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2010年8月31日 (火)

鯨肉窃盗裁判

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サギソウ




 毎日新聞(8/30)から、要約と、 《 》内は私見。
 《2年前の事件の報道から。参照 盗人にも三分の理 08/06
 盗人の理屈がどこまで通用するのか、それとも勘案の余地があるのか。》

 調査捕鯨船での鯨肉横領疑惑を調べていた国際環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」(東京都新宿区)のメンバー2人が「証拠品」となる鯨肉を確保して告発したところ、逆に窃盗などの罪で起訴された裁判の判決が9月6日、青森地裁(小川賢司裁判長)で言い渡される。被告側はNGO(非政府組織)の調査活動もジャーナリストの取材活動と同様の保護を受けるべきだとして無罪を主張している。表現の自由の観点から裁判までの経緯、論点を整理した。

 「船員が大量の高級鯨肉を勝手に持ち出し、一部を売り捌いている」。08年1月、グリーンピース・ジャパンにこんな情報が届いた。通報したのは捕鯨船「日新丸」の50歳代の元船員男性だった。元船員は「捕鯨の是非の立場は違うがグリーンピースなら社会問題化してくれると思った」と明かした。

 GPは同年4月15日、帰港した日新丸から降ろされる船員の私物の入った段ボールの荷物を追跡。西濃運輸青森支店の配送所で、疑いのある荷物を無断で持ち帰った。「ダンボール」とあった箱の中には、鯨ベーコンの原料となるウネスと呼ばれる高級鯨肉が計10本(約23キロ)入っていた。GPは「横領の証拠品」として5月15日に東京都内で記者会見し、鯨肉の解体・加工に従事する船員12人を業務上横領の疑いで東京地検に告発した。

 ところが西濃運輸の被害届を受けた青森県警は6月20日、荷物を持ち出したGPメンバーの2容疑者(佐藤潤一 33、鈴木徹 43)を窃盗と建造物侵入の疑いで逮捕した。同日公共地検は当該鯨肉は共同船舶が鯨研からI取った土産と判断、不起訴(容疑なし)とした。東京第1検察審査会も今年4月22日付で不起訴相当と議決した。2人は起訴され、青森地検は6月、懲役1年6月を求刑。弁護側は「船員らの鯨肉横領を告発するための正当な行為」と無罪を主張している。

 裁判で最大の焦点は、違法な手段で情報収集する行為が、公共の利益を図る目的であれば正当化(違法性の阻却)され、それがNGOの調査活動にも認められるかどうかだ。裁判所が報道機関などの取材行為によって損なわれる利益と社会が得られる利益を比較して判断するのは珍しくない。

 内部告発を巡る裁判では、正当行為と認めて違法性を退ける判決も出始めている。取引先への不正請求の内部文書を複写して内部告発した従業員の行為について、東京地裁は「形式的は違法とされる可能性のある行為であるとしても、真実であることを示すために必要な行為。正当行為として違法性は阻却される」と判決(07年)している。

 一方、2人の逮捕を巡っては、国連人権理事会の「恣意的拘禁に関する作業グループ」が09年9月、「国際人権規約に違反する」との意見書を採択し、日本政府に国際基準にかなう手続きを求めた。

 公判では、ベルギー・ヘント大学のデレク・フォルホーフ教授(国際人権法)は被告側証人として、今年3月に青森地裁で「裁判所は、表現の自由を保障する自由権規約と刑法に矛盾がある場合は規約を優先すべきだ」と証言した。公判後の取材で教授は「欧州人権裁判所は、公共の利益に関する活動をしているNGOには報道機関と同様の権利が保障されるべきだとしており、守秘義務違反や文書持ち出しといった軽微な犯罪であれば許容している。2人の行為は公共の利益に寄与するものであり、青森地裁はこうした国際的な水準に照らして判断すべきだ」と指摘した。

 東京、徳島地裁などでは自由権規約の解釈に当り、欧州人権裁判所の判例を解釈基準として肯定する判断も出始めている。

 これに対し、青森地裁は6月の論告で「自由権規約で保障されるのは、『情報及び考え』であり、運送会社に侵入したうえ、荷物を窃取する行為は保障されていない」と反論した。

《私の判断は2年前と変わらない。「仲間への裏切りは万死に値する」。ましてその裏切りのために建造物への侵入を行い、窃盗行為にまで及ぶことは目的の如何を問わず犯罪以外の何者でもない。》

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