メタボと腹囲は無関係?
毎日新聞(7/20)から 要約と,《 》内は私見。
メタボリックシンドローム(内蔵脂肪症候群)の診断基準となる血圧などの検査値の多くは、日本人男性の場合、腹囲(腹部肥満の有無)に関係なく体重が増えれば悪化する傾向が強いことが、立川メディカルセンター(新潟県長岡市)の調査で分かった。3月には厚生労働省研究班の大規模調査で、女性の腹囲と循環器疾患発症の関連性が低いとの傾向も明らかになり、腹囲を必須とする現在の特定健診のあり方も問われそうだ。今月号の米糖尿病学会誌「ダイアベティス・ケア」に発表した。
《実施されるまでには、諸外国の学説も紹介され、日本の腹囲を基準とする考えには異論もあったが、半ば強引とも思われる導入に踏み切ったのが実際だった。》
調査は同センターの人間ドックを08〜09年に受診し、風邪などをひいていない1271人(平均年齢51・6歳)を対象にした。メタボ診断基準の血圧、血糖値、中性脂肪、HDL(善玉)コレステロールと、体重変化との関係を、国内でメタボの主因と位置づける腹部肥満がある群とない群でそれぞれ分析した。
その結果、血圧と血糖値は、腹部肥満の有無に関係なく、体重が増加すれば悪化した。HDLコレステロールは、腹部肥満がない群だけが体重増加によって悪化し、いずれも腹部肥満との関係は見出せなかった。中性脂肪は、腹部肥満がある群で体重増加との関係があった。
世界では、メタボ診断基準づくりの中心になってきた国際糖尿病連合などが昨年、腹囲を必須とせず、他の血液検査などと同列に扱う統一基準を発表した。一方、日本の診断基準は、腹囲が必須条件になっている。
分析にあたった小田栄司・同センターたちかわ総合検診センター長は「腹部肥満がなくても、体重が増えれば検査値が悪化することが分かった。腹部肥満を必須条件に生活指導を実施する現在の特定健診は合理的とは言えず、早急に見直すべきだ」と話す。
【解説】
日本のメタボ診断基準が腹囲を必須とするのは、腹部に蓄積する内蔵脂肪が心筋梗塞などの循環器疾患を引き起こす主因との考え方に基づいてきたからだ。ところが、日本人の循環器疾患発症の傾向を調べた解析によると、内蔵脂肪の蓄積だけではなく、血糖値など一部の血液検査値の悪化や食生活によっても危険性が高まる。
このため、腹囲を必須とする現在の特定健診は、痩せていて循環器疾患の危険性のある人を見落とす恐れがあると指摘されてきた。
男性は40〜50歳代の比較的若い世代で腹部肥満が増えており、現在の健診に意味があるとみられていた。だが、今回の研究成果では50歳前後の男性も腹部肥満の有無と検査値悪化の明確な関係を見出せなかった。
これらの調査結果は、内蔵脂肪の蓄積が循環器疾患の原因の一つにすぎないことを示しており、それ以外の要因についても等しくチェックする健診体制の検討が求められることになりそうだ。
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