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2010年11月14日 (日)

公立校の不適切な授業はなぜ多発

 毎日新聞(11/03)から、
 「殺人」や「セクハラ」といった不適切な内容の試験や授業が各地で相次いで発覚した。常識では考えにくい授業を、まぜ先生はしてしまうのか。関係者の声を集めると、問題となった教員の資質だけでは片付けられない事情も浮かび上がる。

 〖最近の事例〗
 9月 愛知県岡崎市立小・男性教諭(45)=3年に
  「18人の子どもを1日3人ずつ殺すと何日で殺せるか」
  という割り算を出題。

 9月 山梨県韮崎市立小・男性教諭(48)=5年の
  道徳で、新聞の文字を切り抜き身代金を要求する
  内容の脅迫文を作らせた。

 10月 東京都杉並区立小・女性教諭(23)=3年の
  算数で「3姉妹の長女が自殺し葬式があった。葬式に
  来た男性に次女がもう1度会うには」と出題。
  「三女を殺す」が正解とした。

 10月 愛知県立高・男性教諭【24)=3年の
  中間試験で、校長を暗殺した犯人を実在の教諭から
  選ばせる問題を出題。

 10月 埼玉県入間市立小・男性教諭(59)=忘れ物
  をした6年に「恋人指切り」「ハグ」などの目が
  ある「セクハラサイコロ」を振らせた。

 公立学校で教員の指導が問題となった場合、どのような対応が取られるのか。教育公務員特例法の施行通知は「指導が不適切な教員」を、教科に関する専門的知識、技術が不足し、学習指導を適切に行なうことができない、児童の心を理解する能力や意欲に欠け、学級経営や生徒指導を適切に行なうことができない‥‥‥などと定義。これに当てはまると看做されれば、最長2年の「指導改善研修」を受けなければならない。

 「不適切」かどうかを認定するのは、その教員を任用した都道府県などの教育委員会。学校長などの申請があって初めて、その資質について問われることになる。

 上の表の教諭たちは、現時点で認定は受けていない。愛知県の高校と山梨県の教諭は、現在も教壇に立っている。一方、岡崎市の教諭は退職。残りの2人は地元教委による独自の研修を受けているという。

《どうやら表で取り上げられた先生たちは、映画や漫画の世界と現実の世の中の違いが解らないほどに決まりきった引用の引き出ししか持っていないようだ。早熟な子どもたちの注意を惹くためには、刺激的な言葉や例題で、ケータイ慣れした生徒の心理を引き寄せるために考えついた浅知恵だろう。日常茶飯事のようにテレビでは殺人や暴力、エロごとなど、本来お堅いニュースにさえ、途切れることなく報道され、大人も子どもも見るに飽きない事件が発生している。世代など越えて神経が麻痺してもおかしくない世の中になっている。》

 「どこでも起こりうることだと思う」。教員の問題発言や行動について、愛知県の公立小に勤める30代の男性教諭はそう話す。「若い教員ほど、お笑い番組のネタや芸能人の物まねといった教材以外のことに頼り勝ちになる」、子どもの興味を引こうと、テレビ番組などに頼る傾向があるというのだ。この手の問題が報じられると「すごいことをするね」「ばかなことをしたものだ」と同僚同士で話題になる。だが、経験や力量不足の教員が子どもを引きつけるには、お手軽なのだろうとも感じる。

《昔のように、事例の最初の問いに、リンゴが13個あります。1日に3個ずつ食べると何日でなくなりますか」と問うよりは、最近の子は殺人を例に取る方が、周りの状況に近く、いつも騒ぐ子も興味津々で食いつき易いだろうし、身近に感じて理解が速いかも知れない。》

 教員の力量、家庭の躾け、お笑い番組が氾濫する社会状況など、いくつかの要因が複合した結果だろうが、学校や教員の置かれた状況も問題の伏線にはありそうだ。

 問題が発覚した舞台は、いずれも公立学校だった。「私立校では起りにくい」と首都圏の私立中の女性教員、「教員の質を高めなければ経営が成り立たない、という意識を学校全体で共有しているからかもしれない」と言う。ある程度均質の生徒が集まる私立校と、多様な生徒が集まる公立校との違いもある。

《これは立派な偏見だ。まず「低所得層の子弟が通う公立」という大雑把な括りがあり、総じては知能指数は低く、粗野な人間の集まりと見下す。》

 京都府の公立中のベテラン男性教諭は、問題が多発する背景に、教員社会の変化もあると考えている。「それぞれが教室の問題や悩みを話し合い、学び合って解決する気風は年々薄れている。教育現場で『成果主義』が強調されるようになったからだろう」

《教育ほど成果がばらばらになるものはないだろう。同じことを同じ時間をかけて教えても、その結果は決して揃わない。「時間をかけて教えれば結果が出せた」と呟く教師がいるが、それは教師の傲慢でしかない。現在の教育現場に求められている「成果」とは何だろうか。》
           ---- つづく ---
 

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