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2011年8月20日 (土)

天竜下り転覆事故

 天竜下りと聞けば、市丸が歌った「天竜下れば」を思い出す。本来は山から切り出した原木を藤蔓を使って筏に組み、下流まで運び下る作業を歌った労働歌だが、市丸が歌うと川下りの涼しい風物詩となった。その天竜川を、今では木造船が多勢の観光客を乗せて、短い距離で涼を売り物に商売をしている。そんなところで今度の事故が発生した。メディアは格好の餌に飛びついて、袋だたきにしようと記事にし始めた。現在の川下りの事業を初めておよそ60年、これまで1度も発生しなかったという安全な乗物であったがための油断を責める。

 毎日新聞は社説(8/19)まで書いた。「もしもへの備えが必要」と。
 浜松市の天竜川で川下りの船が転覆し、船頭と乗客23人が川に流され、死者・行方不明者は5人にのぼった。天竜下りは、6キロの区間を小型の木造船で約50分かけて下るもので、観光コースになっている。

 事故当時は好天で強風もなく、水量も多くはなかった。ただし、転覆現場付近は流れが急な難所だった。経験の浅くはない船頭が乗りながら、なぜ転覆という最悪の結果になったのか。船を運航する天竜浜名湖鉄道側は18日の会見で「渦に舵を取られてしまったのではないか」との見方を示した。

 国土交通省運輸安全委員会は、事故調査官を派遣し、事故原因の調査を始めた。川下りは全国各地で行なわれている。しっかり原因を解明して今後に生かさねばならない。

 それにしても、乗客の安全を確保できなかったのは残念だ。船には救命胴衣が備えられていたが、法律上着用の義務づけは12歳未満の子どもだけだ。運航会社は、「12歳以上の乗客にも着用させるように努める」との規定を作っていたが、大人の乗客の相当数は身につけていなかったようだ。船頭は日頃から乗客に着用を促していたのか。また、運航会社は船頭を指導していたのか。着用実績が無ければ規定はないに等しい。

 子どもの多くも胴衣を着けていなかったという。杜撰な対応と言わざるを得ない。

《後になって落ち度を数え上げることは易しい。乗客の乗船に当たって船頭は、大人には「暑いから救命胴衣は着けなくてもいいですよ」と説明していたという。救命胴衣の着用実績がなければ規定はないに等しいというのは、たしかにその通りだが、決められた規定が守られていないものは世の中に数え上げれば切りがないほど存在する。子どもの命がかかわる道路交通規則をみても、信号無視、スピード違反、チャイルドシート未着用(これなど50%に満たない実績だ)に、規定はないに等しいと言い捨てるだけでいいのか。攻撃するだけの記事こそ杜撰というべきではないか。》

 舵取りなど操船の指導や救助態勢が十分だったのかも含め、問われるのは運航会社側の日頃の管理体制だ。静岡県警は業務上過失致死容疑で運航会社の捜索に乗り出した。しっかり捜査してもらいたい。

《一方で、全国で、チャイルドシート未着用率5割以上に対して、交通法規を守らせなければならない警察側の、杜撰すぎる指導・取締りをメディアは口を封じて見過ごしているのだ。》

 国交省は18日になって、すべての乗船客への救命胴衣着用を義務づけることを決め、全国の川下り事業者に対して指導すると発表したが、遅きに失した感は否めない。

《起きてみなければ対応できないことがあってもおかしくはない。60年間何事もなければ努力目標レベルの注意や心がけで十分だったのだろう。しかし、そこにメディアが指摘する油断があったことは否定できないが。》

 座布団状の救命クッションなどで代用している例も少なくないようだが、いざ転覆した場合、手にする余裕はないだろう。泳ぐことができない乳幼児が川下りの船に乗っていた点も課題を残した。一義的には親の判断だが、運航会社も乗船年齢について一定のルールを検討してもらいたい。

 増水すれば砂が削り取られるなど川の地形は日々変化するともいわれる。自然が相手だ。同じ状況で毎日運行できるわけではないだろう。いざという時にどう人命を救うかが最も肝心な点だ。全国の川下り運航会社には、事故の教訓を受け止めてもらいたい。また、利用する側も危険と背中合わせのレジャーだと改めて認識したい。

《亡くなった人たちには惨いことだが、この事故を他山の石として、人命を守るための対策、具体的な法整備を講じてほしい。》

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