーロッパだの海外だのの例が出てくる。外国がそうだから、日本もそうすることが望ましい、のような論調になるのだ。》
《山田が挙げるように、休業しても手厚い給付金が出せる国には、その国の人たちの高い税の負担があるからだ。一例を挙げれば
消費税 食料品の消費税
日 本 5 % ー
フランス 19・6% 5・5%
イタリア 20・0% 10・0%
イギリス 17・5% 0
また、 所得税では、 所得課税(所得税+住民税等)は
(最低税率) (最高税率)
日本 5% 50%
米国 10% 45%
ドイツ 15% 47%
英国 20% 40% などだ。》
厚生労働省の担当者は、対象者を広げる努力をしているという。しかし、パート労働者に多少広がっても、仕事を辞めた女性やフリーや自営業従事の女性には届かない。やはり、育児休業制度は根本的に変えなければ、普遍的な子育て支援とはいえないのである。
【育児休業給付金】
雇用保険制度に基づき、基本的には子が1歳になるまで、両親とも育児休業を取る場合は1歳2カ月になるまで受給できる。雇用保険法改正で、昨年4月からは休業する直前の月給の5割が給付されることになった。
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