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2010年12月17日 (金)

硫黄島遺骨収集

 毎日新聞(12/16)『「社説」国の責務として推進を』から、
 《何を今更、としか言いようがない。メディアは戦争協力した過去がなかったかのような書き方をする。その協力に対して総括を何もしないままでだ。すくなくとも、戦争賛美に走った過去を清算していればまだしもだが、口を拭って現在まで碌な反省もない。せめて敗戦後半世紀を越える時間の中で、メディアは外地戦場での「戦没者遺骨収集」推進のキャンペーンでも行なっておれば、「国の責務として」と大口をたたくのもいいが、国もまた、歴史を教えず、遺骨収集には途中放棄したように、60年以上経っても遅々として作業は進んでいない。》

 参照 硫黄島 06/11/18

 太平洋戦争の激戦地、硫黄島(東京都小笠原村)で戦死した日本兵の遺骨収集に菅直人首相が力を入れている。首相は現職首相として5年ぶりに同島を訪ね、現地の状況を刺殺した。

 戦後処理をめぐってはシベリア抑留者に特別給金を支払う特別措置法がようやく成立したが、同島や在外戦没者の遺骨収集も大きな残された課題だ。遺族の高齢化も進んでいる。与野党も後押しする形で収集作業を急いでほしい。

 硫黄島ではさきの大戦の末期には日米両軍の間で激しい戦闘が行なわれ、日本側はおよそ2万2000人が戦死した。米国から同島が返還されて以来遺骨の収集作業が行われ、これまでに8700柱以上が収集された。だが、なお約1万3000柱が残っている。

 首相は以前から同島での遺骨収集に強い関心を示し、首相就任間もない8月、政府による特命チームを発足させた。米国立公文書館から資料の提供を受け集団埋葬地とみられる区域2カ所を確認、調査や発掘を進めている。政府が調査を初めて以降、同地点で収容された遺骨は298柱にのぼる。

 首相は視察後の追悼式で「遺骨を家族の待つ地に返すのは国の責務。一粒一粒の砂まで確かめ、一人でも多く帰還できるよう全力を尽くす」と語った。政府が戦没者への弔意を示すうえで、遺骨収集は将(まさ)に基本的な行為だ。首相が「国の責務」と言い切る姿勢には賛成だ。

《メディアが遺骨収集について、今頃になって上から目線で論じる資格などない。国にもの申すのは、メディアの責務であったろうことを忘れるな。》

 首都・東京都にありながら遺骨収集がなかなか進まなかったのは埋葬地点の特定が難しいことに加え、関係する省庁による縦割りの弊害もあったとされる。政府は来年度予算案の概算要求に硫黄島の遺骨収集経費15・6億円を盛り込み、レーダー探査なども予定する。現在の自衛隊滑走路の下に遺骨が埋葬されている可能性も指摘されている。さまざまな情報を冷静に分析し、速やかに作業を進めてほしい。

《硫黄島の玉砕の後、米軍はサイパンと合流し、日本本土爆撃の基地とするため、従来の日本軍の基地を整備し、南方の島でも同様だったが、浜辺に散乱する日本軍の戦死者たちは砂浜に穴を掘り、かき集めるようにして放り込んだ。硫黄島も戦死者たちはブルドーザーで寄せ集め、或いは散らして滑走路の下に敷き詰めた。戦闘中に敵兵を、遺族を忖度して新聞が書くような「埋葬」などする訳がない。ただ片付ける作業だ。》

 遺族の高齢化が進む中、収集作業は時間との闘いでもある。沖縄と硫黄島を含む在外戦没者約240万人のうち、約114万人の遺骨がなお戦地に眠る。フィリピンで遺骨収集を委託されたNPO法人が集めた骨に現地のの人の遺骨がまざっている疑惑が指摘され、厚生労働省が検証に乗り出すなど、戦後65年を経ての作業は並大抵ではない。だが、決して放置できない課題として、政府は直視すべきではないか。

 首相の独り相撲に終わらぬよう、むしろ党派を越え、与野党が力を合わせるべきである。

《努力して故郷や同胞の地に戻ることができる遺骨があればまだいい。例えば私の母の実家のように、海戦で海の藻屑と消え、何の遺品もない人たちはただ、忘れろというだけなのだろうか。いずれにしてももう一度言っておこう「何を今更」。》

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