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2011年7月26日 (火)

放射能デマ

 毎日新聞(7/26)『月刊ネット時評』フリーライター・赤木智弘 から、
 《大震災に続いた原発事故の発生は、何事も自分で判断することに慣れない人たちを右に左に走らせ、それこそ烏合の衆のような混乱を生み、関東近県ではミネラル水の買い占めを筆頭に狂騒の世相を生み、4カ月以上が経った現在も、ネット上でも震災の話題が尽きることのない状態が続いている。》

 特に放射線の健康被害の問題に関心が高く、いまだに話題の中心である。

 政府や科学者たちは「ただちに健康に影響のあるものではない」などとして、原発事故による放射線の身体への影響は非常に小さいことを科学的根拠を盾に主張してきたが、ネット上ではそれを「安全デマ」として、主張する学者を「御用学者だ!」と揶揄したり「真実を知らない」などと冷笑するスタンスを取る人が少なくない。

《ネット上によく見られる日本を代表するメディアの何社かを「サヨク」、「御用」呼ばわりする人たちがいるのと同じだ。》

 彼らの間では、自家製の味噌や、有用とされる菌類、特殊な水や米のとぎ汁などが、放射性物質を体内から排出したり、無害にするなどという不確かな言説が飛び交っており、真っ当な科学的見地は、蚊帳の外に置かれてしまっている。

 なぜ、ネットでは科学者の意見が素直に伝わらないのだろうか。

 いくつか理由は考えられるが、ネットの世界は、ネットの外と比べて、現実の権力や地位と関係なく、人々が対等な立場に立てることがあげられる。垣根がないおかげで、相互理解が進むという利点がある一方、十分な研究実績をもった科学者が語る科学的根拠と、単に声の大きい人が語る根拠なき想像が、その言説が持つ現実の権力や地位を無視して、横一線に並んでしまう欠点もある。

 ネットには多くの情報が溢れており、その全域を過不足なく見渡せば、私たちは様々な意見を酌み取れる。だが、情報が多い分、反対意見を無視して自分好みの情報のみを見続けることもできてしまう。そうした仕組みに、科学者の意見が素直に伝わらない要因の一部がある。

《群集心理とはそういうもので、韓流映画にはまるのも、自分の好きなタレント以外は聞く耳持たなくなるのも、好みの音楽ジャンルが決まるのも、読書の好みも、多くの情報の中から自分の好みに心地よいものの取捨選択の結果といえる。逆に、これをうまく操作するのがメディアの世論操作ともいわれる選挙戦や、政権支持率、学校・教師攻撃、東電攻撃などになる。》

 怪しげな情報を支持する人たちに「子どもを持つ親」が多いということに驚く。親たちが政府や科学者の一方的な安全宣言に違和感を持つのは当然だとしても、なぜそれが怪しげな健康情報に飛びつくことにつながるのか。

 これらの健康情報を提供する人たちは、不安な親たちに向けて「放射能は恐ろしいけれども、親が頑張れば子どもを守れますよ」と、自尊心をくすぐる。しかいS、親たちの親権な気持ちと裏腹に、健康情報の現実は散々である。何の効果も見出せないだけならまだしも、子どもたちの健康を脅かしかねない。

 鼻血や下痢などを放射線の影響だと思い込んで医者に見せても、普通の医者であれば、そんな診断は下さない。親がそれで納得すればいいが、「放射線の被害のはず。現代医学は信頼できない」と思い込み、子どもが病気になっても医者に連れて行かなくなってしまうかもしれない。

 また、こうした健康情報自体が、健康被害を生み出す危険性も高い。怪しげな健康情報の一つに「4,5日発酵させた米のとぎ汁を部屋にスプレーしたり、子どもに飲ませたりすれば、放射性物質を無害化できる」というものがある。しかし、米のとぎ汁を使っている人たちのネットの書き込みの多くには、家族や子どもが下痢や発熱を起こしたり、咳き込んでいるとある。

《子どもが宝の親たちに、このような危険な情報を流し、もしものことでもあれば(すでに下痢、発熱、咳き込み症状が出ている)、原発の放射能被害の上に重ねてデマ被害を与えていることになり、許し難い犯罪といえる。しかし親が、雑菌混じりの腐敗させたものを子ども(大人でも同じだ)に飲ませて良いものか悪いものかの判断さえ失っていることも信じられないが、「溺れるもの藁をも掴む」の心境なんだろうか。》

 普通に考えれば、とぎ汁の腐敗やカビの発生が疑われる。だが、親たちは「これは悪いものが出て行った好転反応である」と納得したり、「体調が悪いのは放射線の影響だ」として、自分たちが飲ませた「4,5日室温で放置された雑菌まみれの米のとぎ汁」こそ下痢や発熱の原因だとは夢にも思っていないようである。

《原発がらみではなく通常の状況であれば、病状が悪化しても腐ったものを飲んだのだから、事業自得で済まされようが、そうはいかないのが今回の間違った情報を流している人間がいることだ。》

 子どもを守るのだと一生懸命な親が、却って子どもの健康を危険に陥れている様子に、書き込みを読みながら、なんともやりきれない思いがした。

 怪しげな健康情報を真に受け、御用だデマだと非難する前に、科学者がそう発言するだけの根拠を読み解くことが、本当に子どもを守るために必要ではないだろうか。

《情報過多の現代社会だ。自分の力で情報の取捨選択がでるようにならなければ、パソコンや携帯が使え、インターネットが利用できても、生きて行くためには宝の持ち腐れでしかない。》

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