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2011年8月10日 (水)

高齢者医療

 毎日新聞(8/10)から、
 《そろそろ80歳が目の前にきた。これまで医者にかかった数を指折れば、自覚できる年齢以降、記憶しているところでは(幼少時に麻疹は経験したが自覚なし。1病名1件として)片手の指でこと足りる。遮二無二働いた若いころから納め続けた健康保健料はどれだけの額になるだろうか。これらの殆どは老若男女の身体の弱い人たちの治療費の助けになっていることだから、考えてみれば多くの人助けをしてきたことにはなっている。高齢者医療費が問題になるたびに、なぜ、そうまで老人に金がかかるのか、長寿に比例するかのように嵩む医療費が腹立たしくもある。生まれてこのかた、大怪我せず病気に罹らず、自分自身が使わない掛け捨てのような保険料が恨めしくなる反面、虚弱児ながら将来に亙っては長持ちする身体に産んでくれた亡き両親に感謝している。いずれは己も年老いることを考えないで、年寄りを疎ましく思う若者にも、団塊の世代が積み重ねてきた保険料で治療を受けた若者も多くいようし、保険料を納めるだけで己は治療を受ける必要もなく、或いは機会もなく亡くなって行った先輩たちのいることも忘れてはならない。》

 75歳以上の高齢者を対象に、08年4月に始まった後期高齢者医療制度は、「後期」という名称や、年金からの保険料天引きなどが年寄りのも猛反発を買い、「うば捨て山」などと批判された。制度廃止を訴えていた民主党は政権交替後すぐに新制度作りに着手し、厚生労働省は昨年末に改革案をまとめた。しかし、野党側の賛成が見込めず、実現の見通しは立っていない。

《未納問題が顕著化している現在、なけなしの年金から奪うように天引きで取り上げるものには、私の場合、介護保険料、後期高齢者医療保険料、所得税、個人住民税など年間合計およそ43万円ほどにもなる。生活が苦しいからと、未納、滞納を同情してもらえる人たちが羨ましくなる。》

 後期医療を導入した背景には、高齢化や医療の高度化による高齢者医療費の膨張がある。厚労省によると、高齢者の医療費は97年には10兆円を突破し、08年度は11兆4000億円だった。「高齢者医療」の対象年齢は03年9月までは70歳だったが、同10月から1歳ずつ引き上げられ、07年10月から75歳と対象が狭められている。それでも厚労省の推計では、団塊の世代がすべて75歳以上となる25年度には高齢者医療費が24兆円」を超え、国民全体の医療費に占める割合が46・1%(08年度は32・8%)に達する見通しだ。

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 後期医療導入前は、高齢者は現役世代と同じ市町村の国民健康保険(国保)や企業の健康保険組合(健保組合)といった医療保険に加入し、高齢者医療費は各医療保険の拠出金と税金で賄っていた。しかし、これでは高齢者の少ない健保組合に取っては「持ち出し」が多くなり、「現役世代の負担がどこまで増えるのか分からない」との不満が強まった。

 そこで75歳以上を後期医療という別制度とした。高齢者の保険料(1割)と税金(5割)、現役世代からの支援金(4割)で賄う仕組みとし、高齢者と現役世代の負担割合を明確にした。保険料を都道府県別にして地域の医療費が増えれば当該地域の保険料もアップする仕組みを取り入れ、年寄りや自治体に医療費抑制の意識を持ってもらうようにした。

 ところが、制度が始まると、子の扶養を受けて保険料を払っていなかった高齢者も負担を求められ、年金からの天引きで一層の「負担増」を実感することになる。しかも、「後期高齢者」という名称が「人生の最後」をイメージさせたり、家族と保険証が別にされるなど差別的と感じられる取り扱いが不満を増幅させた。

 そして政権交替後の09年11月から1年にわたる議論の末、厚労省は昨年末に新制度案を発表した。後期医療は廃止し、無職や自営業の人は国保に、働き続けている人や扶養を受けている人は健保組合などに戻るなどの内容だ。

 ただし、国保に戻る75歳以上の人の保険財政は、現役世代とは別に都道府県単位で運営する。というのも、75歳未満の1人当たり医療費が18・6万円(08年度)なのに対し、75歳以上は86・5万円(同)。小さな市町村で高齢者が一気に加入すると、財政が立ち行かなくなるためだ。高齢者本人、現役世代、税金の費用負担割合は今と変わらない。

 年寄りへの配慮も盛り込まれた。高齢者の保険料が現役よりも伸び率が大きくなる今の仕組みは改められる。扶養を受ける高齢者の保険料はなくする。ただ、こうした配慮は結局、現役に負担を廻すことになる。また、子の扶養を受ける高齢者は比較的恵まれた人も多く、高齢世代内の公平性を損なうとの指摘もある。

《高齢世代内の公平性で言えば、70歳を過ぎて10年間に限っても、1円の医療費もかかっていない私のような高齢者は、利息も返って来ないこの制度、どう考えればいいのか。》

 政府は新制度の13年度施行に向け、秋の臨時国会までの法案成立を目指している。しかし、財政責任を負うようになる都道府県側は納得していない。「年齢による線引き」は新制度案でも変わらないため、自民、公明両党も「制度変更の必要性は認められない」と反対している。政権交替の大きな原動力となっただけに、感情的な反発も《国政が下らない感情で左右されては国民はたまったものではない》根深いようだ。

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