安楽死幇助は合法(スイス)
毎日新聞(5/24)から、
「人権の国」スイスでは、自ら命を絶つのも人間の基本的権利という考えから、自殺幇助が合法*と認められている。ボランティアの助けを借りて「自死」する人は増え続け、近年は自殺者全体の2〜3割に達している。
《* ‥‥ スイスは早く、1942年に「安楽死法」が可決されている
その他の国では
オランダが 2001年に「安楽死法」が可決
ベルギーが 2002年に「安楽死法」が可決
フランスは 2005年に「安楽死法」を可決している》
30年の実績を持つNGO「エグジット*」には、国民のおよそ100人に1人が登録(年会費約3300円)。世論調査では7割以上が支持し、今月の政府の調査では、34%が「不治の病にかかったら自分も頼むつもり」と答えた。「尊厳ある死」の一つのあり方として社会に定着している。
<euthanasia>。英和辞書の訳語には「安楽死」だが、「ギリシャ語では元々、<良い死**>という意味だった。殆どの人は死ぬのが怖いのではなく、悪い死に方が怖いのです」。エグジット会長で、医師のジェローム・ソベル氏の信念だ。
《 * ‥‥ エグジット Exit(出口を意味する)
** ‥‥euthanasia=θανασια(死)に、善、良、楽を表す接頭辞 ευ がついたもの
私たち夫婦は妻が高血圧気味だが共にすぐに80歳を迎える。いずれからともなく、不治の病とわかれば植物人間になる前に、安楽死で送ってほしい、と依頼し合っている。死ぬのも人間の権利、と思っているからだ。》
自死(自殺と書けない理由は?)の助けを受けるには、不治の病で治療の見込みがなく、すでに体が不自由で日常生活が苦痛だが、識別力はあり(鬱病などは不可)、自死の希望を何度も繰り返す強い意志があること、といった要件が求められる。
これら全て満たす人に、医師が医療行為ではなく、個人的に致死量の鎮静麻酔薬を処方し、本人が服用するか、点滴の栓を開ける。「最後の行為を自ら行う点が安楽死とは違う」(ソベル氏)。オランダやベルギーのように他人が薬物を投与して安楽死させる行為は、スイスでは殺人罪に問われる。
フランス語圏の会員1万5000人(ドイツ語圏会員5万5000人)のうち、昨年の申請者は166。自死に至ったのは69人だった。約20人は条件に合わず、先に自然死が訪れた人もいた。ソベル氏は「最後まで進む人は3分の1程度。こうした団体があり、選択肢がある安心が、治療の一環なのだ。スイスは責任、自立、個人を重んじ、言語や宗教の違いを認め合う国だから定着したのではないか」と言う。
問題も持ち上がっている。98年創設の団体「ディグニタス*」が外国人の自殺幇助を始め、ドイツや英国からの「自殺ツアー」が本国で論議を巻き起こしたからだ。
《 * ‥‥ ディグニタス(Dignitas)は尊厳を意味する。安楽死が法律によって自国で認められていない外国人の自殺を幇助することを目的に設立された。一方では、自殺防止にも力をいれている、という。》
エグジットが会費以外は無料なのに対し、ディグニタスは8万円余の費用がかかる。旅行者なので場所に困って車の中で自殺したり、ヘリウムガスの袋を被る方法をとったり、活動の「積極性」は国内でもスキャンダルになった。政府は規制強化の法案を準備中だが、世論の支持は広がっていない。
| 固定リンク
最近のコメント