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2010年9月 5日 (日)

大学生の就職活動を考える 1.

 毎日新聞(9/4)から、《 》内は私見。
 文部科学省によると、今春卒業した大学生の就職率は前年度比7・6ポイント減の60・8%、1948年の調査開始以来、最大の下げ幅を記録した。就職活動の早期化、長期化、そして就職難が深刻。企業も大学も新たな取り組みが必要だ、ということで、同紙が立場の異なる3人からそれぞれの意見に紙面を割いている。論者は順次紹介するとして、最初に直接教育の現場に携わる東京大大学院教授の本田由紀・46(教育社会学)から聞いてみる。

 学生は雇用情勢に対し、焦燥感や閉塞感を感じている。「厳しいからしっかり就職活動をしろ」と、周囲がそれを煽っている。

 就職活動は3年の春、インターンシップに申し込むところからは閉まる。ワンデーインターンなど、実質的な意義は不明でも、学生は行かなければ不利になるという焦りから参加する。秋にはエントリーシート提出の準備が始まるが、様式は各企業で異なり、禅問答のような問いに答えさせられる場合もある。面接の回数も増えている。「シュウーカツ」という複雑な障害物競走を最後まで走りきった学生だけが、内定というゴールに辿り着けるシステムだ。

 大学での専門分野と産業・職種との対応が曖昧であるため、学生の多くはまず大企業を志望する。膨大なエントリーシートの選別を外注する企業があるかと思えば、優秀ではきはき答える学生を「どこか信用できない」という理由で落とす企業も。学生は採用基準が分からず混乱し、受けては落とされ続けるプロセスに苦しむ。就職活動は早期化、長期化、複雑化、不透明化している。

《大学の本質にかかわることだ。大学が企業労働者育成の場なら、それぞれの企業の担当者の出張教育が一番相応しかろう。しかし、『企業は人なり』の金言は、仕事が出来る人を指す以上に、人間としての教養や、資質の豊かさや豊かな情操を持つ人材を指しているのだ。そのような集団が生み出す仕事の結果が優れた生産物を生むということを言うのだ。質問に対して間、髪を入れない即答を、優秀のようだが、胡散臭いと感じる風潮は昔からある。別の言い方もある、「沈黙は金,雄弁は銀」と、じっくりと考える姿や、朴訥な言葉に好感を持つのは多くの人材を観察してきた面接官にはありがちなことだ。》

 企業は、同一年齢層の中から順風満帆でやってきた人材を採用したいのだろう。だが、シューカツという障害物競走のゴールに至れないまま卒業すると、非正規雇用になるしかないというオール・オア・ナッシングの状況では、弊害が大きすぎる。買い手市場を背景に、大目の内定を出し、意図的に極度のストレスを与えて自分から辞めるように仕向ける「新卒切り」も横行している。人権も法律も無視。こういう企業への監視も制裁も無いのが現実だ。

《大学院教授が言うのだからそれらの現場を見て確認した上のことだろう。このような無法を実行している企業があるとすれば、知っていて黙って見過ごしている方が悪いと言える。》

 最近になって、脳科学者茂木健一郎氏らさまざまな論者が企業の採用の在り方を批判的に述べ始めている。日本学術会議も、就職活動をもっと遅い時期から始め、卒業後に及んでもいいようにすべきだという方針を打出した。採用手法も改める必要がある。海外では職種別採用が基本。日本も仕事の内容や選考基準を明示すべきだ。そうすれば学生はやみくもに大企業にエントリーするのではなく中小企業も視野に入れて仕事内容に即して応募できる。

《大企業中心、女性の一般事務中心は日本の就職希望先で多く見られる顕著な例だ。介護や辛そうな職場、汚れ仕事は求められていても避けて通るのがこれまでだ。この意識を変えるのは大学の先生が言うほど簡単なことではなく、並大抵のことではないだろう。》

 大学も変わらなくては。かつて大学は、卒業後のキャリアにまで責任を負わなくてよかった。大半の卒業者は就職できたし、企業が育ててくれたからだ。だが、今は違う。大学はキャリア教育に力を入れているが、内容は、資格取得講座や面接対策、メーク講座など、表層的で近視眼的なものも多い。卒業後に向けたエンパワーメントを大学教育の本体にどう組み込んで行くかが問われている。「ここで学べばこんな仕事に生かせる」と発信する責任がある。

《冒頭に書いた。大学の教壇に、企業人を入れる方が早道だ。本来は、人間を向上させるために学びに行くのが大学じゃないのか。そのためには「何故」の思考力を身につけることが本道だろう。単に卒業証書を手にすることや、相手に気に入られるおしゃべりや、化粧法を学ぶのが大学じゃないはずだ。今はやりのアンチエージングと同じだ、表づらだけを飾っても、中身は老いるだけ、というやつだ。》

 日本の企業はバブル崩壊前のやり方を未だに続けている。それが生産性の低さにつながり、雇用が減り,若者が苦境に陥っている。なのに企業はすべて若者のせいにし、「こちらの求めているものを身につけていない」と言う。その考えを改めない限り、現状は変わらない。

《どちらが先か、の問題ではない。若いうちは2度ないと、のほほんと楽しく大学生活をエンジョイして皆が通る道だから、と企業周りを始める。東大卒にはいないだろうが、漢字も読めない、繰り上げ足し算もできない、その間どれだけ自己研鑽をしてきたのかもわからないでは、企業も採用に二の足踏むのは当たり前の話だ。働こうと思えば「何故」が考えられる思考回路を育てておくことが大切な条件だ。面接官は先ずそれを確かめ、その人物の将来性に先行投資するのだから。》

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