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2010年7月 1日 (木)

改正臓器移植法、17日に全面施行

 毎日新聞(7/1)から、要約と 《 》内は私見。
 15歳未満の小児からの脳死臓器提供が可能になる改正臓器移植法が、17日に全面施行される。渡航移植に頼ってきた小児の国内での移植を実現する制度改正と期待されるが、厚生労働省が臓器提供に対応できると認めた全国の医療機関のうち、施行時に小児からの提供に対応できるのは36・8%にとどまることが、同紙の調査で判明した。現場からは「脳死患者が発生する救急医療の現場は多忙過ぎて対応不能」「小児からの提供に疑問を持つ医師もいる」などの声が上がり、法改正に追いつかない医療現場の実態が浮き彫りになった。

《浮き彫りになったのは追いつかない医療現場ではなく、医療現場の実態も全く把握できていないまま、法改正を先走りしたことにある。10年で81件しかない実績の数字を増やしたくて、手ぐすね引いて移植(人の死)を待つ医師と患者の要望を満たすためでしかなかった。国会のどだばた騒ぎの中の改正法案通過については次の『参照』を。》

 参照 「脳死は人の死」が成立 09/07

 「成人の脳死判定だけでも大変なのに、小児まで対応するのは負担が大きすぎる」。岡山赤十字病院(岡山市)の集中治療室(ICU)。さまざまなチューブや機器に繋がれた患者のベッドの間を、医師や看護師が慌ただしく動き回る中、同病院の實金健・救命救急センター長はそう話した。同病院は改正法施行後も小児の臓器提供をする予定はない。

 同病院には、年間4万人以上の救急患者が来院する。ICUが、すべて埋まることも珍しくない。同病院は97年の現行法施行以降、脳死臓器提供の経験はないが、年一度、シミュレーションを実施している。成人の脳死判定から臓器提供終了まで45時間前後かかり、その間、救急部門の日常業務をストップするしかない。6歳未満の小児の場合、2回の脳死判定の間隔を現在の4倍に当たる24時間以上空けるため、さらに18時間も長くなる。

 「ほとんどの家族は心臓が止まるまで何とかしてくれと考えている。我々は寝る時間がなくても、全力で治療に当たる。患者の救命が使命であり、救えなければ敗北だ。臓器提供の意思は拾い上げたいが、普通の救急診療を犠牲にしてまでは踏み込めない」と、實金氏は心境を明かした。

 法改正で提供可能な医療機関として新たに認められた東日本のある小児病院は、17日時点では対応しないことを決めた。治療のため患者や家族と付き合いが長い小児科医の中には「親に意思確認するのは心情的に難しい」と話す人がいるという。また、小児は蘇生力が強く、脳死状態と思われても何年も心臓が動き続ける例もあるなど、脳死判定の難しさが指摘されている。「話し合いの結果、移植に協力すべきだと考える医師は約半数いた。だが皆が悩んでいるので、踏み切れない」と男性院長は話す。

《長期脳死児(診断後1カ月以上)が60人もいることについては、07年7月13日と23日の2回に亙って書いた。》

 臓器提供を担う医療機関の多くは医師不足や過酷な勤務実態が指摘される高度医療、救急医療の拠点病院だ。東京歯科大市川総合病院(千葉県市川市)の菅貞郎副院長は、脳死臓器提供を2回経験したことがある。院内で脳死判定にかかわる脳神経外科の常勤医は3人、休みは月2〜3日しかない。「地域の中核病院はどこも疲弊している。小児の脳死判定が医学的に難しいことも気にかかる」として当面、小児の提供に対応しない。

 本人の意思が不明でも家族の同意で脳死臓器提供を可能にしたことも改正法の大きな柱だが、同病院も岡山赤十字病院も、施設側から臓器提供の説明をする予定はない。家族から相談がなければ、従来通り、意思表示カードで提供意思を示した15歳以上の患者にのみ対応する予定だ。

 日本移植学会の寺岡慧理事長は「移植医療を広げるためには、救急医療体制の改善も急務だ。各医療機関への説明や、一般への啓発に努めたい」と話す。

 調査は、厚生労働省が臓器提供への対応を認め、昨年4月時点で名称を公表している大学病院、救命救急センター、日本救急医学会などが認定する医療機関計322施設と、改正法施行後に加わる小児専門病院の一部計26施設の計348施設を対象に5月下旬から実施。229施設(回答率65・8%)から回答があった。

 臓器提供への対応について、
 「成人と小児の両方に対応する」と答えた施設が35・0%
 「小児のみ」 ・・・・・・・・・・・・・・・ 1・8%
    小児に対応する施設計・・・・・・・・・36・8%
    成人のみに対応する施設・・・・・・・・48・9%
 「成人のみ」と回答した施設に理由を聞いたところ
                    (複数回答可)
 「対応する体制が整備されていない」・・・・・62・4%
 「(小児臓器提供の要件である虐待を受けた児童から
  提供させない)虐待防止体制が整備できない」40・4%
 「小児の脳死判定は医学的に難しい」・・・・・22・9%

 本人意思が不明の場合、提供に同意する家族の割合は、「3割零度」から「ほとんどない」との予想が、小児の85・2%、成人の74・7%を占め、改正法による提供の大幅増に否定的な味方が目立った。

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