後期高齢者医療
毎日新聞(7/24)「社説」から、
「75歳以上という年齢で医療制度を分けるのは差別だ」などと批判されていた後期高齢者医療制度の廃止は政権交代の旗印の一つだった。しかし、廃止はできても、どんな代替案を示せるのかを危ぶむ声も強かった。
民主党政権が発表した新制度の骨子案によると、現在約1400万人いる後期高齢者の8割が国民健康保険(国保)へ、会社員と家族は勤務先の被用者保険へ移る。市町村が運営する国保は今も財政が危機的なため、高齢者は別勘定にして都道府県単位で運営する、というものだ。
年齢での区別をやめるという公約を守り、当面の国保財政の維持を図る点においては前進といえる。ただ、日本の高齢化は猛烈な勢いで進んでおり、75歳以上だけでも毎年50万人以上増え、この世代の医療費は毎年4500億円ずつ増えていくのだ。膨れ上がる医療費そのものをどうするかという恒久的な処方箋を示してはいない。
《私は来年には80歳になるが、特別に頑健でもない我が身を考えても、高齢者にそれほどの医療費が必要であることが理解に苦しむことだ。貧乏な家庭に育ち、粗末な食べ物で成長期を過ごした痩身をこの年齢まで生きてきた。ブログでも幾度も書いてきたが、幼児期のハシカ以外の病気をせず、細身の体ながら戦後の復興期の苦しい労働環境の中を生き抜き、55歳定年、61歳と、2度の退職を経験し、今に至るが、現役時代のサービス残業や有給未消化は当たり前、100時間残業や夜勤、休日出勤などは企業の望むまま(それでも、残業代を手にした経験がないことは折りに触れて書いてきた)であったことも度々触れた。》
《私には妙に意地っ張りなところがあり、生身の体がどこまで辛いことや苦しいことに耐えられるのかやってやろうじゃないか、と考えた。「お前たち、おかずにコロッケしか食えない給料で、生意気に肉なんか食えば苦しくなるぞ」と言われながら歯を食いしばって耐えた。「貧乏人は麦を食え」と言った大臣のいた時代だ。両親からは『この子は誕生日までは生きるまい』と言われて生まれた体だった。しかし、どうだろう、退職したころのベスト体重は49・5キロ(±0・5キロ)だった。》
《両親の思惑に反して丈夫で生きていた。会社での健康診断にはわざと未参加を通した。只1度、2度目の企業で健診を受けさせられ、そこで誤診された。「肺に影あり」と。数ヶ月の治療を続けたが、レントゲン技師の曰く、「若い頃の自然治癒した跡らしい、全く変化ありません」、で済んだ。それから20年に近い。61歳での網膜剥離以外、ただの1度も医者の世話にはなっていない。市からも毎年、無料の健診案内が送付されてくる。無視していかないことに決めている。毎年来るものと言えば後期高齢者医療保険料徴収だ。今年も約11万5000円が僅かな年金から天引きされる、否応無しにだ。若い頃からそうだが、健康保険料は納めるが、医療費はほとんど使わない後期高齢者もいるのだ。》
高齢者の保険料負担を軽減するのであれば、公費(税)で賄うか、現役世代からの拠出金で賄うしかない。現行制度も50%が公費、10%が高齢者自身の保険料、残りの40%は健保と協会けんぽからの拠出金で運営されている。このまま消費税論議が進まず、事業仕分けや予算の組み替えでも財源が出て来なければ、これまで以上に現役世代の拠出金で支えざるを得ない。しかし、被用者保険も赤字だらけで、解散する健保組合も続出しているのが現状だ。
八方塞がりの中で誰がどのように負担するかを巡って制度変更を繰り返してきたのが高齢者医療問題なのである。この堂々巡りを解消するもう一つの方法は、高齢者医療の内容を見直し、医療費の支出を減らすことである。
後期高齢者医療制度で当初盛り込まれた「主治医」制度は、高齢者の慢性疾患などを一人の医師が総合的・継続的に診るというものだった。病気ごとに違う病院や診療所にかかり検査や投薬を重視して過剰に受ける高齢者がいることを考えれば、この制度は医療費の抑制につながると期待された。しかし、医療側には診療報酬上のメリットが薄く、患者側も診療が抑制されることを心配する声が多かったために広まらず、今年の報酬改定で廃止された。
《病院や診療所が、取り立てて悪いところもないのに、寄る辺のない老人たちの井戸端会議の場のように見られ、批判されたこともあったのは確かだ。しかし、一方では医療報酬を期待する側とは裏腹の問題でもあったのだ。》
必要な治療が受けられなくなるのは断固反対だが、過剰診療に歯止めをかける医療体制の構築は現役世代にとっても必要だ。むしろ慢性疾患が中心の高齢者から医療改革を進めて行くことはできないものか。
負担の分散だけでは限界がある。手厚い医療を求めるのなら負担増は避けられない。負担増が嫌なら医療費を抑える方策も考えるべきだ。
《老人医療で国家財政が破綻するようでは、皮肉なことだが、日本の長生き世界1も、蓮舫議員が口にした「世界1でなければいけないんですか」と言いたくなる。》
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