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2010年11月16日 (火)

若者の海外旅行

 毎日新聞(11/15)から、
 「最近の若者は海外旅行に行かなくなった」と言われ、「背景には若い世代の内向き志向がある」と指摘する声が多い。そんな中で、山口誠・関西大准教授(メディア研究)の『ニッポンの海外旅行』が刊行された。世の中に流布する見方だけでなく、「海外旅行がなぜ若者に魅力がなくなったか」という側面から、旅の問題の本質を問いかけている。

 山口は1973年生まれ。ガイドブックやテレビの旅番組、旅行記などの変遷を切り口に社会学的なアプローチを行い、この本にまとめた。

 1980年代半ば以降、アジアを中心にした「海外貧乏旅行」が急速に広まり、リュックサックを背負った日本人のバックパッカー*が各国を闊歩した。しかし、20代の出国者は96年をピークに減少し、10年余り後には半減。この15年間で一体、何が起ったのか。

 《* -- バックパックはリュックサックのことをいい、
     これを背負って低予算で国外を個人旅行する
     旅行者のこと。》

 「96年を境に、風船が割れるように若者のバックパッカー文化が消えました。そして、食べて買い物してエステに行って終わり、という想像力を欠いた海外旅行が残った。なぜ、こんなに旅が消費化し、矮小化していったのかを考えたかったんです」と山口は語る。

 注目したのは、航空券と宿泊先のみを用意した格安スケルトン・ツアー**。バックパッカー全盛の80年代半ばに登場したこのツアーが、のちの旅を大きく変えていったという。短期間で効率よく各地を見て回るためのガイドブックが望まれ、76年に誕生した『地球の歩き方』にも消費情報が目立つようになった。と指摘する。

 《** -- 旅行の骨組み(スケルトン)になる、航空券、
      ホテル送迎つきで、あとはフリーのツアー 》

 「90年代に入ると、テレビも旅番組をやめていくんです。ロケにお金がかかりますから。テレビのなかの海外が貧相化、単一化して、多様性を失っていく。アフリカの奥地も韓国のミョンドンも、同じ海外になった」

 「96年には、お笑いコンビ「猿岩石」がバラエティー番組の企画でユーラシア大陸をヒッチハイクした。「彼らに憧れて旅に出た男の子たちもいるとは思うんですが、旅が見せ物になってしまった。彼らがやっていた旅はコピーのコピー。新しい旅の形を生み出さず、本当の意味での影響力はなかった」

 グルメやショッピングに特化するスケルトン・ツアーは、90年代後半から急増。自分で宿やチケットを手配するより割安で、その旅行形態に即したガイドブックはさらにカタログ化し、消費旅行の側面が強調された。

 旅先で人々の日常と接することはなく、値段の違いで国の違いを認識する。山口はこれを「歩かない」旅行と呼び、若者が海外旅行から離れていった一因とする。消費行動の一つの選択肢として画一化、商品化した旅行には若者を引きつける魅力がなくなった、というのだ。

 そして、旅先の歴史や文化に触れる新しい形の「歩く」旅を提案する。「ガイドブックというメディア自体が80〜90年代の形式かもしれない。今は、旅の文化と伴走したり、前に回ってペースメーカーになるような新しい形が求められています」

 旅行者の変容を3世代に分けて考察しているのも興味深い。日本のバックパッカー文化に一つの見方を与えてくれる。

《たしかに国内旅行にしても、温泉と美味いもの以外には何も目玉が無いでは、若者でなくても行きたくもない。また、最近の情報とビジュアル文化のなかでは、貧乏を忍んで国外へ冒険旅をするよりも、名に聞く海外の観光名所を始め、学術的な遺跡や建物や、見ようと思えばその国の生活様式、風俗までも手元にある機器で、表面的ながら触れたい時に触れ、行った気分になれることも、ブームの熱が冷める要因になっているのではないか。また、政情不安定な国も多く、そのような国には仕事でもなければ危険を犯してまで好き好んでいかなくてもいいことだ。》

《日本以外の海外に目を向けることもなかった私たち世代には、敗戦後の西洋史の授業は、カルチャーショックの連続だった。「いずれ自分の足でその地を踏みたい」の思いを抱いて復興に向けて昼夜働いた。若い時に旅行など思うことすらできなかった。やっと念願かなった時は既に頭には白いもの混じる60の年齢を過ぎていた。退職のこの日のために片言だけでも学んだギリシャ語を試す喜びで、妻を伴ってでかけた。バックパッカーにしろ、スケルトンにしろ、私には夢のまた夢の贅沢だ。》

《これだけ情報が発達して来れば、見聞を広める程度のことならわざわざ海外に出ることもない。英語が話せるだけではグローバルな人間とは言わないのと同じように。旅とは、どんなスタイルだろうと、ただ、ぶらりぶらりの目の保養旅でもいいじゃないか,と思う。》

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