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2010年10月26日 (火)

塾がキャリア教育に乗り出す

 毎日新聞(10/25)から、要約と 《 》内は私見。
 《少子化の波は塾の経営をも圧迫し始めているようだ。ベビーブームに乗って、次から次に生まれた塾だが、少子化で塾生が減れば塾も減ればいいのだが、なかなか淘汰には踏み切れないでいるようだ。この先、子どもを産みたくない女性の増えることが予測され、ますます少子化は急になる。今のまま塾が減らなければ子どもの数には限りがある。弱小塾でも際立った特色でもあれば人を集めることも可能だろうが、知恵のない塾の経営は破綻する以外にない。そこで咄嗟に思いついたのが大学でも取り組んでいる「将来の職業は」塾で学び考えるというキャリア教育のようだ。》

 塾がキャリア教育に乗り出している。子どもたちに将来の職業を意識させることで、勉強への意欲を高めるのが狙いだ。新たなサービスが登場する背景には少子化による塾業界の競争もある。

 首都圏で約50校を展開する進学塾「俊英官」(東京都板橋区)。8日の夜、受講する14人の中学生に、ホワイトボードに色んな職業の大人の写真を次々に写して見せ、講師が複数回答形式で興味のある仕事をマークさせた。

F1ドライバーを選んだ子に講師が問いかける。「企業はなぜ他一金を使ってF1に参入すると思う?」生徒は「宣伝のため」と答える。講師は「その通り」と言ったあと、「ただ、実際に現場で車を設計したり組み立てたりしている人たちは、きっと『おれが世界で1番速い車を作るんだ』と思って仕事しているはず。生き甲斐を持って働くというのは、そういうことなんです」と言う。

 「キャリアデザイン講座」と題したこの講義は、今年度から始まった。中学1年から3年生を対象に年間5〜6回、3年間で計17回を無料で開く。講座では具体的な職種やその職業に必要な資格、能力だけでなく、フリーターと正社員の違いや税金と社会保険制度など、幅広く社会の仕組みを学び、「働くこと」の意味を考えさせる。中学3年の男子生徒は「IT関係にも学校の先生にも興味がある。どうやったらなれるが分かって役に立った」と言う。

《好きだから、興味があるからだけで進路が決まるものではない。掃いて捨てるほどいるお笑い界、鳴かず飛ばずで芽が出なかったある1人が、野宿生活をしていたころの話を本にした途端に、億を超える印税を手にする幸運に恵まれた。芸人のセンスや文才よりも、哀れな苦労話が受けただけかも知れないが、折角のチャンスもその後は、お笑いがただ好きというだけで、やはり鳴かず飛ばずのままだ。好き、興味と才能は違う次元の問題だ。競馬の騎手に憧れても大男には無理。反対に格闘技が好きでも小男では・・・、となる。どのような職種にもそれに見合った適性というものがある。》

《好きこそものの上手なれ、ということだろうが、下手(へた)の横好き、ということと表裏一体だ。好き、興味、と出来るという可能性とは別のものだ。好きだけれど下手、足りない才能をどうすればいいのか、を学ぶことの方が人生には役に立つ。》

 受験には必ずしも直結しない講座を開く例は他にもある。
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 首都圏の難関中学を目指す進学塾として有名な「SAPIX小学部」(東京都中央区)は、04年度から小学5年生を対象ににした有料の環境講座を年に6日開講しており、対象学年の塾生約5000人のうち4割弱が参加する。10年ほど前から目立つようになった理科実験教室は今や全国の進学塾の定番になった。
 こうした新たなサービスが次々に生まれる背景にあるのが、塾業界の競争激化だ。民間の調査会社「矢野経済研究所」によると、09年度の学習塾・予備校市場は前年度比2・6%減の約9000億円。02年度に比べると1割近く減少した。同研究所は、不況の影響で入塾時期を送らせたり、入塾自体をあきらめる家庭が増える一方で、生徒数確保のために値下げした塾が相次いだことが原因と分析する。業界側も「安売りだけでは早晩破綻する。勉強だけではない、付加価値のあるサービスを提供していかないと業界自体が生き残れなくなる」と危機感を深めている。

 進学塾大手の市進学院(東京都文京区)は旅行会社のJTBと組んで、幼稚園から小学4年生を対象に、田植えや地引き網、酪農などを親子で体験する月に1回の日帰りツアーを今年度から始めた。市進の田代社長は「嫌々塾に通っても、本人が勉強したいと思わなければ長続きしない。勉強が面白いと思わせるためには、大人の世界には楽しいことがたくさんあるということを見せて、知的好奇心を呼び起こす必要がある」と語る。

 塾に通う子どもたちに「勉強したい」と思わせねばならない状況について、受験業界に詳しい森上教育研究所(東京都)の森上所長は「『大学全入時代』を迎え、超難関校を目指す1部の子どもを除けば、受験のために勉強するというプレッシャーが成り立たなくなった。しかも、現在のように有名大学を卒業しても就職が難しい時代になると、有名大学合格が勉強のための動機になりづらくなった」と話している。

《今のままでは「大学全入時代」というのは単なる標語のようなものだ。何のために大学まで行くのか、社会へ出るためのトコロテンの通る道だからか。家庭にいては邪魔だからか。勉強とは何だ、問題はそこから考え直す必要がありそうだ。》

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