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2010年7月 3日 (土)

生体肝移植、ドナー保護に後れ

 毎日新聞(7/1)から、
 生体肝移植の提供者(ドナー)の健康状態を、退院後も継続的に診断する専門外来を開設している病院は、移植実施施設の2割に満たないことが、移植医らでつくる「日本肝移植研究会」の調査で分かった。同研究会が1日、とりまとめた。世界保健機関(WHO)は今年、生体移植のドナー保護を求める指針をまとめており、同研究会は「日本でもドナーを患者として保護する仕組みづくりを急ぐべきだ」としている。

《臓器移植に関して、移植を受ける側の患者(レシピエント)の成功例に隠れて臓器を提供するドナーのことは語られることもなく、その実態が理解されないままできている。》

 生体肝移植のドナーは、提供手術によって肝機能障害が起きたり、傷の傷みなどから体調を崩す場合がある。脳死提供が少ない日本では、08年は476件の肝移植の97・3%が生体肝移植だった(日本移植学会調べ)。

 調査は昨年9月から、生体肝移植に取り組む56施設に実施し、全施設が回答した。ドナーの検査などを担当する専門外来がある施設は18%。退院の際、自己管理方法や困った時の連絡先を知らせるなど、最近5年以内に退院指導を改善した施設は49%だった。

 ドナーは患者とともに来院することが多いが、患者が死亡した後は連絡が途絶えがちがちだ。患者の死後も「ドナー全員と連絡を保つのが原則」と答えた施設は37%で、32%はルールがなかった。

《2004年、(生体肝移植ドナー体験者の会:代表・若山昌子ほか13名のドナー)が、当時の自民党「脳死・生命倫理及び臓器移植調査会」に提出した要望書によれば、臓器提供後の問題点を次のようにまとめている。
 ・ ドナーの再手術(イレウスや胃の変形、胆汁漏れなど
 ・ 肝機能の快復の遅れ(術後半年以上肝機能が戻らない
    ケース
 ・ 術後長期にわたる肉体的違和感(傷周辺の鈍痛や部分的
    皮膚感覚の麻痺、お腹が張り易い
 ・ 将来における体力への不安(ドナーが突然死した例もあ
    る)
 ・ 患者の死に伴う精神的な苦悩(患者を救えなかった
    という焦燥感や自責の念、など)
 ・ 家族、親族間の人間関係の問題(離婚、離散、絶縁
    など)
 ・ 職場における評価の変化(体調が良い場合でも、肝臓を
    切ったのだから普通の仕事は無理という見方をされる
    こともある)
 ・ 高額な医療費(移植手術費用、提供者の術後の医療費の
   工面、提供者が一生にわたって服用しなければならない
   免疫抑制剤は保険適用ではない)
 など、医学的な面だけでなく、心理、社会的な側面が多く含まれいる。不勉強なことだが、私は、これらのことについて全く推察することがなかった。メディアなどの記事を読むだけでは、健康な体の人がその部分がなくても生活するのには大して困らない臓器を、それがないと生きて行くのも困難、或いは死を覚悟しなければならない患者に分け与えるための移植手術程度に解釈していた。》

 手術前にドナーが得る、移植に関する情報にはばらつきがある一方、手術後の生活や精神面のケアに精神科医など専門職が対応する施設の割合は少なかった。調査を担当した小林英司自治医大客員教授は「生体移植に関する公的ルールや検査、支援体制がない。提供によって職を失うドナーもおり、ドナーは移植を機に肉体的にも精神的にも患者になるという視点が必要だ」と指摘する。

《先に上げたドナー体験者の会の要望の骨子は内容を四つに大別している。
 1、 ドナーの要件を法的に明確にする
 2、 ドナーへのケアを保証する
 3、 ドナーとなることに伴う費用を術前、術後とも
    保険適用とする
 4、 ドナーの術後の経過に関する継続的な調査と
    実態把握を移植実施施設及び関連学会に対して
    義務づける
 6年も前に問題提起されている内容だが、今回の調査を読む限り、何も進展していないようだ。脳死でもいい、生体でもいい、兎に角移植の実数を増やしたいことを願う医療者側と、ドナーとの間には立場の違いから来る解決しなければならない問題がたくさんあるようだ。》

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