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2010年12月 1日 (水)

年金の財源不足

 毎日新聞(12/1)『社説』から、
 突然起きた危機ではない。消費税引き上げ論議を避けてきた政治家の先送り体質が招いたものだ。その場しのぎの財源が底を尽き、基礎年金の国庫負担率50%が来年度は維持できなくなる見通しとなった。責任は与野党ともにある。これまでの無策を猛省し、社会保障制度の抜本改革と安定財源確保に全力を挙げなければならない。

《猛省しなければならないのは、ひとり政治家だけではない。メディアが危機は突然起きたものではないことが分っていたのなら、もっと早くに問題指摘と対応を取り上げるべきだったろう。政治家が票数だけを数えて党利党略に走っていたというのなら、それを糾し、所得税引き上げに論陣をはるべきだったろう。権力におもね、傍観しているのがメディアではあるまい。私は高福祉を羨ましがるだけのレポートや学者たちの論文のまやかしについても取り上げてきた。浅学素人の私でさえ、消費税引き上げの必要性は3,4年も前からこのブログでも書いてきた。》

 基礎年金の給付費は保険料と国庫(税金)で支えられている。少子高齢化が進めば現役世代の保険料負担が重くなることから、2004年の年金制度改革で09年度までに国庫負担率を5割に引き上げることが決まった。消費税増税などで安定財源を得ることが前提になっていた。

 ところが、当時の自公政権は財源の改革を先送りする一方、国庫負担率は、36・5%から50%に引き上げた。財源不足は、財政投融資特別会計の積立金という埋蔵金に頼った。

 その埋蔵金も底を尽き、50%の国庫負担を続けようとすれば、11年度は約2・5兆円が不足するという。国債の増発による穴埋めは、新規発行額を10年度並みの44兆円以内に抑えるという閣議決定があるため容易ではない。

 そこで財務種が提起しているのが、安定財源確保までいったん36・5%に戻す案だ。ただ、保険料や給付金に影響が及ばないよう年金特別会計の積立金を取り崩して穴埋めするのだという。取り崩した分は、消費税増税後に補填するから問題ないとの理屈らしい。

 しかし、積立金は将来の年金給付に充てる貴重な財源だ。新しい制度や財源確保の展望もないまま、「後で返すから」と手を付けることは非常に危険である。後で何とかするという無責任な発想の結末が今の事態であることを忘れてはならない。積み立て金の取り崩しが何年も続くようだと年金制度への信頼が決定的に揺らぎ、成り立たなくなる恐れさえある。

《過去の無策は、「後でなんとかする」ではなく「後は何とかなる」だった。今回は過去の反省からで、少なくとも先の轍を踏むことではないことに期待するよりない。》

 国庫負担率の引き下げは、11年度予編成にからみ、財務省と厚生労働省の間で議論されているが、日本の将来にかかわる大きな問題だ。2省庁間で決着を図るような話ではない。菅政権が最優先で取り組むべき課題なのだ。

 年金制度の抜本改革を唱えながら政権交替を果たした民主党である。野党に協力を呼び掛ける前に、まず自分たちがどのような制度をいつ実施したいのか、一刻も早く具体的な計画をまとめる責任がある。自民、公明両党も、自らの無責任が引き起こした危機だということを十分認識しなければいけない。

 団塊世代への年金給付が間もなく本格化する。政治の駆け引きに時間とエネルギーを浪費している余裕などないはずだ。

《最近の国会中継をみていると、小学生のクラス会でもこれよりはマシと思えるような低次元の応酬で、こんな人間を選んだのも国民か、の思いもあって、無駄に時間が流れていく。》

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