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2011年3月31日 (木)

地震酔い

            スイセン
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 毎日新聞(3/31)から、
 東日本大震災の発生後、地震が起きていない時でも揺れを感じたり、そのせいでめまいや吐き気を訴える人が各地で現れ始めている。余震に怯え、避難所の慣れない環境で不眠に陥る被災者も少なくない。なぜこうした症状が起き、どう対処すべきだろうか。

 「震災以来いつも身体が揺れているようだ」。栃木県のある診療所で70台の女性が訴えた。余震が心配で熟睡できなくなったといい、血圧も上昇した。この女性の症状は、震災をきっかけに多くの人に起きた心身の変調を、象徴的に示しているものだ。

《直接大震災の被害を受け、避難所で怯えながら苦しい生活を強いられている人たちの心労を察するにあまりあるが、その後近県にもしばしば起きる余震は、やはり似たような変調を引き起こしている。子どもの頃から揺れには特に弱く、子どもなら誰でも喜ぶブランコでさえ、座って一揺れしただけで吐き気がしたり、実際に嘔吐までするような体質の私には、以来、繰り返し来る大小の余震は、立っていても座っていても、布団に入って横になっていても舟に乗っているように常にゆらゆらと身体が揺らいでいる感覚に襲われている。学者によれば、余震は半年かそれ以上長い間続くだろうとの予測があるが、80歳近い身体にはとても辛いことだ。》

 病院検索サイト運営の「QLife」が今月末に行なった調査(有効回答252人)によると、震災で心因的に症状が悪化した人の症例は、不眠(32%)、めまい・浮遊感(22%)、血圧上昇(14%)の順に多かった。

 女性が訴えた感覚は「地震酔い」や「後揺れ症候群」と呼ばれ、大抵は地震直後の数分間から長くても2日程度で治まる。メカニズムは完全には解明されておらず、めまいが専門の肥塚泉・聖マリアンナ医科大教授は「病気というよりは生理的な反応に近い」と話す。

 人間は平衡感覚をつかさどる三半規管や、両足の裏で感じ取る加重バランス、視覚などからの情報を総合し、無意識に「今が平常」という感覚を掴んでいる。また脳には、自分が直前に体験した動きや回転の情報を残しておく機能がある。それらが大地震で揺さぶられて狂い、地震酔いに結びついているとみられる。「こうした機能は通常、時間が経てば元に戻るが、今回は余震が立て続けに起きているため治まらない」と教授はいう。

 人間の脳は本来、不必要な情報を無視できるようになっている。しかし今は意識が地震から離れられず、異常な感覚を助長してしまっているらしい。「深呼吸でも体操でもいいから、自分に合った方法でリラックスするのが一番」と教授はアドバイスする。

 横浜中央クリニックめまいメニエール病センターにも大震災の後「寝ても座ってもずっと揺れているように感じる」と訴える患者が訪れている。センター長の高橋医師は「軽い下船病ではないか」とみる。船や飛行機に長時間乗っていた人が、地面に降りた後も揺れを感じるところから付いた病名だ。高橋医師はこれまで、水族館でシャチに乗る調教師や高速エレベーターの乗降を繰り返す清掃員、揺れやすいマンションの居住者らを診てきた。

 重症化すると頭痛や吐き気がして本が読めなくなったり、目を閉じると歩けないほど身体が揺れてしまう人もいる。根本的な治療法はない。今は難しいが、揺れのない環境に身を置くのが最善の策だ。高橋医師は「重症化するのはごくまれ。心配しすぎる必要はないが、余震が治まった後も症状が一カ月以上続くなら受診した方がいい」と話す。

《「下船病」か。汽車の旅では長旅の乗車(短くて3時間、長距離だと8時間、10時間)の都度味わっていた。駅に降り立つと、身体が揺れ、景色が揺れ、まっすぐに歩けない。1〜2日は気分の悪い日が続いていた。しかし、乗り物酔いとはそういうもんだということで子どもの時から現在まで、一度も医者にかかったことはない。自分の車を持って運転するまで、タクシーにしろバスにしろ、車に乗れば1、2分もすれば必ず酔った。船も含めて酔い止めか睡眠薬が欠かせなかった。》

 被災地では不眠に悩む人が少なくない。「また津波がくるんじゃないか」。宮城県石巻市で避難生活を送っている女性(53)は深夜、真っ暗な教室で余震を感じると、怖くて眠れなくなる。配給された睡眠薬を飲んでも、夜中に目が覚める。「ここにいたらおかしくなってしまいそう。けれど、ほかに行ける場所はない」。ストレスはもう限界だ。4カ月前にやめたたばこが手放せなくなった。

 大震災から3週間。不眠への対処法はこの時期から大きく変わってくる。国立精神・神経医療研究センターの栗山医師(睡眠学)は「震災から2週間ぐらいは、大きな余震やきた時にすぐ逃げ出せるように防御本能で脳が覚醒している。その時期に眠れないのは正常だ」。不眠が一カ月以上続き、不安感,悪夢、強い倦怠感を伴えば治療が必要なこともある。

《震源地からは遠く離れた埼玉でも、私の場合、確かに睡眠時間が一晩で2時間以上は短くなった。今まで「年寄りの早起き」は私には無関係なほどよく眠っていた。ただ、不眠とは言えず、3,4時間の短い時間だが熟睡できている。でも、そのせいか今まで味わったことがなかった身体のだるさ、倦怠感がある。》
 
 ストレスを減らすことが重要だが、被災地では簡単ではない。栗山医師は「医師がいれば受診し、いなければ知人と悩みを打ち明け合う。避難所に仕切り板を立てるのも有効。周囲の目に曝されないだけでもストレスは減る」とアドバイスする。また朝は外に出て光を浴びることが求められる。眠りを誘うメラトニンというホルモンが約半日後に分泌されるためだ。

《報道では各避難所で、仕切り板は不自由ながらも工夫しながら立てているのを散見できる。》

 睡眠リズムを崩すが、日中の仮眠が有効な場合もあるという。夜に比べ昼間は眠れなくてもプレッシャーになりにくく、「眠れた」という自信を積み重ねやすいからだ。

 長引く不眠は高血圧を悪化させ、免疫機能を低下させる。鬱病を引き起こすこともある。栗山医師は「心身の健康を保つには休養が大切。日の光を浴びたり昼寝をするなど、できることを試してほしい」と話している。

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