09年度公立校教員 希望降任223人
毎日新聞(10/28)から、
校長や教頭、主幹教諭に昇任したにも拘らず、自ら希望して降任を求めた公立小中高校の教員が09年度に過去最多の223人に上ったことが、文部科学省の調査で分かった。特に中間管理職といわれる主幹教諭の希望降任者は121人と全体の半数を越える。文科省は「児童生徒とのかかわりが少なくなるうえ、管理職と一般教諭の板挟みになる傾向があるため」と原因を分析している。
調査は全国の教員約89万7200人を対象に実施した。希望降任制度があるのは47都道府県と18政令都市の65教育委員会のうち名古屋市を除く64教委。校長からの降任は9人、副校長・教頭からは90人、主幹教諭からは121人、その他は3人だった。前年までとの比較では、校長や副校長からの降任に急激な増減はないが、主幹教諭からの降任は、各教委が設置を始めた06年度の12人から10倍に急増した。主幹教諭は従来の教務主任や進路指導主事で、08年の改正学校教育法で、選考試験を伴う職と定められた。
降任理由のトップは精神疾患などの健康上の問題が107人、次いで職務上の問題が59人。文科省初等中等教育企画課は「教務主任などの中間管理職は激務だが、以前は持ち回りで担当する場合が多かった。主幹教諭の役職化で持ち回りが不可能になり『こんなことなら教壇に立っていたい』という教員が増えた」と分析した。
【希望降任】
健康上の理由や家庭の事情などから管理職の職務を全うできない教員が、自ら降任を申し出る制度。00年度から各教育委員会で導入が始まった。校長から教頭などへの1段階、校長から教諭への2段階の場合がある。
また、適切な授業や学級運営ができず「指導が不適切」と判断された教員は260人。04年度の566人をピークに、05年度は506人、06年度は450人、07年度371人、08年度306人‥‥と減少している。一方、不適切な教員は在職年数20年以上のベテラン教員が全体の60パーセントを占め、性別は男性教員が全体の76%に上った。
同課は「ベテラン教員は批判を素直に受け入れない傾向にあり、独善的な学級運営や授業が問題視される事例が多く報告されたが、性別で偏りが出た理由はわからない」と述べた。
東京都内の公立小学校で主幹教諭を努める40代の男性教諭は「降任したい気持ちはよく分かる」という。「子どもが好きで教員になった人が多いのに、統計調査や学力テストの集計などの事務処理に忙殺され、さらに若い教員の指導や補佐も努めなければならない。
岐阜県内の市立中学の40代の一般教諭によると、主幹教諭になりたい人は少なく、選考試験は校長や教頭から打診されて受験する場合がほとんどだ。一般教諭のリーダー役として助言を行なうが、同僚から「何をえらそうなことを言っているんだ」などと批判されることも少なくないという。
《企業においても中間管理職(課長,次長)の立場はおなじことだ。遮二無二働いていればよかった一般社員から、何人,何十人の部下を統率しなければならない立場になる。当然企業貢献度は何倍も期待され,要求され、結果を求められる。反面、時間管理されることがなくなり、責任の重さに反比例するように残業手当はゼロになり、収入は減少する。最近ではメディアに登場しなくなったが、企業の闇の部分で責任を取らされるのは、大抵この中間管理層でしばしば飛び降り自殺をして話題にもなった。》
《希望すれば無審査で希望通り降任できるのか、記事の内容だけではよくわからないが、対極の上昇志向としての「出世」は、昔は人間の欲望のなかの「名誉欲」として言われたものだ。最近の若者たちの無気力は、企業でも、責任ある立場に立つことや、昇格を望まないとも聞く。しかし、降任理由が文字通りの健康上の理由や家庭の事情ならば、どこにでもあるリスクで何も騒ぎ立てることではない。それよりは、20年以上もの経験を持つベテラン教諭たちに現れる突然の「不適格宣言」が、怠惰なのか、痴呆症の前触れなのか、哀れな姿が気になる。》
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