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2011年9月 2日 (金)

男性の育休が進まないわけ

 毎日新聞(9/2)“私の社会保障論” から、
 副題に「妻が高収入でないと取れない」として、中央大教授・山田昌弘が記している。

 イクメンという言葉が定着し、男性の育児参加が求められている。そして、育児・愛護休業法も男性が取得しやすい方向に改正され、昨年施行された。それにもかかわらず、2010年度の育児休業取得率は1・38%と、09年度の1・72%に比べて大幅に戻ってしまった。制度が周知されていないとか、職場の理解がないのが問題といわれるが、果たしてそれが主因だろうか?。

《制度が周知されていないとか、職場の理解云々・・・、など論外だろう。最近の「イクジイ」を取り上げたとき触れたが、のっぺり「イケメン」に代表される軽佻浮薄なカタカナ文字で流行を誘おうとしても、そんな言葉に踊らされてイソイソと生まれたばかりの子の育児に励む男はそうはいまい。それよりももっと根本的な問題として、男性が育児をしなければならない決定的な理由はどこにあるのだろうか。保育所が足りない、待機児童が増加、最も足りないのは0歳〜2歳児だという。だが、乳飲み子を母親が育てないで他人に預けることがそんなにいいことか。母親の愛情を受けずに育つ子が、やがては情緒不安定な子になり学級崩壊などの問題児になるのだ。この時期の育児に、男性が1カ月2カ月のちょいの間手を出すだけでは母親の代わりにはなり得ない。これまで何度もいってきたように、男性は、赤児が母親の手を離れるころから、1年でも2年でも、世にいわれる「三つ子の魂百まで」の情操教育をみっちりと叩き込めばいいのだ。》

 以前、男性の育児休業を巡るシンポジウムに出席したとき、登壇者の育児休業取得男性に妻の仕事を聞いてみたら、1人は研究職の医師、もう1人は専門職の正社員であった。後者は妻の方が収入が多いから私が取った、と答えた。体験談はすばらしかったが、妻が高収入の正社員だから生活費の心配をせずに取得できたのだとつい思ってしまった。

《ここに出てくる育休者は、育休期間が不明だが、1年だろうか,2年だろうか、それにしても授乳はどうしているのだろう。男では乳房を含ませるわけにはいかない。同じ哺乳瓶で与えても男では子どもが10月10日過ごした母親の胎内で聞いていた胸の鼓動は聞こえない。授乳期の子どもにとって特に大事なのは、母親の肌の温もりなのだ。私が新生児から2,3歳ごろまでは母親が育てるのが当然、というのはそれが理由だ。男ではその時期の育児は代われない。》

 育児休業中の給付金は、直前の平均賃金の50%だ(上限あり)。そもそも子育て期の父親は、若くてまだまだ給料は低い。ただでさえ子どもが生まれて物入りなのに、夫の収入が半分になっても人並みに暮らせるのは、妻が正社員、それも相当な収入がある場合に限られるだろう。

日本では、乳児を持つ夫婦の共働き率は約3割と低いうえ、うち半分はパートなどの非正規雇用者で収入が低い。大多数の夫婦では、夫が育児休業を取得して収入が半分になれば、生活に支障を来すことは目に見えている。

《昔の長屋生活に戻れとはいわないが、昔と比べても、普通に暮らしている人たちの水準は、決して低いとはいえない。物が豊富にある生活が普通になっているが、あるから便利に思うだけで、なくても不便するものはそんなにはない。節約は至るところで可能だ。「妻の高収入」は学者の単なる言い訳だ。》

 【育児休業制度】
 育児・介護休業法で義務づけられ、従業員は事業主に申し出ることで、子どもが1歳になるまで休むことができる。昨年6月の法改正で「パパ・ママ育休プラス」が設けられ、両親共に取得する場合は1歳2カ月になるまでの間に1年間休めることになった。雇用保険加入の非正規雇用者(有期契約労働者)も有給を取得できる。

 男性の育児休業が70%台と高いスウェーデンの給付率は80%、欧州では100%の国もある。(取得日数で割合は変動)。男性の育児休業率を高めるには、周知や理解は勿論、男女共同参画を推進してフルタイムの共働き率を増やすこと、そして、給付率を高め、せめて80%にすることは不可欠だ。厚生労働相の担当者に聞くと、「雇用保険」という枠組みがあるのでこれ以上は無理、と言われてしまった。つまり、育児休業者は「みなし失業者」なのだ。

《わが国は大きな打ち出の小槌でも持ち合わせているような思考で言う。またまた学者の理論だ。昨日のブログ「子ども手当」でも同じことを書いた。大前提になる源資には頬かむりで、他国の施策を羨やましそうに書き連ねる。それらの国は、国民の高額納税があるために政府は高福祉政策が展開でき、労働者の育児休業取得率も高く、給付率も高くできるのだが、その理屈の説明をしないままだ。そして我田引水でつぎのように結論を出す。》

 それなら、10年度に男性の育児休業率が低下した理由はよく分かる、と。制度の周知は進んだが、リーマン・ショック後の不況が続き、若い現役世代を直撃して、子育て期の夫婦の収入が悪化したのだ。そのうえ、子ども手当は満額どころか廃止されることに。子育てへの経済的サポートがない中で、収入を半減させてまで育児休業を取ろうとする男性がどれだけ増えるだろうか。

 育児休業を取得したいという若い男性は相当増えている。しかし、ただ取れと言っても、先立つものは生活費である。育児休業を雇用保険から切り離し、100%に近い数字で所得保障すれば、経済的に安心して取得できるだろう。それが、少子化対策に結びつくことは間違いない。

《驚くほど楽観的に結論を出す人だ。自分の学説通りにすれば、そうなる、と。》

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